短編④
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ある日、郵便受けに1通の手紙が届いた。
宛名は私。
差出人の名前は書いてない。
・・・・・・内容は。
「脅迫状?」
「そんな感じ」
幼馴染のシャンクスに相談してみた。
うちに呼んでお酒を酌み交わしながら。
「・・・・どれ」
もらった手紙を渡すと、シャンクスはまじまじとそれに目を通した。
「・・・確かに、内容は脅迫だな」
「でしょ」
「で、心当たりはあるのか?」
「差出人に?それとも脅される内容に?」
「両方、だな」
手紙の内容は簡単に言えば、
自分はお前の弱みを握っている。
バラされたくなければ1週間後、某所に来い。
っていう感じ。
弱みの内容も、自分の名前も何も書いてない。
「差出人には心当たりはない」
「弱みにはあるのか?」
「・・・・・ないけど。あるとしたら・・・・」
「したら?」
・・・・・・思いつく限りでは。
「信号が赤になりかけてるときに渡ったこととか」
「だっはっは、そりゃ可愛い弱みだな!」
「この間フリマで値切ったこととか、野菜が嫌いでよく残すこととか」
「弱みになるのか?それが」
「・・・・・さあ」
「他には?」
「ない。むしろ私が知りたい」
私の弱みって何。
いや色々あるんだけどさ。あげればキリはない。
でも別にそれをバラされたからってまずいようなことはない。
「で、行くのか?アコ」
「うーん、弱みは知りたいけど行くの面倒」
「アコらしいな」
「でもねーほっとくのもねー」
住所知られてる訳だし。
「それで?俺は何をすればいいんだ?」
「明日一緒に来てくれたらすっごく助かるんだけど」
「なるほど。一緒に行って、それで?」
「ことと次第によっては犯人ボコって警察に突き出すのを手伝って」
「了解」
「いいの!?」
「ああ、勿論だ。その代り、タダで、とは言わないが」
「・・・・・・報酬は何をお望みで?」
まあ、危険なところ(かもしれない)に連れて行くわけだから。
いくら優しいシャンクスとはいえ無料とはいかないか。
「アコ」
「何?」
「アコが欲しいな」
「・・・・ちょっと何言ってるかわからないな」
「難しいことは言ってないつもりだが?」
「いや十分難しいよ」
シャンクスは何食わぬ顔で、
「いい加減返事をくれねェか?」
「う・・・・・・・・・・・」
「3年待った。・・・これ以上必要か?」
・・・・・実は3年くらい前に、
シャンクスに告白されてた私。
いや、忘れてた訳じゃないよ?
何度かアピールもされてるし。
「・・・・・・・今?」
「今」
「今!?」
優しいシャンクスに私は甘えすぎていた。
・・・・3年待ってくれたんだから、
まだあと少し。
そう思ってた。
それがここにきて、返事を要求されるなんて。
「・・・・・・私、は」
「俺じゃ駄目か?アコ」
「・・・・それはぁぁ・・・・・」
「長い付き合いだ、アコのことはわかってるつもりだ」
「それは・・・・うん、わかる」
「体調が悪くても素直にうんと言わなかったり」
「・・・・うへえ」
「そういうところも愛しいと思ってる」
「・・・・どうも」
シャンクスはじわじわと距離を詰めて来て。
「他に好きな奴が居る訳じゃねェってことも」
「・・・・うん」
「今、めちゃくちゃ照れてるってこともわかる」
「わかってるなら離れて!!今すぐに!!」
「それなら返事をくれ、今すぐに」
シャンクスは意地悪な笑みを浮かべて返事を迫って来る。
「・・・・・・っ」
「アコ」
耳元で名前を囁かれて心臓が止まりそうだ。
「お・・・・・・・!!」
「お?」
「・・・・おなか、すいた」
「・・・・・そうか」
情けないことにこんなことしか言えなくて、
案の定やっぱり優しいシャンクスはそう言って寂しそうに笑って目を伏せた。
あー・・・・・最悪。
どれもこれも脅迫状のせいだ。
・・・・・や、違うな。
私の自業自得。
「・・・・シャンクスの、カレー食べたい」
「毎日?」
「いや流石に毎日は無理」
「・・・・だよなァ」
「み・・・・味噌汁なら毎日飲みたいかな」
・・・・って何を言ってるんだ私は。
普通これ言われる側じゃない?
「いいのか?俺の味噌汁で」
「・・・・おかずは私が作るね」
「飯は俺が炊こう」
「・・・・よろしく」
こんな私なのに、シャンクスは気分を害した風でもなく、
むしろ嬉しそう。
「それで、返事を聞いても?」
「私もほんとはずっとシャンクスが好きでした・・・・!!よろしくお願いします!!」
交際すらしてなかったのに、一気にこんな話になってしまって。
「親御さんにご挨拶もしないとな」
「いいよ別に」
「そう言う訳にはいかないだろう・・・特にアコのおふくろさんには相談にも乗ってもらってたしな」
「そうなの!?」
「ああ、今度お礼がてら挨拶に行かせてくれ」
「・・・・うん、よろしく」
ちゅ、と軽いキス。
・・・・長い間待たせちゃった私には文句も言えないけどただただ恥ずかしい。
「とりあえずは脅迫状の件を片付けねェとな」
「ほんとそれ」
「俺もアコの弱みには興味ある」
「・・・・やめて聞かないで」
まさか脅迫状がきっかけでシャンクスとこんなことになるなんて。
・・・まあ、シャンクス嬉しそうだからいっか。
・・・・・・で。
翌日、手紙の通りの時間に指定された場所に行ってみれば。
そこに居たのは、
「・・・・・母さん?」
「あらやだ、シャンクス君と2人で来るなんてどういうこと?」
「いやこっちがどういうこと!?」
どうやら脅迫状の差出人は母さんで。
シャンクスに素直に好きと言えない私を見兼ねて、
いい加減返事をしないとシャンクスに私の小さい頃の恥ずかしいことをばらすぞと脅すつもりだったらしい。
・・・・・・・・・・我が母ながら。
シャンクスは喜々として挨拶を始めちゃうし、
母さんも踊らんばかりに喜んでるし。
・・・・・脅迫状、恐るべし。