短編④
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私には好きな人がいる。
ズバリ片思い真っ最中。
・・・・・・でもって、
私には恋のライバルも居る。
地味で不器用な私とは正反対の。
可愛くて器用で、モテモテのライバル。
何でわざわざマルコさんを狙うのか。
こんな勝ち目のない恋を私にさせて楽しいのか。
「まーるこさんっ」
カノジョは今日も笑顔でマルコさんに話しかける。
近い近い距離が近いぞおおお!!!
あんなに近い距離に居られない私!!!
恋人でもないのにただの部下なのに気持ち悪いとか思われないかなって私ならそんなこと出来ないのに!!
すごいな!!
・・・可愛い容姿で。可愛い声で話しかけられて。
マルコさんすごいなあと思うのは、それでも一切態度を変えないところ。
可愛いからとか、可愛くないからとか。
男だからとか女だからとかで一切の差別をしない。
・・・・カッコイイ。
カノジョはそんなマルコさんに少しつまらなさそうな顔を見せ、それでも諦めることなく付き纏う。
偉いなあ。
「なーに感心した顔してんのよ。あんたも行きなさいよ」
私の密かな恋心を知っている同僚ナミが渋い顔で話しかけて来た。
「だって用ないもん」
「なきゃ作りなさいよ。そんなんじゃ一生話せないじゃない」
「そんなことないよ・・・?」
「ライバルに先超されて呑気にしてんなって言ってんの」
「でも私に出来ることないからなあ」
ナミの言うこともわかるけど。
「じゃあとられるわね、間違いなく」
「・・・・そこを何とか」
「何とかするのは自分でしょ、ほら」
ぽん、と背中を叩かれて。
「どうかしたかい?アコ」
「あ」
目の前にマルコさん。とカノジョ。
「・・・・・・・えっと、その」
まずは距離を置いて、深呼吸。
「顔色が悪い」
「へ」
「具合が悪いんだねい?」
「は」
「ちょうどいい、早めの休憩にしろよい」
「え、でも」
「俺も一緒に行くよい、外に出た方がいい」
何が何だか訳わかめ。
そんな状況でカノジョが不満げに、
「マルコさんが休憩行かれるなら私もご一緒にぃ」
と言い出した。
この3人でのご飯は嫌ぁぁぁ!!!
「お前さんは休憩には早いだろい?仕事してろい」
「・・・・はぁい」
じろりとカノジョに睨まれた。
え、じゃあまさかまさかの。
「行くよい」
「あ、はい」
・・・・・マルコさんと2人きりでご飯。
「大丈夫なんですか?さっきの」
俺の奢りだい、と連れて来てもらったレストラン。
「助かったよい。仕事にならなかったからねい」
「・・・・でもカノジョなりに一生懸命、ですよね」
恋に。
「わからないことが多すぎる。そろそろ理解してもらいてェもんだ」
とマルコさんは渋い顔。
・・・・ほんとは言ってしまいたい。
カノジョはマルコさんのことが好きなんですよ、って。
でもこれは私が言っていいことじゃないから。
「・・・・でも、マルコさんがすごいのは事実ですから。頼りたくなる気持ち、わかります」
「は、ほとんど頼ってこねェ奴が何言ってんだい」
「や、なるべくマルコさんのご負担にならないようにと・・・・」
「たまにならいい。頼って来い」
「でも1人で考えてわかることならそれが1番かなあと」
「1人で考えて出した答えばっかりじゃ駄目だい」
「え」
「何のために俺がいるか考えろい。それに、たまには考えるより動いてみるのもいい」
「・・・有難う、御座います」
締め付けられる胸に、はっとひらめいた。
これはせっかくナミが作ってくれたチャンスなんだ。
進展ならずとも何か情報を掴むチャンス!
「あ、あの!!マルコさん、は・・・・恋人さんとかいらっしゃるんですか・・・・!?」
聞いた!!
勇気出して聞いた!!
気になるマルコさんの答えは!!
「いるよい」
居るのかー!!!!!
「それは・・・・可愛い、人?」
「可愛いよい」
それ絶対私じゃないじゃん。
「そー・・・・・・・・・・ですか」
良かったね、貴女の勝ちよ。
だからそんなに睨むことなかったじゃない。
少しくらいいい思いさせてよ。
どうせ最後に隣に居るのは貴女なんだから。
「マルコさんみーっけ!」
・・・・カノジョは素晴らしい嗅覚でここを嗅ぎ付けた。
「・・・マルコさん、私はこれで」
「行くのかい?」
何処か挑戦的に声をかけられた。
「もうご飯終わったんなら仕事戻った方がいいよお」
・・・カノジョは、笑顔で私を促す。
いやでもこんな状況・・・・・って、また考えちゃう。
・・・・考えるより、たまには動く、か。
「・・・・・・マルコさん!!」
「なんだい?」
「私やっぱり具合悪いので早退します!!」
そうだよ負けてらんない!
「え、元気そうじゃない・・・・?」
「めちゃくちゃ頭痛いし胸が苦しいしふらふらするので・・・・っマルコさん送ってもらえませんか!?」
「え、嘘」
驚くカノジョを傍目に、
私は必死だ。
マルコさんはくつくつと笑いながら、
「送るよい」
私に手を、差し出してくれた。
「ま、マルコさん私も一緒に・・・・っ」
負けじと立ち上がったカノジョにマルコさんは、
「いい言葉を教えてやる。押して駄目なら引いてみろ、だよい」
「・・・・それってどういう」
「アコには逆だねい」
行くよい、とマルコさんに手を引かれた。
・・・・何が起きているのか。
マルコさんの車で、マルコさんが運転して。
私は助手席で。
「・・・・・えと、有難う御座います」
社交辞令をまともにとりやがってって思われてないかな。
我が儘、とか。仮病とか思われてないかな。
マルコさんの車汚したりしないかな。
「アコは、よい」
「はい!?」
「考え過ぎるのが悪い癖だねい」
「す・・・・・・・・・・すみません・・・・」
ああああやっぱり駄目だあああ!!
「いや、俺も同じだ」
「・・・・・へ?」
「仕事に影響が出るとか考えて結局動けずじまいだよい。だがもうやめだ」
目の前の信号が赤になって、車が停まった。
「・・・・マルコさん?」
「敵は居なくなった」
「敵!?」
「ちょうど今好きなやつと2人きりでねい」
「は!?」
「俺も動いてみるよい、アコ」
ちゅ、と額にくっついたマルコさんの唇。
信号が青になって。
車が動いて、
私たちの関係も同時に動き出した。