短編④
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「・・・・・シャンクスさぁ」
「参ったな」
「参ってるのこっちなんだけど」
「だっはっは、すまん」
「反省して」
声を強めてみれば、
「・・・・・しちゃいるんだが」
シャンクスは苦笑した。
・・・・・まあ、気持ちはわからなくもない。
私の同僚、シャンクスは。
イケメンで仕事も出来て上司、後輩ともに信頼があり優しくてまさにほぼ完璧な男。
欠点は近しい人間でないと見えないだろう。
・・・・・だから、まあ。
モテる。
私から言わせればそこが欠点だ。
何せ、
「何人目?」
「覚えてねェな」
・・・・数えきれない程たくさんの女性を泣かせているのだから。
「ただでさえ人手不足なのに」
午前中にシャンクスに告白したらしい後輩は、
見事にフられて泣いて帰ってしまった。
・・・・辞めなきゃいいけど。
「気を付けてはいるんだがな・・・・」
「・・・・・まあ、シャンクスだけが悪い訳じゃないんだけどね」
「そう言ってもえらると助かる」
少し優しくされただけでシャンクスは自分に気があるのだと勘違いする女性が少なくないのも原因の1つ、だから
かといって優しくしないで、っていうのも問題だし。
ほどほどに、と言ったところでどれくらいがほどほどになるのか答えられる訳でもない。
「もういっそ誰かと付き合っちゃえば?」
彼女がいれば勘違いすることもないだろうし。
我ながらいいアイディア。
「好きな奴はいるんだが」
「じゃあその人とくっついちゃえばいいと思う」
「・・・・それが、なかなかな」
「本命さんは勘違いしてくれないんだ?」
「ああ、難しいもんだ」
「ちゃんと優しくしてる?」
「してる。誰よりも優しく接してる自信はあるぞ」
「わかった」
「・・・・・何が、だ?」
これ以上私の仕事が大変になるのはもう勘弁。
なので、
怪訝な顔をするシャンクスに、
「私がその人とくっつけてあげる」
ナイス提案。
と思いきやシャンクスは難しい顔をした。
「・・・迷惑?」
さすがに余計なお世話だったかしら。
「有難い話しだが一筋縄じゃいかねェ相手だ」
「・・・・・そんなに?」
「ああ、苦労してるんだこれでも」
「ちゃんとアピールしてる?」
「してる・・・・つもりだが」
シャンクスがアピールしても駄目なのか。
・・・・・本命に通じないなんて皮肉な色男だなあ。
「脈はありそうなの?」
「五分五分、といったところだな」
「じゃあまずは距離を縮めないとね」
「と言うと?」
「デートのお誘いをする」
「なるほど・・・・・だが突然誘ったらひかれないか?」
・・・・不安そうに見て来るシャンクス。
意外。
シャンクスならもっと自信満々に誘えるのかと思ってた。
・・・・恋は人を臆病にさせるのね。
「デートって名目じゃなきゃ大丈夫」
「・・・・・その手があったか。さすがだなアコ」
「どういたしまして。善は急げ。誘ってきな?」
「その前に付き合ってくれないか?」
「・・・・何に?」
「デートの相談、もしくは下見だな」
「下見?」
「今度の日曜、空いてないか?」
「・・・・・いいけど」
・・・・・いつも自信満々のシャンクスが。
・・・・少し可愛いとさえ思えてきた。
という訳で、
「おはよ。・・・・早いね」
「楽しみでな、待ちきれなかった」
シャンクスとデートの下見。
まずはお洒落なカフェに連れて来られた。
「ここのランチが美味いと評判なんだ」
「あ、オムライス美味しそう」
「好きだったな?オムライス」
「・・・・・好き」
好きだけど。嬉しいけど。
実際運ばれてきたオムライスはとっても美味しかった。
食べてる間はくだらない雑談をして、
「この後の予定は?」
「ウィンドウショッピング、疲れた頃合いにプラネタリウムか映画のどちらか選んでもらおうと思っている」
そう言ってシャンクスはちらりと見せたチケット。
「・・・・・準備万端だね」
「知り合いのツテで手に入れた無料券だ。期限内ならいつでも行ける」
「なるほど、誘い方も良し」
プラネタリウムも映画も私は好き、だけど。
「・・・・褒めてくれてる割に浮かない顔に見えるが」
「え、そう?」
「問題があれば何でも言ってくれ」
「勿論」
「ちなみにここのカフェはスイーツも充実してる。アコの好きな物を頼めばいい」
「割り勘ね」
「・・・・・気にしなくていいんだぞ」
「あくまで下見でしょこれは。奢ってもらえません」
何故か不満顔のシャンクス。
反論すれば、
「相談に乗ってくれてる礼だ」
とにこり。
「大事なお金は本番用に取っておいた方がいいと思うの」
「なら少し多めに出させてくれ、それならいいだろう?」
「・・・・うーん、それなら、まあ。お言葉に甘えて」
カフェでしっかりスイーツも楽しんで、
シャンクスに多めに出してもらって。
選んだのはプラネタリウム。
「あー・・・・寝るとこだった」
「なかなかに非日常的な体験だったな」
「仕事の疲れが癒された気がする」
「なら良かった」
プラネタリウムが終わって出たところで、
そっとシャンクスが手を繋いできた。
「・・・・・こういうのは本命にしないと」
「駄目か?」
「駄目っていうか・・・・今日のデート内容もそうなんだけど」
「問題が?」
「私はオムライスもスイーツも好きだし、プラネタリウムも好きだけど本命さんはどうかわからないじゃない?」
「ああ、それなら問題ない」
「・・・・そうなの?」
「今日が本命とのデートだからな」
「・・・・・・・・・・ん?」
「口説き落とす本人に聞いてみるのが1番いいだろう?」
「・・・・ちょっと何言ってるかわかんないんだけど」
「アコがオムライスや甘い物、プラネタリウムに映画鑑賞も好きだと俺は前から知っていた。だから誘ったんだ」
「・・・・・・・・・何で?」
「本命を口説き落とす為に」
「しゃ・・・・・・・シャンクスの本命って」
「俺の見立てでは脈は五分五分。・・・・正解を聞かせてくれないか?」
「・・・・・・わ、たし?」
「ああ。・・・・愛してるんだ、俺と結婚を前提に付き合って欲しい」
いきなりのことで頭はほぼ真っ白。
・・・・でももう、答えは決まってる。
だって早くシャンクスに誰かとくっついて欲しかったのは。
勘違いしてしまいそうだったから。
シャンクスが私のことを好きなんじゃないかって。
・・・・・結果、勘違いじゃなかったらしい。
「・・・・・・・・シャンクスの見立て間違ってる。だって私・・・絶対シャンクスのこと、好きだし」
「これでもう誰も傷つけずにすむな」
「・・・・・・・人手不足止められるね」
「よろしく頼む」
・・・・この、満面の笑みが。
・・・・勘違いさせるんだよね。
あ、勘違いじゃなかったのか。