短編④
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20歳の記念に、
今まで伸ばしていた長い髪を、
思い切ってばっさり切った。
「・・・・失恋でもしたのか?」
なんて幼馴染のエースがつまらなさそうに効いて来る。
美容院の帰り、ばったり会ったので一緒にご飯でも、ということになったエース。
近くのファミレスに来た。
「その考え方古いよエース」
「でもお前今までずっと伸ばしてただろ?」
「そうだけど・・・・何となく、20歳になったし、いいかなあって」
「何となく、な」
「・・・・・似合わない?」
「・・・・つーか、変」
「変て。イメチェンした女子にその言葉はないんじゃない?」
まあエースに限って可愛いよ、なんて甘い言葉を期待してた訳じゃないけど。
変て。
・・・・・これじゃ脈はなさそう。
「ンなこと言われてもよ・・・・ずっと長い髪しか見てねェし」
「そりゃそうかもしれないけど。・・・・ま、そのうち見慣れるよ」
たぶん。
「この辺だよな」
「ん、何が?」
「美容院」
「駅前のとこ」
「・・・・・ふーん」
「エースも行くの?」
「行かねェ」
「・・・・・もしかして」
「・・・・・何だよ」
「エース美容師になりたいの?」
「・・・・何でだよ」
「私の素敵になった髪形を見てそう思ったのかと」
「違ェよ」
エースはハンバーグをもぐもぐしながら不満顔。
そして、
ごつん。
・・・・・寝た。
またいいところで寝るんだから。
小さい頃からのエースのクセ。
ご飯食べてる途中で寝ちゃう。
・・・・大きくなれば治るものだと思ってたけど。
全然治る気配なし。
・・・・エースは覚えてないか。
私が髪を伸ばしてた理由。
小さい頃エースが私の髪を触って綺麗だな、と言ってくれたから、なんだけど。
・・・・覚えてる訳ないよねえ。
「悪くねェな」
・・・突然エースが訳のわからないことを言って起きた。
「・・・何が?」
「美容師」
「・・・・なるの?」
「儲かりそうだもんな」
「動機が不純!!」
思わず突っ込んだらエースが笑った。
「でもなったらアコ来るだろ?」
「・・・行くけど」
「指名料5000円な」
「ぼったくり!!」
「じゃあ1000円にしてやるから絶対俺を指名しろよ」
「・・・・・するけど」
嬉しいやら嬉しくないやら。
ていうかエース何処まで本気なんだろ。
「絶対俺にしろよアコ」
「・・・・なんかホストみたい」
「ホストぉ?絶対ェ無理」
「何で?」
「女の相手が面倒」
エースらしい理由に笑いながらも、
「でも美容師さんだって女の人の相手するじゃない」
私はそれが嫌なんだけどな、と思う。
「仕事の目的が違うだろ?」
「・・・・エースのくせに正論」
「くせにってなんだよ」
「でもさ・・・ほんとになりたいんなら応援するよ」
エースならなれると思うし。
・・・意外と、器用だし。
「なりたいっつーか・・・・・・髪、触りてェだけだ」
「・・・・変態?」
「うっせェ。好きな奴の髪だけ触っていたいんだよ」
「美容師になったら選り好み出来ないよ?」
「っだから、俺はお前の髪だけ触れりゃいいっつーの」
耳まで真っ赤なエースが、
私を睨みつける。
「・・・・エースってホント私の髪好きだよね」
「あ?」
「小さい頃褒めてくれたの、覚えてない?」
「覚えてっけど・・・・」
「それが嬉しくて私ずっと伸ばしてたんだよ」
「・・・じゃあ何で切ったんだよ」
「髪切ったら私を見てくれるかなあって」
「・・・・意味わかんねェ」
「だってエース私の髪しか見てくれないし」
髪を切ってサッパリしたせいか。
今まで言えなかった気持ちがすっぱり言えた。
「確かにアコの髪は好きだし、他の男に触らせたくねェ。でも髪だけじゃねェよ」
「・・・・え?」
「髪が綺麗だって言ったのは嘘じゃねェけど・・・言ったらアコが笑ったから」
「・・・・から?」
「髪の長さ関係なくアコが好きなんだっつーの」
・・・・エースから思っても見なかった言葉。
「・・・髪切って良かったなあ」
「どういう意味だよ」
「エースの気持ち聞けたし。私も・・・エースに好きって言えるから」
そう伝えたあとのエースの驚いた顔と、
すぐに目を細めて嬉しそうに笑った顔。
「で、結局美容師にはなるの?」
「ならねェ」
ですよね。