短編④
夢小説設定
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「余計なことは考えないほうがいいぜぇ、お嬢ちゃん」
「余計なこと?」
目の前の男が下品な笑い方をした。
まあこれもある意味では見慣れたもので。
「逃げようとかな?絶対逃げられやしねえんだからな!」
「あ、ご心配なく。全然そんなこと思ってませんので」
「ああん?」
「いやーなんか久しぶりだなあって思ってただけですから」
「何がだ」
「こうして人質になるのも」
しみじみと思う。
赤髪海賊団の中でも少ない女クルーだし。
入ったばかりの頃はそれはもう狙われて、
それでも皆が守ってくれてたし、
私も怖かったから大人しくしてたんだけど。
慣れてくるにつれて段々と私も自由を欲するようになって。
皆の(特にお頭の)目を盗んでは1人出てこうして連れ去られて、
人質にされたもんだ。
でもまあお頭が来て犯人グループは壊滅。
一件落着。
がセオリーな訳で。
「ふん、じゃあ今日で最後になるぜ!」
まあ皆さんそうおっしゃいます。
「ところで来ないな赤髪は」
「来ないですねえ」
「ホントに来るんだろうな!?」
「はて。来ないかもしれませんねえ」
「何だと!?」
「だって私人質になるの何回目だと思ってます?さすがに呆れて放置が妥当だと思いません?」
「・・・・ならば人質を生かしておく意味はないな」
「ほんとに来ないならないですね」
「どっちだ!?」
「知りませんよ私に聞かないで下さい」
お頭に聞いて下さい。
と言ったところで、彼の後ろの影が動いた。
ので、私はそっと目を閉じた。
「お前な」
「ご迷惑おかけしました、お頭」
「・・・・反省してるように見えねェんだが?」
お頭の片腕に腰をがっちりホールドされて連行なう。
「してますよう、さすがに」
「そんな奴が1人で船を降りるか?」
「欲しいものがあって、でも相談するより行った方が早いかと」
「それで今まで何回危険な目に遇ったか覚えてるか?」
「危険な目に遭わなかったことも多いので覚えてません」
「・・・・・せめて人質の価値を下げるな」
・・・・お頭の怒ってるような真剣な表情にさすがに本気で反省した。
「・・・・ごめんなさい」
「あんまりこういうことが多いとな・・・・」
「お頭のお手を煩わせないように気を付けます」
「そう言うことが言いたいんじゃねェ。わかってないな?」
「・・・・わかってますよ?」
わかってる、お頭が私のこと心配してくれてるってことは。
次から本気で大人しくしてよう。
と思ったのに。
「次こんなことがあったらそん時は」
「・・・・時は?」
「船から降ろす」
それは例えようもないほどの衝撃だった。
「・・・・・・・・・・・・そこまで、ですか」
「アコを危険な目に遭わせるのは俺の本意じゃない。それくらいなら俺はお前を降ろす」
お頭の目は・・・・・本気だ。
まさかお頭からこんなことを言われる日が来ようとは。
「・・・・もう1人で出歩いたりしません」
「・・・・まったく、困ったお姫サマだな」
そう言って苦笑したお頭は私から手を離した。
「・・・・・・で、これはどういうことだアコ?」
船に戻って私はお頭の部屋に居た。
「反省を行動で示そうかと」
「ははっ、そういうことか」
「お頭の片腕・・・・とまではいきませんが、お役に立てることがあればなあ、と思って」
「気持ちは嬉しいが別に必要ないな」
「・・・・ないですか」
それはそれで寂しい。
がっくりと肩を落とした私にお頭が笑った。
「側に居てくれんのは嬉しいが、束縛したい訳じゃないからなァ」
「・・・・・ねえ、お頭」
「ん?」
「さっきの、本気ですか?」
「さっきの?」
それはとても怖い話。
想像すらしたくない。
でもだからこそ、聞かないといけない。
「船を降ろす」
ってハナシ。
「・・・・そうだな、反省もしてるみたいだし帳消しだ」
優しい笑みのお頭が私の頭を撫でてくれた。
そのことに物凄く安堵しながらも、
不安は完全には消えない。
「・・・私怖くないんです。人質になっても」
「もう慣れちまったか?」
「それもあります。・・・良くないことだってわかってます」
「長いこと俺達と一緒に居るからなァ・・・」
「・・・必ず皆が助けに来てくれるってわかってるから、甘えてました」
私が怖くなくたって皆が心配することくらいわかってたはずなのに。
わかってなかった。
皆が来てくれないと思ったことなんて1度もなかった。
「ああ、必ず助けに行く」
「・・・・有難う御座います」
お頭の優しさに、心の深さに涙が出そうだ。
「おいおい、そんな顔するな。アコを降ろしたりはしねェさ」
「・・・・・絶対?」
「他の誰がなんと言おうと俺が許さねェ、そんなことは」
「じゃあ・・・・もう1個我が儘、いいですか?」
「ああ、言ってみろ」
恥ずかしいけどたまには素直に。
「・・・・ぎゅってしてください」
「したら離せなくなるが・・・・いいか?」
それは困ります。
・・・・・でもまあ、いっか。
「・・・・はい」
ずっとあなたのお側に。