短編④
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「・・・・・アコ」
「はい、なんでしょう」
「おかしいだろい、どう考えても」
「おかしくないですよ」
美味しいオムライスをもぐもぐ。
私と恋人のマルコさん、ただ今デート中です。
ランチのオムライスをもぐもぐ中です。
なーにも可笑しいことは御座いません。
「・・・・このテーブルとイスの構造上アコが隣に居るのはおかしいよい」
「やだなあマルコさん、私難しいことはわかりませーん。うふふ」
そうね。
確かに。
私たちが来るまで真ん中にテーブルを挟んで向かい合うようにイスが2つ置いてあった。
でも今。
イスは隣同士に並んでおります。
何故かって?
「違和感しかねェよい」
「ほら私たち恋人同士ですから!!」
「顔が見えねェ」
「私の横顔を存分にご覧下さいませ」
「正面から見せろい」
「・・・・いやん」
いやまあ別に正面から見られるのはいいのよ。
見られるのは。
問題は。
「・・・・アコ」
くい。
「ぎゃああああ!!!」
「・・・・おい」
目が合った!!
マルコさんと!!目が合った!!
「はああああ無理!!!」
「・・・・ったく、よい」
「すみませぬ!!!」
・・・・問題は、私がマルコさんの顔を見られないことだ。
「だってマルコさんがカッコ良すぎるから!!」
「・・・・褒められて悪い気はしねェがよい」
「はい!カッコイイマルコさんが悪いのです!!」
「・・・・恋人と目が合わないってのはどうも、ねい」
「・・・・・・はいぃぃ」
一応ちゃんと目を見られない理由は伝えてある。
マルコさんがカッコ良すぎて、
マルコさんが好きすぎて見られないということ。
「そこまで意識するような顔じゃねェだろい?ただのオッサンだよい」
「ただのオッサンはこんなに色気ありません!!」
「・・・・そうかい?」
ちらりと見たマルコさんの横顔は呆れ気味。
・・・そうなるよね。
ああ、罪悪感!!
「・・・・・ごめんなさい」
思わず凹んだ私の頭に、ぽんと乗せられた大きな手。
「徐々に慣れていきゃいいよい。離れられるよりよっぽどいい」
「マルコさぁぁん・・・・!!」
「・・・・俺の名前呼びながら飯を見つめるのはやめとけよい」
「大丈夫ですもうすぐ食べ終わりますから!」
「そう言う問題じゃねェ」
と言いながら、同時に笑い声も聞こえてほっと安心。
「このあとは水族館ですね!」
「よい」
「はあああ・・・・・綺麗」
水族館は遠慮なく魚と見つめ合えるから気楽。
「綺麗?マグロが・・・・・かい?」
「泳ぐさまも綺麗ですが水が綺麗で癒されます!!」
「ははっ、なるほどねい。確かに水も綺麗だが・・・・ここは清掃も行き届いてる」
「清掃?」
「ガラスに俺達が映ってるだろい?」
「・・・・・え」
ふと見れば確かに。
手を繋いでいる私たちの、姿が。
「・・・・・・・無理っ」
驚きのあまりしゃがみこんだ。
上から、ククッと言う笑い声が聞こえて。
ああっ見たいけど見れない!!!
見たら死ぬ!!
「手は離さねェよい」
「・・・・はい。離さないでください・・・・!!」
恥ずかしがり屋な私を理解してくれて。
あたたかく包み込んでくれて。
・・・・素敵な恋人。
「顔見れない恋人って意味ある?俺と付き合おうよ」
デートの翌日。
職場でも恋人に会える幸せを噛みしめていた私を絶望に突き落としたのは、同僚。
「か・・・・・顔見れなくてもマルコさんと居たいから!」
「マルコさんだってホントはつまんねー女って思ってるよ?」
「・・・・・それ、は」
そうかもしれないけど!!
「ほらぁ、俺と付き合った方が絶対いいって!」
「じゃあ言うけど。好きでもない人と付き合って意味ある?」
「・・・・言うなあ」
全然笑えない会話に、
「そこ、サボってんなよい」
「・・・・こえー恋人」
「私にはめっちゃ優しいから」
「うわ、惚気られた」
「ふふん!!」
夜、マルコさんと2人でラーメン屋さんのカウンターで並んで夕食。
「昼は随分と楽しそうだったねい」
「たの・・・・・・・・・しそう、でした?」
「そう見えたよい」
・・・・顔、見れないから。
声だけでは怒ってるのか呆れてるのか無感情なのかわかんない。
・・・・だから、恥ずかしいけど。
「・・・・・・・・・っマルコさんと居る時の私は、つまらなさそうですか!?」
「・・・・アコ?」
はあああカッコイイ!!
じゃなくて!!
「マルコさんにとって私・・・・つまらない、ですか!?」
初めてかもしれない。こんなに長い間見つめ合ったのは。
「仕事でもねェのにつまらない女を側に置く趣味はねェよい」
「でも・・・・っ」
「アコは十分面白くて可愛い。言ったろい?離さないってよい」
「あ・・・有難う御座いますぅぅ!!」
「たまにはいいもんだねい。アコの目に俺が映るってのは」
「はううう!!!」
「でも俺は・・・・アコが隣に居る今の状態にも満足してんだい」
「・・・・たまに正面に座れるように頑張ります」
「アコらしくいりゃそれでいい」
「・・・・はい」
私の定位置。
あなたの隣。
時々正面。