短編④
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今日は見張り当番だってわかってたから。
ちょこっとだけ楽しみにしてた。
冬島が近いせいか、
最近は空が澄んでいて星や月が綺麗に見えるし。
何より今日は満月だから。
こんな時の見張り番。
月見酒しない手はないでしょう!!
ということで。
1人お酒と手作りおつまみで夜空を見ながら見張り。
「・・・・ふぅ」
とはいえ見張りの仕事もあるし、
飲み過ぎに注意。
でも、幸せ。
幸せを噛みしめながら耳を澄ませてると、
ふと下の方から物音。
なんだろ、と覗いてみると。
「・・・・エース?」
エースが上って来た。
「よォアコ、お疲れ」
「どしたの?何かあった?」
エースは私を見て、
「いい匂いがしたから来た」
と言った。
・・・・いい匂いって、これ?
「お米で焼いたお煎餅。お酒のおつまみにと思って」
「酒も飲んでんのか」
「だってほら今日すっごく月が綺麗だし」
「月見酒って訳だな?」
「そ。エースも一緒にする?」
「へへっ、そうこなくちゃな」
エースの鼻すごいな。
「はいどーぞ」
「ん、さんきゅ。・・・・寒くねェ?」
「うん、大丈夫。お酒も飲んでるし」
「そっか。あんま飲むなよ?」
「だいじょーぶ。エースも来てくれたし」
「・・・・あのな」
エースが苦笑したので、
「ここに居るってことはそういうこと」
「・・・・ま、いいけどよ」
優しく諭してあげたらしぶしぶ納得した様子。
「んー美味しい。エースいれば安心だし」
「おー何でも来い」
「来ない方がいいけどね」
「そうか?つまんねェだろ」
「・・・・いいんだよそれで」
「ま、確かにこの時間邪魔されたくもねェしな」
「でしょ。ほら、月綺麗」
「だな。あーうめェ」
月が綺麗って言ってるのにあー美味いって。
・・・エースらしくて笑える。
何だか私も脳が食べ物になってきて。
思わずお煎餅を空にかざした。
「このお煎餅も・・・お月さまと同じ。まんまるね」
「でも月は食えねェ」
「・・・・そうだけど。でもどんな味するんだろうね、月って」
「ははっ、興味あるのそこかよ!」
「だって気になるじゃん。かたいのかなあ柔らかいのかなあとか」
「食えねェモンに興味はねェな」
「しょっぱいのかなあ甘いのかなあ」
「俺は柔らかくて甘いのがいい」
「そうなの?」
じゃあ今度はまんまるいお饅頭でも作ってみるかなあ。
それかホットケーキ?
「これが1番美味そう」
「は」
ぱくり。
美味そう、と言ったエースはそのまま私の頬に噛みついた。
痛くは・・・・なかった、けど。
「え、えーす!?」
「んめェ」
そしてそのままぺろりと舌で舐めあげた。
「にゃ、にゃに!?」
「柔らかくて甘いの」
エースもう酔ってる!?
早くない!?
「食べ物じゃないから!私!!!」
「はははっ、冗談だって」
冗談になりませんけど!?
「・・・・っもう」
怒ってみたけど気にしてない様子でエースはお煎餅を食べ、
お酒を飲んでる。
・・・・その姿が美味しそうだから、
つい許しちゃうんだよねえ。
もう1度月を見上げる。
周りにはたくさんの星々。
「うーん、やっぱり月はケーキかも」
「ケーキ?」
「そう。それで星は砂糖なの。甘くて美味しいケーキの出来上がり」
「・・・・・んまそうだ」
「エースがずっとここにいてくれたら今からケーキ焼いて来れるんだけどな」
ぽつりと呟いてみたら、エースが思い切り苦笑した。
「この時間に煎餅食って酒飲んでシメはケーキか?太るぞ」
「・・・・それは言わないで」
「いいからここに居ろよアコ。ケーキはまた明日焼けばいいだろ?」
「・・・・ん。そうする」
エースが妙に不機嫌になったので見張り兼月見酒を続けることにした。
「つーかさ」
「ん?」
エースが月を見ながらぽつりと話しだした。
「ほんとは酒も月も・・・ツマミもどーでもよかったんだ」
「・・・・・どういうこと?」
「匂いがしたっつーのも嘘。悪ィ」
「な、なんかあったの・・・・?」
エースは変わらず月を見たまま、
「別に。ただアコと2人きりになりたかっただけだ」
と静かに言った。
「・・・・・私に話しが?」
「んー・・・・・いや。何て言ったらわかるか・・・・」
「悩み事?」
「いや。違うな」
「・・・なーに?」
「・・・・今日は、いい」
「そう?」
「あァ。このまま2人でずっと見張りしてようぜ?」
「・・・・うん」
ほんとは、私もエースに言いたいことがある。
いつか2人きりになれたら。
「・・・ねえエース」
「ん?」
言おうと思ってたことが。
・・・・・でも。
「・・・・なんでもない」
「ははっ、何だそれ」
でも、まだ。
(私たちは月の下で臆病になる)