短編④
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同じクラスのエース君は。
明るくて元気でスポーツ万能で、
友達も多くて。
人気者。
・・・・・・・・だった。
最近までは。
つい最近、エース君が危ない人との付き合いがあるとの噂が流れるまでは。
火のないところに煙は立たないだとか、
喧嘩が強いのも納得だよねえ、とか。
色んな話しは聞いて来たけど。
私はつい先日見てしまった。
エース君が強面の方々と話しているところを。
リーゼントヘア。
パイナップルヘア。
という、とてもじゃないけど見た目は普通ではない方々。
・・・・・で、今。
私の目の前にその彼。
エース君が突っ立っている。
外は雨。
現在地は学校の玄関。
彼の手に傘はない。
彼は頭をがしがしとかいて困り顔で。
「入って行く?」
「・・・・・いいのか?」
私が持っていた傘を差しだせば驚いた顔でまじまじと見つめて来た。
「駅までだけど」
「助かる」
そう言って笑顔で傘に入ってきたエース君はとても可愛らしい。
「傘持って来なかったんだね」
「今日雨って言ってなかっただろ?」
「・・・・朝の天気予報見た?」
「見てねェ」
だからだよ。
「昨日までは曇りだったけど。今朝は雨になってたよ」
「・・・マジか」
思い切り顔を顰めたエース君の肩が濡れてることに気づいて、
「エース君濡れてる、もっとこっち来ないと」
「・・・・アコが濡れるだろ」
「この傘結構大きいし大丈夫」
「・・・・でもよ、その・・・アレだろ」
「・・・・何?」
妙に歯切れが悪くなったエース君は、
ぷい、と顔を背けた。
「・・・・何でもねェ」
「結構酷くなってきたねー」
傘に当たる雨の音が強くなってきた。
「アコも濡れてるじゃねェかよ」
「そう?」
大丈夫だよ、と言おうとした時、
雨よりも鮮明に聞こえた、
ぐう・・・・・・ぎゅるるる。
「・・・・お腹すいてるんだ?」
「・・・・まァな」
「今日も授業中にお弁当食べて怒られてたのに」
「昼にはちゃんとパン食った」
「それでも君のお腹は空腹を訴えているんだね・・・・・」
思わず苦笑を浮かべれば、
「最近バイト入ってねェんだ」
・・・・バイト、かぁ。
「そっかー」
私は何気なく頷いただけなのに、
「べっ別に変なのじゃねェぞ!?」
エース君が必死に訴えて来る。
「・・・・やっぱり気にしてる?噂」
「あー・・・・まぁ、そりゃあ、ちっとは」
少し落ち込んだ様子のエース君。
「ん。わかった」
「は?」
「ラーメン食べよう!」
「はァ!?」
「大丈夫奢るから!!」
「いやいやおかしくねェ!?」
「お腹空いてるんでしょ?」
「そりゃそうだけどよ・・・・・」
ということで近くにあったラーメン屋さんに入店。
「頂きますっ」
「・・・・頂きます。いいのか?ほんとに」
「いいのいいの、さ、熱々のうちに食べよ」
「・・・・傘借りた上に飯まで奢ってもらっちまって」
「んん!美味しい!!」
「・・・・・・ほんとだな、んめェ」
美味しい、と言った私を見てようやくエース君もラーメンに手をつけた。
「美味しいものでお腹いっぱいになったら元気になるよね」
「・・・アコは気にならねェの?俺の噂」
「噂・・・・気になるけど」
「けど?」
「エース君はエース君だし、いいんじゃないかな」
「・・・・いい、ってのは」
「私見ちゃった。エース君と、その・・・噂の人たちが会ってるの」
「見たのか!?」
「皆がやばいやばいって言ってたけど・・・まあ、エース君は今のところ普通だし」
「・・・・普通?」
「・・・・・その、皆さん・・・・やばいじゃない?髪形が」
「髪形ァ?」
「髪形がやばい人と付き合っててもエース君は普通だからいいと思う。あ、でもエース君はその髪型似合ってる」
だからずっとそのままでいて欲しいなあ。
「・・・・・・・違くねェ?」
「・・・何が?」
エース君は何故かぽかん。
「皆が懸念してんのはもっとやばいっっつー・・・・・まあ、いいか」
「エース君は今のままが1番カッコイイと思うし」
「・・・・ありがと、な」
「大丈夫。人のうわさも75日っていうし、そのうち皆わかってくれるよ」
「いや・・・俺はアコがわかってくれてりゃいい」
「え、でも」
「アコが側に居てくれんなら何でもいい」
・・・・何だかものすごい口説き文句を聞かされてる気がする。
傘貸してラーメン奢っただけなのにそんなに恩感じてるのかな。
私がエース君のこと好きだから勝手にしてるだけなのに。
「そういえばエース君前にも噂あったよね」
「知らねェ。どんなやつ?」
「すっごい美人な大人の女と付き合ってる」
「はァ!?」
私なんかはそれを聞いて少し意気消沈したものだ。
まあでもその後女の影はなさそうだったし、
そんな噂もすぐ消えたんだけど。
「どっから出たんだよそれ・・・・」
「何か女の人と相合傘してたとかって」
「・・・・・それたぶんおふくろだ」
「・・・・マジすか」
エース君のお母さんそんな綺麗な人なのかあ。
「・・・・じゃあ、アレだな。アコも俺と噂になるかもな」
「え?」
「相合傘、しただろ」
「あ。だ、大丈夫ちゃんと訂正しておく!!」
「・・・俺は、しねェけど」
「え!?」
「俺、アコのこと好きだからな」
「えええええ!?」
「ちなみにアコが見たやつらってのはバイト先の先輩」
「え、何その面白そうな職場」
髪形はやばかったけど、一緒にいたエース君がすごく楽しそうに笑ってたから。
いい人たちなんだろうなあ。
「・・・・・で、俺の告白の返事、効かせてくれよ」
「あ、・・・・・・・はい」
外に出たら雨はやんでたけど、
2人で1つの傘に入って。
手を繋いで帰りましたとさ。
(噂もそのうち消えました)