短編④
夢小説設定
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「エースを好きになったぁ・・・・・?」
「はいっ」
「何でまた」
サッチさんが驚くので私も驚いた。
「何でって・・・・カッコイイし優しいし強いし」
「それ全部俺にも当てはまると思うけど」
「エースだけだったから・・・・」
「何が?」
「泣いてる理由、聞いて来たの」
「泣いてたの?」
「玉ねぎで」
どんなに早く切っても、
どんな工夫をしても駄目で。
泣いちゃうから。
この間もそうだった。
「あー・・・・・・」
ホント情けない。
料理人として。
こんなんでいちいち料理中断して怒らない皆は優しい。
・・・・・優しい皆に、報いたいのに。
玉ねぎの成分が目に染みて、甲板で泣いていた私。
他のクルーは皆そんな私を見るとぎょっとして去っていく。
まあ、別に大袈裟にされたくもなかったからそれで良かったんだけど。
皆ごめんなさい・・・・と思いながら、
そろそろ落ち着いたかな、と涙を拭いた時だった。
「泣いてるのか?」
「え?
そう言って真剣な顔で声をかけてくれたのはエースだった。
「誰かに何か言われたのか?それとも何かされたか?」
「や、そういうんじゃ・・・・」
「隠すなよ。言えって」
「大丈夫なの、ほんとに。玉ねぎで泣いてるだけだから・・・・」
「玉ねぎ?」
「硫化アリルっていう成分が目に入っちゃうと涙出て来るんだよね・・・・」
「・・・・そっか」
私の説明に少しだけほっとした様子のエース。
でもその後すぐに、
「痛いのか?」
私の目を覗きこんで来た。
「・・・・ちょっとだけ」
「痛くならない方法とかねェの?」
「色々試したんだけど私だけ全部効かなかった」
「アコだけって・・・」
「大丈夫、もう落ちついて来てるし」
「ごめんな、俺何も出来なくて・・・」
・・・・優しいエースに、
嬉しさでまた涙が出て来て。
エースは完全に私が泣き止んで厨房に戻るまでずっと側に居てくれた。
「という訳なんです」
「俺なら泣いてる女の子居たらすぐ抱きしめて慰めるけどなあ」
「それセクハラです」
エースは私が楽になる方法を考えて、
悩んで。
側に居てくれた。
それがどんなに嬉しかったか。
「ま、普通は声かけずらいよなあ・・・・」
「それもわかります。だから別に皆を責めようとは思わないんですけど・・・」
「しかも普通泣いてる理由聞けないわな、エース以外」
「・・・・だから、好きなんです」
「玉ねぎ、ねえ。まあその辺は俺にも考えがあるから」
「考え?」
「ま、伊達に料理人やってないからさ」
「はあ・・・・・・」
サッチさんが任せろと言うので玉ねぎのことは任せることにした。
私が自分でカタをつけなければいけないのはエースのこと。
とりあえずは片思いを楽しみながらアピールせねばだわ。
「いただきますっ」
怒涛の夕飯タイムが終わってようやく私も遅めの夕飯。
「今日は大丈夫だったみたいだな」
「あ、エース」
エースが隣に座ってきて笑いかけてくれた。
「今日は玉ねぎナシだったから。あ、でもなんかサッチさんが考えてくれるみたい」
「サッチがぁ?信用出来んのか?」
「料理人としては信用出来る人だよ」
「そっか。まあ何とかなったらいいよな」
「有難う、エース」
「俺は何も出来ねェ、悪ィ」
「ううん、気にしてくれるだけで嬉しい」
「当たり前だろ?何かあったらいつでも呼べよ」
「うん」
エースと笑い合って、幸せ。
だったのに。
「アコちゃん」
「・・・・さ」
突然サッチさんから私に突き付けられた、包丁。
「サッチ、さ・・・・・?」
咄嗟にエースがサッチさんから包丁を取り上げて、
「いっ、たあ・・・・」
「てめェ何してんだよサッチ!!」
サッチさんを突き飛ばした。
「アコ大丈夫か!?」
「う・・・・うん」
「絶対ェ、守るから」
「・・・・エース、でも危ない・・・・っ」
「心配すんなって。サッチには負けねェし。好きな女1人くらい守るからよ」
「・・・・・え?」
「あー・・・・っこんなタイミングになっちまったけど。好きだ、アコ」
「・・・・わ、たしも・・・・好き・・・・」
突き飛ばされたサッチさん曰く、
切れ味の良い包丁で玉ねぎを切ると涙が出ないんだそうで。
その包丁を渡しに来てくれただけらしい。
・・・・・・サッチさん、有難う御座いました。