短編④
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「ねえ、マルちゃん」
「・・・・ぶん殴るよい」
・・・・幼馴染のマルちゃんは、
小さい頃はとーっても可愛かったのに。
今はヤクザのように怖くなってしまいました。
「・・・マルチーズみたいで嫌?」
「馬鹿にされてるのが丸わかりだから嫌なんだよい」
「・・・別に馬鹿にしてないけど」
「嘘つけ」
・・・背も高くなって。
声も低くなった。
・・・特徴ある髪形と語尾は変わらないけど。
「で、何なんだいその恰好は」
「何って、何が」
「・・・ただ飯奢ってくれるわりにゃ随分な恰好じゃねェかよい」
・・・・・そう。
今日私が幼馴染のマルコを呼び出したのは。
『夕飯奢ってあげるから』
という理由で呼び出した訳で。
・・・でもそれは、私とマルコの2人きりでの夕食じゃない。
マルコと2人きりの食事なら私はこんなにお洒落してないし、
化粧もばっちりしない。
「えーっとね。実は今日皆でご飯なの」
「皆って誰だい」
「・・・・・・・知らない人」
「・・・・どういうことだよい」
じろり、と睨まれた。
「今日ね」
「・・・・早く言えよい」
「・・・・・・合コンなの」
素直に口にした瞬間マルコがくるりと背を向けた。
「馬鹿馬鹿しい、付き合ってられねェよい」
「あああ!そんなこと言わないで付き合ってよう」
「人数合わせなら他の奴に頼め」
・・・やっぱりこうなった。
こうなることは予想済み。
でも帰らせる訳にはいかないんだよ、今日は。
「そこを何とか、助けてよう。マルちゃん居ないと私大変なことになるんだよー」
「・・・どうせたいしたことねェんだろい」
「私よく知りもしない人と付き合うことになるかもしれないの」
「・・・・・訳がわかんねェよい」
マルコは私の言葉に足を止めてくれた。
・・・・背が高くなっても、
声が低くなっても、
顔が怖くなっても。
マルちゃんはマルちゃんだ。
「・・・友達が企画したんだけどね、今回の合コン。・・・ただの合コンじゃなかった」
「わかるように言え」
「中に私のことを好きな男の子が居るらしくて。その子と私をくっつけるのが目的なんだって」
「あァ?物好きもいたもんだねい」
「・・・・反論はしない。とにかく、そういうことなの」
「んなの断りゃいいだけだろい」
「企画した子の性格知らないから言えるんだよ・・・あの子の無茶苦茶さを」
「・・・そもそも何で来たんだよい」
呆れ顔のマルコに、
「来なかったらあることないこと言いふらすからねって言われた・・・」
「そいつを黙らせりゃ終わる訳だねい」
説明したら恐ろしいことを言いだした。
「根はいい子なんだよ?」
「いい奴が脅迫なんてしねェだろい」
「・・・良かれと思って色々してくれる子なんだよ、うん」
ただお節介でちょっと勘違いなとこがあるだけなんだよ・・・。
「で、俺に何をしろってんだよい」
「一緒に来てくれればいいから!ね、お願いマルちゃん」
「・・・その呼び方はやめろって言ってんだろい」
「・・・・守ってくれるよね、マルちゃん」
それは遠い昔だけど、確かに交わした約束。
『アコのことはおれが守るよい!』
『ほんとにまもってくれる?』
『やくそくしてやるよい』
そうして小指と小指が交わった、確かな約束。
「・・・・ただ飯なんだろい?行ってやる」
「やった!有難うマルちゃん!」
「その呼び方だけは絶対にやめろい!」
「・・・はぁーい」
ということで、無事にマルコを連れて参加。
「アコちゃんもっと飲めよ、イケる口だろ?」
「あ、どうも・・・・」
うわあもう絶対この人だよ。
「えー何かアコちゃんとヒロト君お似合いだね」
・・・出たよ、A子ちゃんの必殺お似合いだね作戦。
「そんなことないよぅ・・・あははー」
「俺は嬉しいんだけど・・・迷惑?」
一般的にはイケメンの部類に入る『ヒロト』君。
でも好みじゃないんだよ・・・!
「や、私彼居るから・・・」
「え!?マジで!?」
ちら、と横に座ったマルコを見たら。
「・・・まさかこの人?」
皆が一斉にマルコを見た。
マルコはものすごーく嫌そうな顔をして、
「おい、アコ」
聞いてねェよい!と小声で私に抗議してくる。
私はそんな声も知らんふり。
「そうなの、幼馴染のマル・・・・マルコ」
にっこり笑って頷いたら、
A子とヒロト君が特に驚き、
「う・・・嘘でしょアコ、彼が居るなんて一言も」
「ごめんねー言わなかっただけなの」
「・・・言いたくねぇけどさ、あんまりアコちゃんに似合ってない気がするけど」
マルコをガン見。
「・・・うるせェよい」
「似合ってようが似合ってまいが関係ない、私の恋人はマルコだけだから」
「へー・・・・・じゃあ奪っちゃおうかな、俺」
うわ、ヒロト君怖!
と思ったら急に肩を抱かれた。
「ちょっ、」
離そうとするけど力が強くて離れない。
マルコに助けを求めようと視線を送るけど。
・・・マルコは酒をぐびぐびと飲んでいるだけ。
「彼氏何にも言わねーじゃん、ほんとに付き合ってんの?」
「まだ付き合ってねェよい」
ぎくり。
・・・・酷いよマルコ。
そりゃ私も酷いけど。
そんな突き放さなくったって、いいのに。
「あ、そうなの?じゃあいいじゃん、アコちゃんは好きかもしれないけど無理恋はやめとけって」
「・・・・無理でもいいの」
好きなの、マルちゃんが。
昔っから、私は。
「昔からマルちゃんのことしか見てないの!」
悔しくなって叫んだら、
「いっ・・・・たぁ!」
ぼこ、とちょっといい音がした。
・・・・頭に衝撃も来た。
「その呼び方はやめろって何度言ったらわかるんだてめェはよい!」
「うわ、怖っ!女の子殴るとかサイテーだな。アコちゃん大丈夫?マジでこんなのやめちまえよ」
「・・・・っマルコ!マルコマルコマルコマルコ!!私が好きなのはマルコだけ!わかったらさっさと離して!」
再びゴツン、と鈍い音がして。
また頭が痛んだ。
「・・・マルちゃんって言ってないのにぃ!」
睨み付けたら、
「・・・先に言うからだよい」
「何を」
「俺に言わせろい」
「だから何を」
「好きだ・・・よい」
「・・・・ホントに?」
「でなきゃこんなくだらねェとこに来ねェよい」
ぎゅ、っと手を繋いでみた。
そしたら繋がれた手に力が入って嬉しくなった。
「・・・・いやいや、こんな暴力男やめときなって」
「口だけ男より全然いいもん。ずっと守ってくれてる」
「じゃあ守ってみせろよ!」
「え、」
キレたヒロト君はまさかの、私に拳を向けた。
え、やだ。
そう思ったのは一瞬。
私の手前でヒロト君の拳は止まった。
・・・マルコの手によって、止まってた。
あ、やばい。
「もう何年もやってきてんだよい、こっちは。簡単だい」
ぎらりとマルコの目が光ったので、
私は慌ててマルコの腕を引っ張った。
「マルコ、出よ!」
「はぁ!?」
「いいから!お邪魔しました!A子ちゃんゴメンね!」
ぽかーんとするメンバーを余所に急いで店を出た。
「あのまま殴らせてくれりゃ良かったのによい」
マルコは不満そう。
「・・・私だってマルコを守ってるんだからね」
「わかってるよい」
ホントにわかってるのかなぁ、なんて思いながらも。
両想いになれた嬉しさで、まあいっかと納得しかけた時。
腰に手が回された。
「マルちゃん・・・!?」
「手ェ繋ぐだけじゃガキと同じだろい」
「・・・・・うん」
「つーか」
「うん?」
顔を見ようとしたら、
ちゅ。
・・・・まさかの、キス。
一瞬ではあったけど。
「マルちゃんて呼ぶんじゃねェよいって何度言ったらわかるんだい、この馬鹿」
「・・・・・・・すみません」
大好きだよ、マルちゃん。
私の大切な幼馴染で、
恋人。