短編④
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それは唐突だった。
「ごめんなさい・・・・本当に」
ごめんなさい、と俯く恋人。
「・・・理由を聞かせてくれないか?」
「・・・ごめん、なさい」
・・・この状態じゃ話は進まないな、と諦めた。
あまりに突然過ぎる婚約破棄と結婚式のキャンセルの希望。
俺が何かしたなら言ってくれ、と何度伝えても返事は同じ。
ごめんなさい。
まあマリッジブルーなんて言葉もあるくらいだ。
落ちつけば大丈夫だろうと呑気に考えていた。
突然の話しから数日後、
式場での打ち合わせで俺は自分の考えが甘かったことを知る。
「大変申し上げにくいのですが・・・」
非常に気まずさそうなスタッフの口から伝えられたのは、
「キャンセルの申し出?」
「キャンセル料も頂いております」
昨日アコから連絡があり、
すでに俺達の式はキャンセルになっているらしい。
しかもキャンセル料も支払われた。
・・・・あまりのことに言葉が見つからねェ。
今まで俺との結婚を渋っているような素振りはまったくなかった。
何故急に。
式場のスタッフには礼を言って、
すぐにアコに電話をかけた。
けれど聞こえたのはアコの声ではなく、
「おかけになった電話番号は現在使われていないか、電源が入っていない為・・・」
という無機質な声だった。
妙だ。
アコが俺に何の断りもなくキャンセル、
電話も通じない。
そんなことはあり得ない。
慌ててアコの自宅に行けば、
誰も居なかった。
・・・・誰も住んでいない。
たまたま居た隣の住人に話しを聞けば、
「あら、この間引っ越してたみたいよ」
とのこと。
・・・それなら、とアコの職場に連絡を入れるも、
『先日退職されました』
と寝耳に水な言葉が返ってきた。
・・・ここで諦めてたまるか。
そう決めて、アコの友人や家族、
思い当たる全てに連絡を取った。
それでも何も得られるものはなかった。
・・・・誰も、何も知らないと言うばかりだ。
万事休す、なのか?
・・・・アコ。
「もういいわ!別れましょ!」
「そうだな、それが良さそうだ」
「っ何よ!」
・・・・やれやれ。
軽くため息を吐いて怒って去る女性の背中を見送った。
アコが居なくなってからもう2年か。
色んな女と付き合ってはみたが、駄目だな。
今回のは長い方だ。
1ヵ月。
アコだったら、と思うと上手く愛せねェ。
アコが今みたいに怒ってくれてたら。
・・・せめて理由を話してくれてたら。
あれ以降もまったくアコの消息は掴めていない。
何処かで元気でいてくれるならそれでいい、と。
思う半分会いたいとも思う。
そんなことを考えていたら電話が着信を知らせた。
昔からの友人のベックマンだ。
「久しぶりだなァベック!飲みにでも行くか?」
『元気そうで何よりだ。酒は今度奢ってもらおうか』
「おいおい、割り勘だぞ」
『いいから聞け。・・・アコのことはまだ未練はあるか?』
「・・・・アコ?」
意外なところから名前が出た。
とは言え俺とアコのことは知っている友人だ。
「アコがどうかしたのか?」
『落ち着いて聞け。アコが今居る場所がわかった』
「何処に居るんだ」
逸る気持ちを抑えつける。
心臓が早鐘を打つ中、聞こえた場所に驚きを隠せなかった。
だがこれでやることは決まった。
青い屋根。
・・・・ここだな。
インタホーンに伸ばした手が微かに震える。
らしくないな、と思いながらしっかりと押して数秒。
「はーい」
・・・・ああ、アコの声だ。
「はろ・・・・・・」
「・・・・やっと、会えた」
ガチャリとドアが開いて2年ぶりのアコの姿が目に移った。
「しゃん、くす・・・・?」
「久しぶりだな・・・アコ」
「え・・・どうして!?だってここ・・・ニューヨーク・・・なのよ?」
「ああ、まさかこんなとこにいるとは」
アコは今ニューヨークにいる、とベックに言われた時は驚いたが。
「・・・本当に、シャンクス、なの」
「ようやく会えた・・・アコ。ずっと会いたかったんだ」
辛い思いをさせちまった、すまん。
謝っても許されるかはわからねェ、それでも。
「わ・・・私シャンクスに酷いことを・・・ごめんなさ・・・っ」
強く抱きしめたアコが腕の中でぽろぽろと涙をこぼした。
「俺のせいで嫌がらせを受けていたんだろう?」
「どうして・・・っ」
この2年忘れたことなんか1日もない。
俺の情報網を舐めないでもらいたいもんだな。
・・・・と偉そうに言える立場でもないか。
「気づいてやれなくて悪かった。・・・本当に、すまん」
「・・・たくさんの人の憎悪を受けて、辛くて」
悩んでいた時にニューヨークの友人が誘ってくれたの。
こっちで一緒に働かないかって。
「アコには辛い思いをたくさんさせちまったなァ・・・」
「言えなくて、ごめんなさい」
「気づかなかった俺が悪いさ。アコが謝ることはねェ」
もう離さない。
「シャンクス・・・会えて、良かった」
「ずっと忘れられなかった。もうアコのことは誰にも傷つけさせやしない」
だからもう1度。
「・・・・だから、俺と結婚してくれないか」
何度でも。
「私あなたにあんな酷いことしたのよ。今更・・・」
「俺は気にしちゃいねェ」
「でも・・・」
「今度こそ俺にアコを守らせて欲しいんだ」
「・・・私、今のここでの生活が楽しいの」
「勿論俺もこっちに住むさ」
「いいの!?」
「生憎ともう離す気はねェ」
「・・・2年前はごめんなさい、しか言えなかったけど」
「今は?」
「有難う。私も貴方の側を離れたくないのシャンクス」
それが返事よ。
と笑ったアコに想いを込めて唇を重ねた。
エースver
↓
↓
↓
↓
↓
↓
「っ最悪だ・・・!!」
こんなの、最悪過ぎるだろ。
惚れた女泣かせて。
ンなのわかってる。
わかってっけど。
「ごめんね、エース」
「・・・・っざけんなよ」
俺だって泣きてェよ。
惚れた女に告白して、
付き合えて。
一世一代のプロポーズして。
OKもらえて死ぬほど喜んで。
結婚式の日取りとか色々決めて。
そんで今俺は、それを断られてんだぜ。
「理由くらい聞かせろよ、なぁ」
「・・・・ホントに、ごめん」
「俺のこと嫌いになったのか?俺何かしたか?」
「ごめんなさい・・・っ!!」
「っ、おいアコ!!」
泣きながら俺のもとを去って行く恋人にかける言葉は見つからなかった。
何でだよ。
意味わかんねェ。
急な婚約破棄と式のキャンセル。
それから何度連絡を取っても答えは同じ。
理由を聞いても曖昧に誤魔化されるだけ。
俺は絶対に嫌だからな、と断り続け、
いい加減苛々しながらも式の打ち合わせに参加すれば、
「申し訳御座いません・・・!」
狼狽したスタッフの言うには、
前日にアコから式のキャンセルがあったらしい。
キャンセル料ももらっているそうだ。
・・・・意味わかんねェ。
そんなに俺との結婚が嫌なのかよ、とショックを受けつつアコに電話をかけた。
・・・・・が。
『おかけになった電話番号は現在使われていないか電源が入っていない為・・・』
聞こえて来たのはそんな無機質な声。
「は?」
どういうことだよ。
昨日までは普通に繋がってたよな。
婚約破棄のことだってちゃんと話し合おうって。
・・・・っくそ!
居てもたっても居られずタクシーを捕まえてアコの家に行けば、
「・・・・嘘だろ」
居ねェと思ったら表札もなくなってる。
「あら、アコさんの・・・何か忘れ物?」
「・・・忘れ物?」
買い物帰りのお隣さんに声をかけられて知ったのは、
アコは数日前に引っ越したという事実。
連絡も取れねェうえに会えなくなったってことかよ。
いや、まだだ。
まだ諦めねェ。
アコの職場に行けば、と思いついた足で行ってみるも、
「先月で退職されましたよ」
とアッサリ撃沈。
親しかった友人に何とか連絡を取って見ても答えは一様に、
「わからない」
と首を傾げるだけだった。
俺達これで終わりなのかよ、アコ・・・!
「別れよ、エース」
「は?」
「だってエース私と一緒に居ても全然楽しそうじゃないし」
「あー・・・・悪ィ」
アコが居なくなって2年が過ぎた。
とりあえず告白されて女と付き合ってみたりするけど、
だいたいこうしてフられる。
・・・そりゃそうだ。
忘れられる訳ねェ。
・・・今何してんだろうなアコは。
どんな女と居たってアコと比べちまう。
すれ違う女を見て思い出しちまう。
背格好が似てる、声が似てる。
それだけで。
・・・・忘れられねェよ。
そんな時、親友のサボから連絡があった。
『よおエース。まだ未練はあるか?』
「いきなり何だよサボ」
『まあいいから答えろって』
「・・・その未練っつーのがアコのことなら」
あるに決まってる。
『よーしじゃあ良く聞けよ』
「・・・・・あ?」
「彼女は今ニューヨークに居る」
「にゅー・・・・・海外かよ!?」
どうりでいくら探しても見つからない訳だ。
でも場所がわかった。
これで会いに行ける。
「っしゃ!ありがとなサボ!早速今から会いに・・・・」
ニューヨークってどうやって行きゃあいいんだ。
まずパスポートか!?
それから飛行機の予約だろ、あとは荷物の準備と、
あと会社も休まないといけねェよな?
『落ちつけよエース。今からうちに来い』
・・・今度日本に帰ったらサボにラーメン奢ってやろうと誓った。
ヨーロッパの、街中のカフェ。
・・・・ここだよな。
アコはここで働いてる。
そしてこの時間が休憩時間だとサボが言ってた。
ここまで来たんだ、絶対に見つけるまでは帰らないと決めた。
決して広くはないカフェだ、絶対ェ探し出す。
カフェの端の席。
1人でカップを口にしてるその姿が目に入った。
「アコ・・・・」
「え?」
「アコ、見つけたぜ・・・!」
「エース・・・?嘘でしょ・・・?」
「ずっと会いたかったんだぞ・・・!」
「な、なんで・・・」
驚くアコを強く抱きしめた。
「今まで辛かったよな・・・ごめんな」
「・・・ほんとに、エース・・・なの?」
「ルフィの話し3時間聞くか?」
「エース・・・・ごめん、私、酷いこと・・・っ」
「されてたんだろ、酷いこと」
「・・・エース、知って」
「あん時は気づいてやれなかった」
全部サボが調べてくれた。
俺との結婚を妬んだ奴らにイジメられてたって。
「・・・私、辛くて。その時ここで働いてる友達に誘われたの」
「守ってやれなくて悪かった。・・・不甲斐ねェ俺だけど」
好きなんだ。
「私あんなに酷いことしたのに?」
「ずっと忘れられなかった。諦められねェんだよ・・・」
「・・・いいの?」
「アコに手ェ出してた奴らはもう大丈夫だから」
「えっ」
「俺が絶対守るし。それでも怖いっつーんならここで一緒に暮らそうぜ!」
「で、でもサボ君とかルフィ君」
「あいつらも呼べばいいだろ。珍しい食いモンいっぱいあるって喜ぶ」
「ふ・・・あははっ!!」
急に笑い出したアコに愛おしさがこみあげて来る。
「なぁ・・・駄目か?」
「・・・ううん、よろしくお願いします」
今度こそ。
守る。
2人で幸せになろうな!