短編④
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賑やかな笑い声が遠のくのを感じながら歩いていると、
「何処へ行くんだ?アコ」
「お頭」
いつから居たのか、お頭に声をかけられた。
「具合でも悪いのか?」
「あ、いえ・・・少し酔っちゃったので酔い覚ましに風に当たりに行こうかと」
「よし、俺も付き合おう」
「・・・お頭全然酔ってないじゃないですか」
「気にするな。2人きりになりてェだけさ」
「・・・つまんないですよ?」
「それは俺が決める」
頑固なお頭にここまで言われちゃ断る意味も理由もない。
「風邪ひかないで下さいよ?」
「これくらいで倒れたらアコを守れやしねェだろう?心配ない」
「はいはい、頼もしいですねえ」
話しながら甲板に出た瞬間、
ふわりと生暖かい風が頬を掠めた。
「ふわあ・・・・・・・」
「寒くないか?」
「全然。酔い覚ましが目的なんでこれくらいで」
「そんなに酔ってるのか?珍しいな」
「だって皆が飲め飲めって持ってくるんですもん」
「・・・・・あいつら」
お頭が眉をしかめたので、
「皆私を気にかけてくれてるんです、怒らないであげてくださいね」
慌ててフォローするも。
「アコが断れないのをいいことに面白がって勧めてたとしても、か?」
「断れない私が悪いんじゃないですか」
「いーや、アコは悪くねェ」
・・・・お頭は私に甘いなあ。
「そうですねえ、酔わされて悪いことされちゃったら大変ですもんね」
「俺の居る船でそんなことする奴がいるか?」
「居ないんですか?」
「・・・・・・まさか、アコ」
お頭の顔色が変わって、
覇気を感じた。
これはまずい。
「冗談です、居ませんて。居ません、ほんとです」
慌てて否定した。
す、と覇気が収まっていく。
「・・・・なら、いいが」
「ホントにいたら真っ先にお頭に言いつけてますよ」
「アコは優しいし大人しいからな・・・」
「嫌なことされて黙ってられるほどおとなしいつもりはありませんよ」
「例えばこんなこととか、な」
「・・・・・・・・おかしら」
ふにふに、と頬をつんつんされた。
お頭は嬉しそう。
「ほらみろ、抵抗出来ねェじゃねェか」
「いやまあこれくらいなら・・・・」
そこまで嫌じゃないし。
「そうか。・・・じゃあこれなら?」
片腕に肩を抱かれた。
うーん。
「・・・・・嫌じゃ、ないですね」
「・・・・他の男にはさせるなよ?」
「させませんよ」
させたらお頭がものすっごい怒るから。
「よし、いい返事だ」
今度は頭をなでなで。
・・・・全部、お頭だから許すのに。
「・・・・えいっ」
「・・・・・お?」
こてん、と顔をお頭の肩に預けてみた。
「こりゃだいぶ酔ってるなァ、アコ」
「もーいいですよーそういうことで」
ほんとは少し、甘えたいなって思っただけ。
でも酔ってるせいか、説明が少し面倒だし。
「甘い匂いがするな・・・アコは」
「お頭からはお酒の匂いしかしませんね」
「はははっ、そうだろうな!」
「・・・・でも、好きです」
「酒が?」
「・・・・お頭が」
・・・わざわざ言わせるなんて意地悪だなあ。
「・・・嬉しいなァ」
でも本当に嬉しそうな笑みを浮かべるお頭にすべてを許してしまいそうだ。
「・・・・月が、綺麗ですね」
「アコの方が綺麗だ」
「いや月と比べられても嬉しくないです」
月の美しさは格別なんだから。
「おかしいな・・・今のは自信のある口説き文句だったんだが」
「それ、やめておいた方がいいですよ私以外の女性には」
「勿論、アコ以外に言ったことはない」
「・・・言ったら笑われちゃいますからね」
「約束しよう」
・・・今のは私だけの言葉。
そう考えたら少し嬉しくなった。
お頭は基本女性には皆に優しいから。
好きって言ったって本気になんてされてないのはわかってる。
口説き文句ってお頭が口にしたって本気じゃないのもわかってる。
それでも日々幸せだなあと実感してる。
ふと見たお頭の赤い髪が月に照らされてて、
綺麗だなあって見惚れてたら。
赤い髪が風に揺れた。
「・・・風になりたい」
ぽつりと呟いたらお頭が苦笑した。
「アコが風になったら困るな。抱きしめることも出来ない」
「じゃあ・・・・風になる前に、抱きしめて下さい」
「俺も・・・・酔ってるなァ」
「じゃあ酔いが覚めるまでもう少し」
2人、このままで。