短編④
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
確かにうちの店は焼肉食べ放題だ。
・・・・・食べ放題なのだから、
好きなだけ食べていい。
それが食べ放題だ。
・・・・・・・・だけど。
さすがにこれは、
「おねーさん盛り合わせ追加!」
「はーい、ただいま!」
・・・・・食べ過ぎじゃね?
もう何キロいったかな、5キロはいってると思う。
若い男の子が2人、とはいえ。
しかもこの2人、
「おねーさんステーキとタンも追加よろしく」
「・・・かしこまりましたー!!」
お値段が良いお肉も心得てるかのような食べ方をする。
兄弟と思われるこの2人。
常連さん・・・といっても1ヵ月に1回、多くて2回来るお客様。
彼らが来るとつい在庫の心配をしてしまう。
・・・・・・でも。
本当に美味しそうに食べる姿は幸せにもしてくれるんだよねえ。
そしてそして、
「ご馳走様でした」
「ご馳走様でした!!」
「有難う御座いましたまたお越し下さいませ」
最後に2人、丁寧なお辞儀をしてくれて。
店を出て行く。
満足そうなその背中を見送るのもなかなか嬉しいもので。
・・・まだまだこの店のバイトを辞められそうにない。
「先輩、発注ミスじゃないですかこれ」
ある日後輩にツッコまれた、在庫。
「ああ、これ?大丈夫・・・・だと思う」
「思う?」
「たぶん今日・・・・」
「いらっしゃいませー!!」
「先輩すごい・・・・・」
「でしょ」
だいたいわかってきた。
彼らが来店するのは給料日から1週間以内。
2度目があるとすれば更にその2週間後くらい。
私が取りすぎた在庫がどんどん減っていく。
店長にも後輩にも褒められた私は調子に乗って、
今月は2度目があると踏んで再び大量の仕入れをした。
・・・・けど、2週間後。
彼らはまだ来ない。
どうしよう、明後日までに来ないと期限がやばい。
責任とって私が大量に食べることになる!!
「まずい・・・・・・」
「不味いのか?」
「へ?」
絶望した気分でお店を後にしたら、
まさかまさかの人物に声をかけられた。
怪物兄弟の(たぶん)兄と思われる方の男の子。
「美味いぜ、この店」
「あ・・・・・有難うございま・・・・す」
「あー腹減った」
「な、なら是非この店で!!」
「そうしてェのやまやまなんだけどな・・・金がねェ」
おう・・・・・・・!!まさかの金欠DAYだった!!
「あー・・・・・ですよね。あ、ていうか私怪しいものではなくてですねっ」
いきなりこんなこと言ってさぞ怪しまれてるだろうと思ったら、
「知ってる」
「へ?」
「知ってるって。アンタこの店の人だろ?良く肉持ってきてくれるおねーさん」
・・・・まさかの覚えられてた。
まあ私が顔覚えるくらいだもん、覚えてるか。
「い、いつも有難う御座います」
「こっちこそいつも美味い飯ごちそーさん」
「またのお越しを心よりお待ちしております・・・!!」
出来れば2日以内に!!無理なのはわかってるけど!!
「で、何がまずいんだ?」
「あ」
話しが戻った。
「まさか店首になったとか・・・俺らのせいで」
「くっ・・・・首には、なってないです、まだ」
「まだ?」
「あー・・・・・えっと、大丈夫、です」
お客さんにあんなこと話せないし。
じゃあまた、と声をかけようとしたら、
「話してくれよ、力になれるかもしれねェ」
「いやでも・・・・・・・」
「・・・・あの、今日はお1人ですか?」
「え、ああ」
・・・・1人か。
まあでも1人でも、この人なら。
「お夕飯食べました!?」
「いや、まだだけど」
「でしたら!!」
いらっしゃいませ出戻りましたバイト先。
今度は彼と一緒に客として。
「・・・・有難う御座いますエースさん」
「いや、礼を言わなきゃいけねェのはこっちだし。弟も呼んだからすぐ来ると思うぜ」
「重ね重ね有難う御座います!!」
彼はエースだ、と名乗って、弟さんも呼んでくれた。
私はエースさんにお金出すからお店で夕飯を食べて欲しいとお願いをした。
出来れば弟さんも、と。
彼は快諾してくれて、現在に至る。
「・・・・で、説明してくれんだよな?」
「・・・・私がここで働いてるのはご存知ということで」
「あァ」
「・・・・仕入れし過ぎまして、このままじゃ責任かぶって私が破産します」
それくらいなら3人分の食べ放題料金を払って片付けてくれた方が全然マシ。
「ははっ、なるほどな。そういうことならご馳走になるかな」
「よろしくお願いします!!」
「で、何食えばいい?」
「え、お好きなものを何でもどうぞ・・・・?」
「取りすぎたやつのほうがいいだろ?」
「え・・・・エースさぁぁん・・・・!!」
何ていい人!!
「ステーキとタンとカルビをお願いしますぅぅぅ!!!」
「任せとけって」
ああ、救世主。
・・・・・改めて前に座ったエースさんは。
イケメンで。
・・・・めっちゃ輝いて見える。
そしてそして、
物凄い勢いでお肉を食べてくれるエースさん。
「・・・神」
「こんなことで良けりゃいつでも呼んでくれよ」
「有難う御座いますぅぅ!!」
「来月からは週1で来る」
「え」
突然の宣言に私の頭にまず浮かんだのは、
来月ってことはいつ発注すればいいんだっけ!?ってことだった。
けど、
「アンタに会いに」
「・・・・・・・へ?」
にぃ、とニヒルな笑みを浮かべたエースさんはそれはそれはカッコ良くて。
「いつもは給料日あとに来て、2週間後に余裕がある時は来てたんだけどな」
「ああ、それで・・・・」
「でもそれじゃ物足りねェから」
「よく食べますもんねえ」
「肉じゃねェ」
「・・・・サラダとか?」
「言っただろ?アンタに会いたいからって」
「わ・・・・・・・わたしですか!?」
「俺はアンタが、」
とここで突然、
「肉ー!!!!」
・・・弟さんが飛び込んできた。
「エース!肉タダで食えるってほんとか!?」
「・・・・いらっしゃいませどうぞごゆっくり」
って今私店員じゃないんだった。
「・・・・好きだからな、アコ」
「え!?」
ぽつりと呟いたエースさんの赤い顔と、
優しい笑み。
・・・・・・・私、また発注ミスしちゃうかもしれないわ。
「俺も好きだぞー肉ー!!!」
喜ぶ弟さんの可愛いこと。
・・・・・私も好きです。
(どっちが、かな)