短編④
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「俺はもう駄目だアコ」
「はいはい」
「優しくて可愛くて料理が上手い嫁さんが欲しかった・・・・・」
「はいはい」
「・・・・・・・・苦しい」
「はいはい。苦しいなら黙ってた方がいいと思うけど」
まるでもうすぐ死ぬみたいな雰囲気ですけど。
「・・・・もう少し優しくしてくれねェか?」
「十分優しくしてるでしょ?風邪なんだから大人しくしてればすぐ治るよ」
いい歳した大人が情けないこと。
幼馴染のシャンクスが、大事な話しがあるっていうから家に行ってみたらこれだよ。
風邪で寝込んでた。
とりあえず冷えピタ貼ってお粥まで作ってあげたのに。
何だこのおっさんは、もう。
「薬は口移し希望」
「あんた私に風邪移す気?」
「一緒の墓に入ろうアコ」
「絶対嫌」
熱で頭がおかしくなったんだろうか。
「・・・・・俺は、本気だ」
「・・・・・風邪ごときで死ぬなんて絶対嫌だよ私は」
「ははっ、それもそうだな・・・・」
「・・・・結構元気そうね」
とは言ってみたけど、
シャンクスの笑いに力がないのはわかってる。
「来てくれたからな・・・・アコが」
「はいはい。もう私帰るから寝たら?」
私が居たら落ち着かないだろうし、
寝た方が身体にはいいだろうし。
と思って出て行こうとしたら、ぐっと服を掴まれた。
「・・・・・何?」
「行くな。頼む」
「・・・・寂しいの?」
「ああ、寂しい」
・・・・・大の男にそんな寂しそうな顔で縋られたら。
出て行く訳にはいかない、か。
足を戻して薄っぺらい布団で寝てるシャンクスの側に座った。
「・・・・・薬、飲んだ?」
「飲んだ」
本当は大事な話しを聞きたいんだけど、
聞くならシャンクスの風邪が治ってからだなあ。
・・・・何だろう、大事な話しって。
「・・・寝た方がいいよ?」
「寝れねェ」
「子守歌でも歌ってあげようか?」
「・・・・いいなぁ、久しく聞いてないからなあ、お前の歌声」
「若い頃はカラオケ行ったりしたねえ」
「楽しかったな・・・・」
しんみりとした声音が寂しげで。
・・・・具合悪いとこんなに人って変わるんだなあとふと思った。
「風邪が治ったら付き合ってあげる」
「俺と?」
「カラオケにね」
「・・・・・楽しみにしておく」
少しだけ嬉しそうに笑ったシャンクスは可愛い。
「具合が悪い時は何もしなくても寝れるもんだよ。ほら、目閉じて」
「閉じたらアコが見えなくなる」
「そりゃそうでしょ」
「・・・・見えないのは、不安になるんだ」
・・・・何を子供みたいなことを。
とも思うけど、まあ適当に雑談に付き合ってあげてればそのうち眠くなるかな?と結論づけた。
「何か心配事?」
「・・・・そうだな、心配、というか」
「というか?」
「不甲斐ない自分が嫌になった」
天井を見つめながらぽつりぽつりとシャンクスが告げる。
「・・・普段ちゃんと働いてるんだからいいんじゃない?」
「寝込んでる場合じゃねェんだ、本当は」
「仕事が残ってるとか?」
「いや」
さすがにシャンクスの仕事は私には代わってあげられないからなあ。
「仕事より大事なことだ」
「・・・・まあ仕事より大事なことはたくさんあるしね」
シャンクスの本気で悔しそうな目。
・・・・何だろう。
心配ではあるけど、
「1番大事なものだ・・・俺にとって」
・・・・気になるけど今言えるのは、
「今は自分の身体1番に考えなさいな。今日行かないとなくなっちゃう限定品とかなら私が行くから」
「物じゃねェんだ」
「・・・・じゃあなくならないのね?」
「・・・どうだろうな」
はっきりしない物言いに苛々を覚えながらも、相手は病人と自分に言い聞かせた。
「・・・・舞台とか?映画とか?」
「今まで散々臆病風吹かせてきたからなァ、俺は」
「・・・・役者でも目指すの?」
まあそれなら応援はするけど。
そしてそれなら確かに体調管理がなっとらん!とか言って面接不合格になっちゃうかもしれないけど。
「俺が役者なら結婚してくれるか?」
「・・・・・・熱相当高いね」
・・・・駄目だこれは、熱に浮かされて何言ってるのか本人もきっとわかってないんだろうな。
うん。
「もう逃げないし・・・・・逃がさない」
「・・・・・ってちょっと、寝てなって」
言いながらシャンクスが起きて来て、慌てて寝かそうとしたらがばりと抱きしめられた。
「俺と結婚してくれアコ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・熱」
「熱はあるが意識は正常だ」
「・・・・・・大事な話しって、それ?」
シャンクスは私の質問に答えず、
「・・・奥の部屋の、箪笥の1番上、右の引き出し」
「ああ、保険証?大事なものが入ってるとこだよねそこ」
病院にでも行く気になったのかと思えば。
「とってきてくれるか?」
「はいはい」
・・・・言われた通り奥の部屋の箪笥の1番上の右の引き出しに、あったのは。
小さな小箱。
「つけて、見せてくれねェか。・・・サイズは合ってるはずだ」
「・・・・・・・・シャンクス?」
「・・・・・結婚してくれねぇなら俺はもう駄目だ」
それだけ掠れた声で言って布団にばたんきゅう。
・・・・・・色々すっ飛ばした告白してくれちゃって。
私たち恋人でも何でもないのに。
それでいて返事も聞きもしないで寝ちゃう訳?
「・・・・ちゃんと寝れたらイエスって返事あげるから、今はちゃんと寝なさい」
起きるまで側にいてあげるから。
「・・・ようやく安心して寝れそうだ」
おやすみなさい、私の将来の旦那様。