短編①
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「ちょっと料理が上手いってだけで調子に乗らないで下さい。貴女にエース隊長は相応しくありません」
最近入ったという若くて可愛いと有名なナースさんは、怒ったようにそれだけ私に言い放ち去って行った。
うーん。
包丁持ってる女にあれだけのこと言えるなんて度胸もあるわね。
ネギを切っていたところを突然呼び止められて、手を止めて聞いてあげたけど。
「ちくしょうエースの奴め・・・!」
「・・・・あの子厨房に入れたのサッチさんですか?」
苦々しい顔で隣に立ったサッチさんを冷めた目で見つめる。
「だってよぉ、上目遣いでサッチ隊長お願い!なんて言われたら入れちまうだろ?」
「・・・まあ気持ちはわからなくもないですが」
「だろ?可愛いもんなァ・・・で、アコちゃんてエースと付き合ってんの?」
「付き合ってないですよ。でも仲はいい方だから誤解されたんですかね」
話しながらネギを切り終えると、
「よし、アコちゃんはこれで終了」
「え?」
「さすがに気分良くねえだろ?今日は休んでいいから、エースんとこでも行ってこい」
「・・・・ここで普通エースの名前出します?」
とはいえ、あんなことがあって料理を作れば多少の影響は出ると思う。
「でもとりあえずお言葉に甘えて休んできますね」
手を洗って、皆に声だけかけて厨房を出たところで、今1番会いたくない人に会ってしまった。
「あれ?アコ?」
「・・・・・・エース?」
「何してんだ?」
「え・・・エースこそ何してるの?」
「俺はツマミ・・じゃなかったアコに会いに」
いや嘘でしょそれ。
今ツマミ食いに来たって言おうとしたよね。
「・・・・最近入った可愛いナースさんに会わなかった?」
「ああ、会ったぜ。・・・・アコ、何か言われたのか?」
それだけで何かピンと来たらしく、エースは私を見つめた。
「うん。料理が上手って言われた」
エースに相応しくない、と言われたことは一応黙っておこうと思った。
けど、
「あいつ他に変なこと言ってなかったか?」
「・・・・・エースは何か言われたんだ?」
「あー何か夜部屋に来いって」
さすがに来いとは言わないだろうけど。
要はお誘いって訳ですか。
若い子は積極的だなあなんて考えながら笑えないのは何でだろう。
「・・・・行くの?」
「行かねェよ。俺今日は予定あるし」
「予定?」
まさか他のナースさんのとこに行ったりとか。
「夜はアコの新作料理の試食・・・あ、やべ」
「・・・・・・・・私今日夜新作レシピ試すってエースに言ったっけ?」
確かに夜そのつもりで厨房を借りることをサッチさんに承諾してもらった。
でもそれはエースは知らないはず、なんだけど。
「・・・サッチから聞いた」
気まずそうに小声で呟くエースに私は思わず苦笑い。
「いいよ?来てくれると私も助かるし」
「!ほんとか!?」
「うん。試したの全部食べてたら太っちゃうしね。でもいいの?あのナースちゃんのお誘い」
犬だったら尻尾振ってるんだろうなあと思わせるほど喜びを出してくるエースに自然と顔が綻ぶ。
でも気になるのはあの可愛いナースちゃんで。
「おう!俺が好きなのはアコだし・・・っじゃなくて!飯!飯食えるし!」
・・・・・・今、
「今、エース」
エースは物凄く慌てた様子で言い直した。
「・・・・もっかい言って?エース」
「・・・・飯、食えるし」
「それでいいの?」
「・・・・・・・・・・・俺が好きなのは、アコ、だ」
ゆっくりと、けれど確かに紡がれたエースの言葉に私もまたゆっくりと笑んだ。
「うん。私も好き」
「・・・・マジ、で?」
「マジで」
「だー!良かった!あの女が変なこと言うから焦った・・・」
「変なこと?」
「さっき会った時、アコのこと追い出すみてェなこと言ってたんだよあいつ」
「へー」
好きな人の前ではぶりっこになるのかと思いきやそうでもなかったみたい。
「そんなことしたら許さねェって言っといたけどな」
エースは何であのナースちゃんがそんなことを言ったのか理解してないんだろうな。
でもそんなとこも可愛くて好きだなあと気づいてしまった私はもう駄目。
・・・・もう、エースはあげられない。
「ありがとねエース。そしたら今夜の試食会頑張っちゃう」
「・・・じゃあデザートはアコだな!」
「それもありかな」
「マジで!?」
「マジで」
可愛いナースちゃんにはこれから認めてもらえるように頑張るとしよう。
幸い料理の腕は認めてくれてるし。
そしてきっと今夜は特別な夜になる。