短編④
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私には付き合って1年の恋人がいる。
別に不仲な訳じゃない。
・・・・ラブラブ、って訳でもないけど。
「幸せ、だから・・・・君と、いっしょ」
「・・・・・その歌はそんな顔で歌うもんか?」
ドライブデート中ふと流れて来た曲。
知ってたから歌ってみたんだけど。
シャンクスは苦笑を浮かべた。
「・・・私どんな顔してた?」
「そうだな・・・つまらない・・・いや、寂しそうな顔だな」
「・・・・そう?」
「休憩するか?」
「私は平気だけど・・・・シャンクス大丈夫?」
運転してるシャンクスの方が絶対大変なはずなのに、
シャンクスはいつも私を気遣ってくれる。
アシストしなきゃいけない助手席に乗ってる私に、
寝てていいと言ってくれる。
「・・・よし、一旦止めよう。そこにカフェがある」
あ、これ絶対私の為の休憩だ。
・・・・言わないけどもうわかる。
「・・・・ありがと」
「いや、俺もちょうど珈琲でも飲みたいと思っていたところだ」
ウソつき。
運転席にはいつも缶コーヒーが置いてあるのに。
・・・・シャンクスの嘘はいつも優しい嘘ばかり。
カフェに入って注文を済ませて。
待ってる間。
耳に入った曲。
「運命の、赤い糸」
「ん?」
ぽつりと呟いた私にシャンクスが反応した。
「今かかってる曲。運命の赤い糸っていうの」
「ああ、そうだったか?」
「シャンクスは信じる?赤い糸」
「いや、信じない」
あっさりとした即答にちょっと驚いた。
「・・・ちょっと意外、かも」
「そうか?まあ・・・アレだ、万が一赤い糸が俺じゃないところに繋がっていたらと思いたくはないからな」
「シャンクスなら自信満々に俺に繋がってる、とか言いそうだと思ったけど」
「こればっかりは、見えねェからな」
「・・・・・見えないのに赤いんだね」
「恋といやだいたい赤かピンクだからじゃないのか?」
「安直だね、他の色でもいいのに」
「例えば?」
「・・・・・・・青?」
「クールだな」
「黒」
「恋や愛とは無関係な気がしてきた」
「・・・・でもピンクじゃないんだね」
「赤と言えば・・・燃えてる炎、とかか?」
「あとは血の色」
「だっはっは、物騒だな」
「待って調べる」
何となく気になってスマホで調べてみた。
調べてるうちに、
注文した珈琲が届いた。
「・・・・・元々は中国から伝わったもので、中国では赤はめでたい色なんだって」
珈琲を一口飲んで結果を報告。
「ほう、そりゃ知らなかった」
「めでたい色なんだって、シャンクス」
「・・・・俺の頭がめでたいって?」
「あははっ、頭じゃないよシャンクスの髪」
シャンクスの髪の色は鮮やかな赤。
「・・・・そうか」
シャンクスは何かを思いついたような顔をした。
「・・・・・何?」
「いや、ちょっとな」
「・・・・・嫌な予感しかしないんだけど」
ニヤ、と口もとに笑みを浮かべるシャンクス。
と、突然。
ぷち。
小気味いい音がして、目の前に出されたのは。
「な・・・・・・何して」
「これを、こうして」
「・・・・・・・・・・まさか」
「こうすればほら、な?」
「・・・・・・だいぶ短いしすぐ切れるけどね」
シャンクスの小指と私の小指に繋がれた。
シャンクスの髪の。
運命の赤い・・・・・糸?
「そう言ってくれるな」
「・・・・・えいっ」
ぷちん。
ちょっと引っ張ったらさっきと同じような音がして切れた。
「・・・・さすがに酷くないかアコ?」
シャンクスは落ち込んだ様子を見せた。
「シャンクスを不安にさせる赤い糸なんていらない」
「ははっ、カッコいいことを言ってくれる、惚れ直した」
「あら、嬉しい。珈琲も美味しいしこのあとのドライブも楽しみだし幸せ」
「・・・・の割にさっきは寂しそうだったな」
「・・・・寂しかった訳じゃないよ」
「ならいいんだが」
うん、寂しかった訳じゃない。
ただ。
「ただ不思議だなあって思っただけ」
「不思議?」
「私恋ってもっと面倒だと思ってた。でもシャンクスとの恋は安定してるから」
幸せな恋ってあるんだなあって。
そりゃたまに喧嘩もするけど、
お互いに歩み寄れる関係。
・・・・だと思ってる。
「俺は・・・幸せな男だな」
「私も」
自分がこんな風に思うなんて。
「ところで・・・覚えてるかアコ?」
「え?」
「今日で1年だ」
あ。
「・・・・・・忘れてたごめん」
「赤い糸、でなくて悪いが」
突然、す・・・と小指にはめられた。
赤いものがきらりと光った、
「・・・・ピンキーリング」
「次の1年も幸せにする、という約束だ」
「これなら目に見える・・・安心ね?」
「安心だ。嬉しい言葉も聞けたし、そろそろ行くか」
「ん。・・・じゃあ、小指繋がりってことで」
小指と小指を絡ませて。
私も、次の1年も幸せにするね、って約束。
赤い糸も運命もいらない。
目に見えるシャンクスの嬉しそうな顔で。
十分です。