短編④
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文明の利器というものは非常に便利だ。
・・・・・・でも、文明の利器と言う物は時に非常に厄介にもなる。
「ほらな?」
「・・・・やだ、ほんと」
画質はよろしくないけど、確かに残されていた映像。
2コ上の幼馴染のエースがドヤ顔で見せて来た。
「だから言ってんだろ?アコの初めては俺だ」
「・・・・変な言い方しないで。たかがキスじゃん」
「でも初めてのキスだろ」
「・・・・・それは」
エースが見せて来たのは、ビデオをわざわざスマホに撮ったという私が赤ちゃんの頃の動画。
赤ちゃんの私は寝てて、隣に2歳のエースが居て。
エースが私の唇に自分の唇を重ねた瞬間の。
・・・・何でわざわざこんなの撮ってんのよ。
どっちの親か知らないけど!!
で、エースもわざわざスマホに録画してるし!
「諦めて認めろよアコ」
「・・・・・いやでもさ」
「何だよ」
「初キスがエースってだけで運命とは言えないんじゃない?」
エースは最近、俺達は運命だ、と言い出した。
エースは現在20歳。
私は18歳、高校生。
「俺はずっとアコのことが好きだった」
「私はエースをそんな風に見たことなかった」
お兄ちゃん、というか。
友達みたいな感じできた。
それを今更ずっと好きだった、とか言われても。
前に好きだと言われた時にそう答えて、運命だ、に繋がるんだけど。
「可愛いよなァ、小さい頃のアコ。今も可愛いけど」
「とってつけたように言わなくていいし」
「何だ拗ねてんのか?可愛いなァ」
エースはにこにこと嬉しそうに私を抱きしめる。
でもこんなの割と日常茶飯事で。
私はいつもエースに可愛がられていたし、
甘やかされてたし。
おかげで反抗期もほぼなかった。
・・・というかすぐに終わった。
だってなんか馬鹿みたいで。
「別にエースはさ・・・・恋人じゃなくてもいるのが当たり前っていうか」
もうすでに空気みたいな存在っていうか。
「あァ、だろうな」
「・・・・・だろうなって」
「今まではまあそれでもいっかと思って言わなかったんだけどよ」
「急に変わったの?何で?」
「恋人じゃなきゃキスは出来ねェだろ」
「・・・・・・・・恋人じゃなくてもしてた人が何を言うか」
「じゃあ今していいのか?」
「駄目です」
「だろ?」
・・・・その笑顔に思わず小さいため息を吐いた。
悪い人じゃない、それはわかってる。
むしろ頼りになるし大好きだ。
信頼もしてる。
「・・・・もう」
「アコも思春期だし・・・他に男作られたくねェから」
「はいはい、愛だの恋だのに興味はないからご心配なく」
「心配だ」
「だから大丈夫だって」
「1ヵ月会えねェんだぜ?心配に決まってる」
「・・・・・・は?」
突然何を言い出したのこの人は。
「言わなかったか?俺明後日から1ヵ月海外にショートステイすんだ」
「そ・・・・・・っ、聞いてない!!」
「俺が居ない間他の男に取られたくねェから、今のうちにと思ったまでだ」
・・・・あっさりと言い切ったエースを見る。
・・・・1ヵ月会えないんだ、エースに。
「寂しいか?」
「・・・・・うん」
寂しいと、思う。
「ははっ、可愛いなアコは。俺も寂しい」
「お土産よろしく」
「任せろよ、いっぱい買って来る」
見れないんだ、この笑顔。
聞けないんだ、この声。
・・・・・うん、寂しいなあ。
「無事に帰って来て」
「当たり前だろ?アコと結婚するまでは俺は死なない」
「・・・・・・じゃあずっと死ねないね」
「一応俺が居ない間に何かあったらルフィを頼れよ」
「ん」
「毎日電話するからな」
「や、それはいい」
「さっきの動画後で送る」
「え、いらない」
恥ずかし過ぎる!!
きっぱりと拒否した私の頬にエースはちゅ、とキスをした。
「・・・・海外での挨拶?」
「アコ以外にはしない挨拶」
「・・・・行ってらっしゃい」
「あァ、行って来る」
胸にぽっかり穴が空いた、なんて表現があるけど。
・・・ちょっと違うかな。
ココロが燃え滾っている、が正解。
エースが海外に行って3日。
エースの嘘つき。
何が毎日電話する、よ。
全然電話来ないんですけど!!
じゃあこっちからすればいいじゃんって友達には言われたけど相手の状況がわからないのに気軽に出来る訳ない。
・・・・文明の利器って。
便利だけど不便だ。
エースから強制的に送られてきたあの動画を再生した。
・・・・こんな、昔の私にキスするくらいなら。
今の私にしてよ。
そう思ってしまったあたり私はエースのこと好きなのかもしれないと気付いてしまった。
電話出来る機械があるのにかけられないなんて。
どうなる訳でもないとわかってるのに、スマホに向かって、
「・・・・浮気しちゃうから」
と呟いた途端スマホが着信を知らせた。
え、嘘。
「も、もしもし・・・・?」
画面に表示されたエースの名前に高鳴った心臓を押さえつけて出たんだけど。
無言。
「ちょっと。悪戯なら切るけど」
『ははっ、悪ィ。久しぶりに声聞けて嬉しくてよ』
エースの、声。
「・・・元気そうだね」
『そうでもねェんだ』
「どっか悪いの!?」
『アコに会えなくて寂しい』
「・・・・とか言って、電話今日が初めてなんだけど」
『時差に戸惑っちまってよ。アコが寝てる時にしたくねェし』
あ・・・・そっか。時差。
「心も離れてたりして」
『・・・電話じゃ確かめられねェもんな。キスも出来ないし』
・・・・声だけ聞ければ、なんて思ってたけど。
『声だけ聞けりゃと思ってたけど・・・』
聞いたら何だか、
『聞いたら何か会いたくなっちまうな』
・・・会いたくなっちゃった。
「私は顔見られなくて良かったって思った」
『そんなに俺のこと嫌いかよ・・・・』
「だって今から告白するから」
『・・・・え?』
「好きだよエース。だから絶対無事に帰って来て」
『・・・・・・・・・・・ずりィ』
電話でだけど想いを告げられて私は満足。
これからは毎日電話するからな、とエースが言って。
文明の利器サマに感謝。
・・・・運命にも、感謝。