短編④
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それは拠点にしていたとある島に居た時のことだった。
「大変です!!船長が海軍に捕まりました!」
「・・・・・・へ」
見慣れぬ顔の若いクルーがそう言って走って来た。
「すぐにこちらへ!!」
・・・・お頭が、海軍に?
そんなことって、ある?
・・・・・・・・でも、私は。
お頭が捕まったら。
「・・・・行かない」
「何故です!?」
脳裏を過ったのは、
『いいか、もし俺が捕まったら・・・』
お頭の言葉。
「私は行かない。皆に任せる」
「・・・・仕方ないですね」
「・・・・・え?」
がし。
両腕を掴まれて。
え、待って?
これって・・・・・捕まったの私じゃない?
そっか、見慣れない顔のクルーはうちのクルーじゃなくて。
「・・・・あなたたち海軍ね?」
「赤髪をダシに簡単に捕まえられると思ったが・・・残念だ」
「・・・・それはそれは、残念でした」
「人質の姿があれば赤髪も抵抗はすまい」
「海軍のくせに卑怯なのね。正義が泣いてる」
「海賊を捕らえるためだ」
「・・・・さいですか」
「赤髪さえ捕らえてしまえばお前など用はないぞ小娘」
「あー・・・・でしょうねえ」
「しかし・・・赤髪はお前のような小娘を助けにくるかが問題だな」
「絶対来る」
「ふん、罠だとわかっていて来るか?」
「来るの。馬鹿だから」
あの時私だって負けじと言い返した。
『じゃあお頭、もし私が捕まったらその時は』
・・・そして何処からか、赤髪が来たぞ、の声が聞こえた。
「うちの大事なクルーを返してもらおう」
「お頭・・・・・」
「大丈夫だアコ、すぐ行く」
「でもこれ・・・罠ですよ?」
「何、誰かさんのハニートラップに比べたら全部たいしたことはねェ」
「・・・・誰のことです?」
私ハニートラップなんかしかけた覚えないんですけど?
なんて呑気に会話してる間に、
少数とは言えうちの方が押してる戦い。
「あ・・・赤髪ィ!人質がどうなってもいいのか!?」
「問題ない。もう届く」
もう届く。
その言葉の通りに、近くなった声。
目の前の、大きな手。
「おかしらっ!!!」
全滅です!!の声が、響いた。
「今度絶対に何があっても1人きりになることは?」
「しないと誓います」
「もし誓いを破ったら?」
「・・・お頭に何をされても文句は言いません」
「よし。いいだろう」
・・・・・救出後のお説教も終了。
「海軍が卑怯な手ぇ使うからー」
「相手が海軍だけとは限らねェだろう?むしろ海賊の方が多い」
「・・・はーい」
「だが・・・・そうか、行かなかったんだな」
「・・・・だって、そういう約束だから」
「そうだな。約束だった」
前にお頭に言われたことがあったから。
『いいか、もし俺が捕まったら・・・アコは何もしなくていい』
『え、何でですか。嫌ですよ』
『駄目だ。他の奴らに任せて安全なところに居ろ』
『でも私だってっ』
私だって赤髪海賊団なのに。
『お前が安全なところに居るとわからなければ俺は動けなくなっちまう』
『・・・・でも』
『頼む。・・・・な?』
『・・・・・わかりました』
『悪いな』
頭を優しく撫でられて、複雑な気持ち。
だから言い返した。
『じゃあお頭、もし私が捕まったらその時は放っておいて下さいね』
『馬鹿言え。そんなこと出来るか』
『・・・・そりゃ確かに私とお頭じゃ強さは違いますけど』
お頭を危険な目に遇わせたくない。
私なんかの為に。
『行くさ、必ずな』
『それって何かずるい』
『だっはっは、そうだな。俺はずるい。・・・そんな俺でもついてきてくれるか?』
その時の寂しそうなお頭の笑みに思わず頷いてしまった私の負けで。
「でもそもそもお頭が海軍に捕まることなんて絶対なさそう」
「どうだろうな・・・そう簡単には捕まらないつもりだが」
「大将クラスでも来ない限りまあ無理ですよね」
「そう願いてェところだ」
「人質の私と交換、だったら?」
「却下だな」
「え・・・・」
「俺はお前の側に居たいんだ、すれ違いなんざまっぴらごめんだ」
「・・・・じゃあどうするんですか?」
「お前を救い出す。どんな手を使っても俺の側に居てもらう」
力強い言葉が嬉しい。
「最初は釈然としなかったんですけど」
「今でもしてねェだろう?」
「・・・わかります?」
私の返事にお頭が苦笑した。
「伊達に長いこと一緒にいねェさ」
「・・・まあでも、私はお頭を信じて待つことが仕事なんだなって」
今は思えるようになった。
「ああ・・・アコが待っててくれるなら俺は必ず無事に帰ろう」
「万が一戻って来なかったら許しませんけど」
「約束だ」
「・・・・はい、約束」
絡まった指に。
触れた唇。
私たちだけの、約束。