短編④
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「これ」
短くそう言って差し出されたもの。
彼の手の中できらりと光ったそれは、
「・・・・・鍵?」
「合鍵」
・・・・付き合って1年。
鍵をもらって考える。
彼・・・・エースは、いつものと何の変わりもない屈託のない表情。
・・・・・合鍵をもらうってことは。
「エースが仕事してる間に家事をしに来いと・・・・・?」
そういうこと?
首をひねる私にエースが不機嫌そうに、
「・・・・いらねェなら返せよ」
「やだ」
「・・・・・ったく」
「有難くもらっておく」
「おー好きに使え」
「はーい」
何処か照れたようなエースが可愛かった。
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と、合鍵をもらったはいいけど。
いつ使えばいいのやら。
掃除とか料理とかほんとはしに行ってあげるべきなんだろうけど。
・・・・何回か行ってるけど、エースの家は物がない。
ないので片付けする必要なんかない。
むしろ整頓されているので変にいじる方が怒られる。
料理はまあ・・・してもいいんだけど。
エース忙しいからなあ。
夕飯作って待っててもいつ帰って来るかわからないし。
冷めた料理だけ残して帰るっていうのも寂しいし。
・・・・・とかなんとか考えて結局1回も行けてない。
エースも何も言わないし。
・・・・・・と思ってたのは今日まで。
合鍵をもらった日から1回も会えないまま1ヵ月が過ぎた。
そろそろ会いたい。
連絡はとってるけど・・・・寂しい。
会えなくても。
エースの家に行けば、少しでもエースを感じられる訳で。
でもそんなことの為にこの合鍵を使うのもどうかと。
家には当然貴重品とかある訳だし?
それを本人が居ないのに見ちゃったりとか。
・・・・・駄目でしょ。
散々悩んだ挙句、結局私は鍵をしまったまま。
使うことなく、次のデートまで待つことにした。
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「え、しばらく出張?」
「2週間ってとこだな」
「あらー・・・・・・」
「・・・・寂しいか?」
言いながら手を繋いでくれるエース。
久しぶりのデートで寂しいことを告げられた、そのお詫びのように。
優しいぬくもり。
「とーっても寂しいのでデザート奢って」
「・・・・・食い物で許されるンなら安いもんだぜ」
ホントはそんな簡単なものじゃないけど。
我が儘言って困らせたくないし。
行かないで、なんて言えないし。
「気を付けて行って来て」
「土産、期待してろよ」
「はいはい」
夜は美味しいご飯と甘いデザートをしっかり奢ってもらって。
翌朝エースは無事に出張に行った。
・・・・エースは意外としっかりしてて、出張の準備に私の手伝いなんかいらないくらいで。
・・・・・・・・寂しい。
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2週間後、出張最終日。
悩みに悩んで結局、2週間居なかったら埃たまってるんじゃない?
と無理やり理由をつけて、エースの家へ来てしまった。
・・・・ついでに夕飯の材料も買い込んで。
食べて来るかもしれないけど、まあ深夜に帰って来るみたいだからおやつにしてもらってもいいし朝ごはんでもいいかなと。
ドキドキで合鍵を使って、部屋へ。
「・・・・・きれーだなぁ」
相変わらず。
埃も全然ないし。
私の来た意味。
あ・・・・・でも、いつの間にか飾られてた私とエースの写真。
何か嬉しい。
あ、これ私があげた腕時計、大事そうにしまってくれてる。
・・・・こういうこと言わないけど、すっごく私を大事にしてくれてることが伝わって来る。
「・・・・・あ、れ」
何気なく奥の方に見えた高そうな小箱。
そっと触った時玄関で音がして心臓が飛び出る程驚いた。
「え!?」
「ようやくか」
「え・・・エース、え、おか、ええええ!?」
「落ちつけって、アコ」
「今パニックなのでちょっと無理です、え、エース?本物?」
「他の男に見えンのか?」
「うわあすごいエースにしか見えない!!」
「・・・・・お前な」
「・・・・おか、えりなさい・・・・」
呆然と私も何を言ったか自分でちょっとわかってません。
確かなのは目の前にエースがいるということ。
「ようやく合鍵を使ったかと思えば・・・・何やってんだ?」
「ええようやく使いましたよ!!だって使う理由なくない!?寂しい以外に!!」
「あるなら来ればいいだろ」
「・・・・・・え、でも寂しいなんて理由で」
来ても、いいの?
「好きに使えって言っただろ?・・・でもまあ、今後は理由も増えるからいいか」
「増える?何で?」
「何だ、そこまで見て手に取らなかったのかよ?」
「・・・・・・なにを?」
「それだ」
それ、って・・・・・?
「・・・・これ?」
「開けて見ろよ。絶対気に入るから」
さっきの高そうな小箱。
恐る恐る開けたら。
「・・・・・・・・箱より高そう」
「ははっ、第一声がそれか」
箱より高そうな、指輪。
「え・・・・・・だって、これ、え!?」
「元々物の少ない部屋だし、ちょっとくらい荷物増えても平気だぜ?」
「こ・・・・・・・・・・・っ言葉で聞きたい」
このダイヤモンドの指輪の意味を。
「・・・・俺と結婚、するだろ?アコ」
何そのプロポーズ。
「・・・・すき」
「じゃなくて、返事は?」
「・・・・喜んで致します」
駄目だこの人には敵わない。