短編④
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
エースは優しい。
恋人の私だけにじゃない、皆にだ。
「助かったわァエース隊長」
「ほんと、エース隊長って優しいから好きよ」
・・・・・ちょっとナースのお姉さまがた。
「またよろしくね」
「あァ、困ったらいつでも呼んでくれよ」
・・・・・ちょっとエース君。
・・・・・・・・・・・もう。
新しい島に着いたからエースとデート出来ると思ってたのに。
探したらエースは居なくて。
聞いたらナース達と出かけるとこを見たぞ、だって。
で、夕方までモヤモヤしながら居たら帰って来た。
荷物持ちとして。
・・・・・まあ、美人ナースさんと2人きりで出掛けた訳じゃなかったのが不幸中の幸い。
・・・・ナースさんだけじゃない。
エースは本当に誰にだって優しいから。
部下にだって頼られたらだいたいのことは承諾してしまう。
そのせいで私との時間はほぼないに等しい。
そりゃ私だってエースの優しいところが好き。
・・・・好き、だけどさ。
これはいくらなんでも。
「エース」
思わず声をかけたら、
「ああアコ、どした?」
・・・・どした?じゃないよ。
「・・・ナースさんの買い物の荷物持ち?」
「サッチに断られちまったんだってよ」
しかも二番手だった。
「・・・・明日は一緒に島降りれる?」
言おうか言うまいか迷って、
結局今日一緒に居たかったのに、ということは心にしまっておくことにした。
「おう、一緒に島回ろうぜ」
満面の笑みで返って来たエースの答えにほっとしながらも、不安はまだ全部は消えない。
「きょ・・・・・今日の夜、部屋に行ってもいい?」
「俺の部屋?ああ、待ってる」
「ほんと?じゃあ行くね」
私も私で忙しくてなかなか会えなくて。
でも時間を見つけれは夜にエースの部屋に行くも、不在ばかり。
だから今日は今のうちに約束を取り付けておこうと思って。
良かった、今日は久しぶりに夜2人で過ごせる。
そう思ってたのに。
「・・・・・居ないしね」
夜エースの部屋の前で呆然。
ノックしても声かけても返事はないし鍵もかかってるし。
何なの?喧嘩売ってるの?
それとも何、今何処かで浮気でもしてるの?
するならもっと上手くやりなさいよねー!!!
怒りと悲しみと悔しさと疑問と。
もう色んな感情が入り混じって。
泣きそう。
・・・・もう戻ればいいのはわかってるんだけど、動けない。
もしかしたら部屋で寝てるだけで、すぐにドアを開けてくれるんじゃないか、とか。
廊下の曲がり角からエースが悪い、待たせたって来てくれるんじゃないか、とか。
淡い期待を抱いてしまっているから。
立ち尽くす私の耳にエースの声が聞こえた。
「エース・・・・っ!?」
振り返った先に居たのは、
エースとサッチさんだった。
「助かったわー」
「いいって、飯大事だし」
にこやかにそんな会話を交わす2人。
・・・・私が来るって知ってて。
エースはご飯をとったの?
「あ、悪ィアコ来てたのか」
エースは私を見つけて軽くそう声をかけた。
「・・・・・・・・・わかった」
「・・・・・どうかしたか?」
「もう無理。もう駄目。ごめん、さよなら」
「は!?」
「ばいばい」
ばいばいエース。
私たち恋人らしいこと何もしなかったね。
「おい・・・・アコっ!?」
エースの声を背中に聞いて、私は走った。
・・・・私最低な女だなあって思ったのは、
心の隅で、ああエース追いかけてきてもくれないんだ、って思ってしまったこと。
勝手にさよならして勝手に逃げて来て何思ってんだ私。
馬鹿じゃないの私。
エースからしたら意味不明だよ。そりゃぽかん案件だよ。
きっと今頃訳わかんねェって言いながら寝てるよ。
美味しい物食べる夢でも見てるよ。
知ってた!!
これからどうしようエースと顔合わせるの不安。
・・・・ていうか何より、
さっきのさよならで別れを告げたことをエースが理解してるのかが1番不安。
「こら」
「・・・・・・・・・ぎゃー!!!!」
考え事をしてたら突然ガチャリとドアが開いて、不満そうなエースが入って来て驚いた。
「叫びてェのはこっちだ。何なんだよいきなり」
「・・・・何、って」
やっぱわかってなかった・・・・・!!
「待たせちまったのは悪ィと思ってっけど・・・・そんなに怒ってンのか?」
「・・・・・怒ってる、よ」
「悪かった、約束を忘れてた訳じゃなかったんだ・・・・この通りだ」
エースが深く頭を下げた。
許してあげたくなる、けど。
「・・・エースは、優しいよね」
「・・・・そうか?」
「エースの誰にでも優しいところ、大好き」
「あ、ああ・・・・サンキュ」
「・・・・・でも、エースは」
「・・・・・俺は?」
これだけは言っちゃ駄目ってずっと自分に言い聞かせてたのに。
「・・・・私にだけ、優しくない」
「な・・・・・・・・っ」
私以外の皆に優しいエース。
「だからごめんね、お別れして」
「嫌だ」
「・・・・・・だってもう無理」
無理、と呟いた唇が塞がれた。
エースの唇で。
・・・・信じられないことにこれが初めてのキス。
「・・・・・無理とか、言うなよ。頼むから」
「・・・・でも」
「俺だってもっとアコに構ってやりてェよ」
「・・・・じゃあ、何で?」
「自分たちのことばっか考えてたら・・・・アレだろ?いざって時祝福されねェだろ」
「いざって時・・・・・?」
「どうせ結婚すんなら祝福されてェだろ?周りから」
「け・・・・・・・・・・・・っこん?」
「・・・・・だから俺は、絶対別れねェ」
周りから祝福される結婚の為に?
・・・・・何それ。
「・・・・エースって、かわ・・・・・」
「・・・・かわ?」
「可愛い・・・・・っ、あははっ」
「笑うな。これからはもっと・・・大事にするから。別れるとか言うなよ」
エースって可愛い。
・・・可愛くて、素敵な私の恋人。
「うん、ごめん。もっとずっと・・・・側に居てくれる?」
「・・・そりゃこっちの台詞だ」
とエースがもう1回口づけをした。
ここからが、私たちの恋人生活の始まり。
祝福される結婚を目指して。