短編④
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「うわあ・・・・・・・」
思わずため息に近い声が漏れた。
・・・・・島に着いて1ヵ月。
明後日にはこの島を離れるからと、
1人で買い出しに来たはいいものの。
まさかの雨。
しかも結構な土砂降り。
結構な手荷物だし。
・・・大事な食材、濡らしたくないし。
走って船まで戻るのは出来ないなあ。
しばらくこの辺で雨宿りするしかないか。
他の皆は大丈夫かなあ。
サッチさんは船でエース対策するって言ってたから大丈夫かな。
「ねえお姉さん雨宿り?俺送ってあげよっか?」
突然の有難い申し出に喜んで、
「いいんですか?港にある船までお願いしたいんすけど」
「船?旅の人?」
「あ、海賊ですぅ。白ひげ海賊団ていうんですけど」
なるべく愛想良くしたつもりだったんだけど、
そう言った瞬間目の前に居た人は無言で消えた。
・・・・早いよ。
はあ、と再びため息が出たところで、
「知らない奴についていくなって教えた方がいいのかい?」
「マルコさぁぁぁん!!」
我が白ひげ海賊団の長男、マルコさん!!
「簡単に名前出すんじゃねェよい、危ないだろい?」
「でも今逃げられちゃいましたよ」
「今のはたまたまだい、下手したらタダじゃすまねェ」
「はーい、気を付けます。ところでマルコさんも雨宿りですか?」
「俺は飛べばすぐ戻れるって忘れたかい?」
「おう・・・・羨ましい」
あれ、でもじゃあ何故ここに?
「見た感じ通り雨だろい。すぐにやむ」
「じゃあ下手に動くよりここでじっとしてた方あいいってことですね」
「そういうことだい」
「・・・・マルコさんは帰らないんですか?ひとっ跳びで」
「目を離すと秒で誘拐されそうな仲間を置いて帰れるかい?」
「秒て。そんな簡単に誘拐されませんよう」
「さっき見知らぬ男についていこうとした女が言うことじゃねェだろい」
「・・・・てへ」
「うちの大事な食料もある」
「え、待って。マルコさん私と食料どっちが心配です?」
「食料はなかったら皆が飢え死ぬ」
「・・・・・・・マルコさん・・・・・・!!」
自分で聞いておいてなんだけどちょっと悲しくて泣きそうになった。
「・・・アコは大事な家族だい、失う訳にはいかねェ」
「マルコさーん・・・・!信じてました!」
「それで?いい食材があったのかい?」
「はいっ珍しいものをたくさん。ここでしか買えないようなのを中心に買いました」
「・・・・変なモンは作るなよい」
「何ですか変なモンて」
「食えないようなもんてことだい」
「とか言ってマルコさん試作品結構食べてくれてますよね」
「・・・まあ、今までのはマズくなかったから食えただけだ」
「大丈夫です今回も美味しいの作りますから!」
エースもだけど、マルコさんも試作品を食べてくれる。
エースは何でも美味しいと言ってくれるから大量に作りすぎた時にはいいけど、
味の感想を聞くには向いてない。
その点マルコさんはちゃんと厳しい意見も言ってくれるから、助かってる。
塩がもっとあった方がいい、とか。
「期待してるよい」
「はいっ是非期待しててください!」
料理にだけは自信ありますからね!
「ところでマルコさんは何か御用が・・・・?」
「・・・ただの散歩だい」
「あらら・・・ついてないですねえ、散歩で雨に降られるなんて」
「そうでもねェよい」
「・・・・何かいいことが?」
時間を無駄にしてるとマルコさん、怒りそうなものなのに。
マルコさんの横顔は何処か機嫌が良いようにすら見える。
「アコがほいほい見知らぬ男についていくような女とわかったからねい」
「・・・・いやいや、ほいほいて。あれは船に戻る為っですよ」
「船の置いてある場所、わかるのかい?」
「わか・・・・・・・・・りますよ」
「へェ、そいつぁ侮って悪かった」
全然悪かったと思ってない口ぶりでマルコさん。
「あ、でも小降りになってきましたね」
「そろそろだねい」
「はい。・・・・・・マルコさん?」
そろそろ、と言いながらマルコさんは私の手から食材の入った袋を2つ取り上げた。
「重いだろい?」
「持ちますよっせめて1つは!!」
「うちの大事な食料だからねい」
「でも個人的なものもありますし!!」
「うちの大事な料理人の腕に何かあったら大変だろい?」
そう言うマルコさんの優しい顔。
「うちの大事なお兄ちゃんに何かあったら大変です!」
「これくらい重いうちに入らないよい」
・・・これ以上話しても無駄だと察し。
「・・・・有難う御座います」
素直に甘えることにした。
「・・・・マルコさんが荷物持ってくれるなら」
「おい」
「雨あがるんならもうちょっと買い物しても・・・・」
なんちゃって。
「・・・・するかい?」
「え」
「このぶんならもうあがる」
「で・・・・・でも・・・」
「アコ、見えるかい?」
「あ・・・・虹・・・・・だ」
マルコさんが上を見上げたので同じようにしてみれば、
見事に晴れて空に虹がかかってた。
綺麗。
「そのまま見惚れててくれるかい」
「へ」
「一瞬で帰って来る。ここを離れるなよい」
「マルコさん!?」
マルコさんの姿があっという間に変わり、
空へ飛び立った。
・・・・・不死鳥の美しさに、今度は見惚れた。
・・・・ほわあ。
なんて息を吐いてる間に、
「待たせたねい」
「待ってない!!」
戻ってきた。
「あれ・・・・マルコさん、荷物」
「船に置いて来た」
「はへ!?」
「心配しなくてもサッチに預けてきたよい」
「ごごごご丁寧に有難う御座います・・・・!」
「荷物があったら手が繋げねェだろい?」
なんて言いながらマルコさんが手を出して来て。
「・・・・・マルコさんは私に甘いですねえ」
・・・私は嬉しくて仕方がない。
「自覚はしてる」
「あら」
「惚れた女が傘も持たずに出掛けてわざわざ迎えに来るとはねい」
「・・・・誰が?」
「慌てて来たんで自分も傘を忘れるポカをやらかしてちゃ世話ねェ」
「誰の話しです!?」
「・・・・・行くよい」
「あ・・・・・・・はい」
繋がれた手と。
青い空と虹と。
・・・・・・・・・雨上がり。
これから、デートです。