短編④
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今日こそは。
と意気込んで私はひっそりと歩き出した。
そう、今日割と平和な島に着いた私は。
今日こそはこの船を降りる。
そして普通の女として生きる。
・・・・・この、レッドフォース号とのお別れ。
「・・・・・よし」
いける、今日こそは!!
「出掛けるのか?」
「・・・・・・お頭」
「なら俺も行こう」
お頭は何食わぬ顔で私の前に現れた。
「・・・・いいです」
「今日も俺の勝ちだなアコ?」
・・・・なーにが、出掛けるのか?よ。
私が船から降りようとしてるの知ってるくせに。
意地悪だ。
お頭はこうして今まで私のすべての脱走チャレンジを邪魔してきた。
「楽しそうですね・・・・お頭」
「アコは楽しくないか」
「・・・・たまには邪魔しないでくれてもいいのに」
「大人しく船を降りるのを見過ごせと?」
「いいじゃないですか降りるくらい」
「帰って来るならな」
帰って来る気はねェんだろう、とお頭が苦笑した。
「・・・・ないですけど。これ以上足手まといになりたくないですし」
「足手まといだと他の奴らが言ったか?」
「言わなくたって自覚してます」
「お前が怖くなって嫌になったと言うんならわかる」
「そしたら認めてくれるんですか?」
「いや、認めはしねェ」
「結果同じじゃないですか」
「当然だろう?そう簡単に認めてたまるか」
「でも降りちゃえばこっちのもんですから」
「そうでもねェな」
「え」
「何処に隠れてようと必ず見つけだす」
・・・・お頭がやると言った以上必ずやる。
そういう人だ。
「・・・・・もう、どうしたらいいんですか私」
「諦めて俺の側に居るのが1番だと思うぞ」
「足手まといだってわかってて側に居る程度神経図太くありません」
脱走計画阻止もこれで何回目かな。
お頭だって私が居ない方が楽だろうに。
「足手まといなァ」
お頭は頭をぼしぼしと掻き、首を捻った。
「違うとは言わせませんよ。戦闘能力だってないし」
「戦うことがすべてじゃねェだろう」
「海賊だっていうのが問題です」
海賊なのに戦えない。それはかなりの致命傷だ。
「俺達が守るさ」
「守られるだけの海賊が何処にいますか」
「そうか・・・・・そこまでか」
「はい」
「よしわかった」
「えっ」
「お前が海賊を辞めるなら俺も辞める」
「はぁ!?」
「ちょうどいい、この島で暫く2人で暮らそう」
「ええええええええ!?」
驚く私にお頭はにっこり満面の笑み。
「1人にゃさせねェさ」
「だ・・・・・・駄目です!!」
「駄目か?」
「だってそれじゃ私が出てく意味ないし!!」
「2人きりなら他の奴らのことは気にせずに済む」
「じゃなくて!お頭に1番・・・・っ」
「・・・・俺に、1番?」
・・・・1番、嫌われたくなくて。
その為に出て行こうとしてるのに。
乙女心のわからない人。
「お頭は・・・お頭でなきゃ駄目です」
「・・・・俺は何処に居ても俺だ」
「そうですけど・・・・」
それはそうなんだけど。
それでもやっぱり、ここにいて欲しい。
レッドフォース号で。
皆の中で楽しそうに笑って。
時にカッコ良く戦って。
時にだらしなくお酒飲んで。
・・・・海の中に、居て欲しい。
「俺の側は不満か?」
「・・・無茶、するから」
「だが俺はお前が居ないと笑えねェんだ、もう」
す、と差し出された手。
・・・・・悔しいことに私はその腕を。
取った。
「なんてこともあったなァ」
とお頭がしみじみと呟いた。
「ありましたねえそんなお年頃」
「今はもう不満はないみたいだな」
「ありまくりですけどね」
「・・・・そうなのか?」
「お酒の飲み過ぎーとか」
最近は戦闘もめっきり減ってカッコイイお頭もあんまり見られないし。
「だっはっは、そりゃ言われても仕方ねェな!」
「・・・・また脱走試みようかなあ」
「悪いが阻止させてもらうぞ、何度でも」
私に軽口に赤い顔で、
それでも自信満々の笑みを浮かべるお頭はちょっとだけカッコイイ。
「だってやっぱりいまだに戦闘力はないし足手まといなのは変わらないですし」
それでもこの船から降りたいと思わなくなったのは。
・・・・やっぱりお頭のおかげで。
「まァそう気にするな。嫁を守る海賊ってのも悪くねェ」
「・・・・嫁じゃないです」
最後に脱走を試みた夜。
お頭に言われた言葉。
『捕らわれの姫ってやつだな』
『へ?』
『逃げたくなったら逃げようとしていい』
何度でも阻止するし、捕まえに行く。
『・・・・それ絶対逃げられないやつ』
『そんで最終的に俺の嫁さんになってくれ』
私はそれを、強くなれと言われたと解釈した。
でも驚いたことにお頭は本気だったらしく、
最近しきりに嫁になる覚悟は出来たか?と聞かれる。
今夜、もう1回だけ脱走を試みようかな。
それでもお頭が見つけてくれて。
止めてくれたなら。
捕まえてくれたなら。
大人しく、
「あなたのお嫁さんになってあげますよ、シャンクス」
この人の隣にずっといることにしよう。