短編④
夢小説設定
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なんてこったい。
まさかまさかの転んで足を怪我するなんて。
情けない。
ねん挫で済んだのが不幸中の幸い。
・・・・しばらくお仕事はお休み。
手が無事だったのは良かったけど、
自由に動けない私は足手まといにしかならないし。
ベッドで大人しく本読んで、
新しいレシピでも考えるしかないかあ。
・・・・・つまんないの。
鶏肉かあ・・・・タルタルソース・・・・。
チキン南蛮食べたい。
サッチさんの作るチキン南蛮美味しいんだよねえ。
脳内ががっつりチキン南蛮になったところで、
コンコン、とドアのノック音。
「はーい、どーぞ」
松葉杖を使えば歩けないことはないんだけど、
ここは甘えちゃう。
「入るよい」
入ってきたのはマルコさんで、
「あ、マルコさん」
「サッチからの差し入れだよい」
「わー有難う御座います!!」
サッチさんからお昼ご飯の差し入れ。
しかも大好きなオムライス!
「お茶もあるよい」
「さすがサッチさん・・・・わざわざすみませんマルコさん」
「捻挫だったかい?」
「そうなんです・・・・転んじゃって」
「何もないところで?」
「・・・・何もないところで」
ああ、恥ずかしい。
「アコらしいねい」
ククッ、とマルコさんが笑った。
「皆に申し訳ないです・・・・」
「いいんじゃねェのかい、いつも頑張ってるだろい?」
「・・・・頑張って、ますかね」
「俺が認めてやるよい、アコは頑張ってる。だから少しの休養だい」
だから気にするな、とマルコさん。
・・・・優しいなあ。
「んー!!美味しいっ」
さすがサッチさん、ふわとろオムライス!!
「アコ、その指は?」
「あ、これでふか?火傷しました」
「・・・痛そうだねい」
「あはは、大丈夫ですよー」
「よく見りゃボロボロじゃねェかい、手」
「そうですか?」
「これは?」
これは、とスプーンを持ってた手をとられた。
「これは、えっと・・・・包丁でちょっと」
「・・・しっかりしてるように見えてやるねい」
「ちまちまやっております」
確かに、マルコさんに言われてよく見れば。
私の両手はささくれに火傷に切り傷に。
・・・・女の子の手じゃない、よねえ。
「・・・・ったく」
・・・・マルコさんが呆れるのも無理はない、か。
「・・・すみません」
「謝る必要はねェよい。この手が美味い飯を作り出してんだろい?」
「・・・・えへへ、有難う御座います」
マルコさんに美味しいと言ってもらえる料理を作れるこの手は、
私の誇り。
勿論私1人だけの功績じゃないけど。
「辛くはならないのかい?」
「え?」
「ナース達の手はこれほど荒れてねェ。痛いだろい?」
「はあ、まあ」
そりゃ包丁で手を切れば痛い。
「料理人をやめたいと思ったことはないのかい?」
「ありますよ」
「・・・・・あるのかい?」
マルコさんが酷く驚いた顔をした。
「思いついたレシピが想像通りの味じゃなかった時とか、エースに食べてもらって微妙な顔された時とか」
「・・・・ああ、なるほどねい」
もう料理なんてやめてやるって何度思ったか知れない。
でもそれでもやめなかったのは、
「でも結局皆の笑顔が見たいんですよねえ」
「わかるよい」
特にマルコさんの笑顔は貴重。
・・・・というか、嬉しい、というか。
普段あんまり笑わない人だから。
今日も絶対笑顔にさせてやるって思って作る。
美味いよいって笑顔で食べてくれる。
その瞬間の為に。
「とりあえず全治2週間て言われたので、1週間で治します!」
「は、無茶すんない」
「無茶しますよう。働かざる者食うべからず、です」
「言ったろい?普段働きすぎなくらい働いてんだ、1ヵ月くらい休んだところで誰も文句もねェよい」
何ならフランスパンに任せとけ、とマルコさんが笑う。
「やです。私も・・・作りたいです」
私のこの手で作り出せるものがあるんだもの。
「アコらしいねい。でも今は休んでおけよい」
優しく頭を撫でられて、
何も言えなくなる。
「・・・・はぁい」
「いい子だ」
・・・・子供扱い。
まあ仕方ないか、マルコさんと私の年齢差じゃ。
と、思ってたら。
ちゅ。
「・・・・・はひ?」
額に、ちゅう。
くっついたマルコさんの分厚い唇。
「もう怪我しねェようにまじないだ、ゆっくり休め」
「・・・・・・・・・ど、どーも」
絶対1週間で治して、
私の作ったご飯が1番美味しいって、言わせてやるんだから。