短編④
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それは突然始まった。
名づけるのならそれは、
「・・・・・・エース」
気が付くとエースが隣で寝てる現象。
ってエースに言ったらまんまじゃねェか、って笑ってたけど。
笑いごとじゃないんだよ!!
初めての日はもう驚いたのなんのって。
エースは上半身裸だし。
・・・・ってそれはいつものことなんだけど。
私はちゃんと服着てたんだけど。
そのことにどれだけ安心したか。
寝ぼけたエースに問いかけたけど、
どうやって私の部屋まで来たかは覚えてないって言われて。
まあ寝ぼけてたのよね、仕方ないわと許したのが1日目。
更に次の日も同じように私のベッドで私と一緒に寝てたエースに笑うしかなかったのが2日目。
・・・・それが3日目4日目。
1週間続いて今日に至る今は、真剣に心配になったりする。
・・・・鍵もかけてたんだけどな。
おかしい、本気でおかしい。
色々と。
「・・・・・んあ」
「・・・・おはようエース」
「・・・・んん、はよ。アコ」
あー寝起きのお顔は可愛いねえ。
・・・・じゃないよ。
「ねえエース、まただよ?」
「みたいだな」
困惑する私にエース落ち着き払った態度で起き上がる。
「・・・ほんとにわかんないの?原因」
「全然」
「・・・・・もしかして」
「もしかして?」
ちょっと思うところがある。
「エース、一緒に船医さんとこに行こう」
「船医?熱はねェぜ?」
「行こう!」
首を傾げるエースを無理やり船医さんのとこまで連れて行って。
今までの経緯を説明。
「・・・エースお前」
「・・・・ンだよ」
「やっぱり夢遊病ですか!?」
夢遊病、という病気がある。
・・・エースが、それじゃないかと思って。
「・・・・・・夢遊病ではないと思うがな」
「・・・違うんですか?」
「あーとりあえずアコ、部屋を変えてみたらどうじゃ」
「・・・・なるほど」
「エース、お前はアルコール控えなさい」
「了解」
・・・・船医さんは難しい顔をしてそれだけ。
・・・・まあ部屋を変えればさすがに私の隣で寝てることはなくなる、かな。
で、たまたま空いてた部屋を借りて寝た朝のこと。
「・・・・・嘘ん」
決して広くはないベッドに。
私の隣にすやすやと気持ちよさそうに眠っている男1人あり。
「何で!?私が食べ物の匂いがしてるから!?」
匂いにつられて私の隣で寝ちゃうの!?
「・・・朝飯?」
「私は朝飯じゃないよ!?」
間違って食べられないようにしないと!!
「・・・・・・起きた」
「うん知ってる」
見ればわかる。
唖然とする私を余所にエースはのんびりと大欠伸。
は、アルコールは!?
エースの口からお酒の匂いがプンプンしてたらお酒のせいかも!?
くんくん。
・・・・・しないわ。
「・・・・酒は、飲んでねェ」
「あ、そうなの?」
「・・・少ししか」
「・・・・少し、ね」
・・・・でも匂いもしないし言ってることは嘘じゃないんだろう。
「・・・アコは、いい匂いがすんな」
「やっぱり食べ物の匂いにつられて!?」
「ははっ、そうかもな!」
「笑いごとじゃないんですけど・・・・!!」
「・・・嫌か?俺が居るの」
「え、そりゃあ驚くし・・・・」
「でももう慣れただろ?」
「慣れませんて」
ベッドも狭くなるし。
「・・・・・・そっか」
エースは少しだけ寂しそうに呟いて部屋を出て行った。
・・・・・部屋を変えても、
鍵をかけても駄目って。
どんな病気?
「・・・・エースが病気?」
思わずサッチさんにも相談してみた。
「かなあって」
「食い過ぎで?」
「ならいいんですけどね・・・夢遊病とかじゃないかなって」
サッチさんに今までの経緯を話したら、
「うわ、エース怖・・・・」
「・・・・怖いですよね、というか心配」
サッチさんも驚いた様子。
「・・・いや、俺アコちゃんも怖いわ」
え、何で私って一瞬思ったけど。
「そりゃあ皆さんと違って気配には気づかないですよ。毎日爆睡です」
何で気配に気づかないのかってことでしょ。
「・・・・いや、気配もだけどさ」
「違うんですか?」
気配じゃないの?
「あると思うよ?ほら」
「鍵はかけてますよ?」
「・・・そこでもなくて」
心なしかサッチさんが固まっている。
「も・・・・・もしかして私・・・・エースに・・・・」
「うんうん、エースに?」
「・・・・変な物食べさせてた・・・・!?」
毒きのこみたいなのを!!知らないうちに!?
「・・・そりゃねーって、俺の目が光ってるうちは」
「そ・・・そうですよね」
「・・・・ま、そろそろ決着だろうけど」
決着?と聞いてみたけどサッチさんは答えてくれなかった。
・・・・・決着。
うん、決着つけよう。
私も。
今夜は、ずっと起きていよう。
そう決めてベッドの上で待つこと、ただいま深夜2時。
流石に眠い。
・・・・あと10分、いや5分は起きてよう。
完全に閉じそうになる瞼に喝を入れて。
3分。
ガチャ、とドアが開いた。
え、嘘。
驚きで開いた目に映ったのはエース、で。
「あ・・・・・」
「・・・・げ」
「・・・・・寝ぼけて、る?」
見えたエースはしっかりしてるように見える。
「・・・バレちまった」
そしてへへっ、と観念したように笑った。
「ど・・・・・・・・・・・・どういうこと?」
「まだ気づいてねェんだな、アコ」
「なに・・・・に?」
「俺がいつも隣で寝てたの、わざと」
衝撃のエースの発言に口を閉じるのを忘れた。
「・・・・・・・なんで」
「それも気づいてねェんだ?・・・・いいけどよ」
エースはそのまま、
どさ。
・・・私をベッドに押し倒した。
「え、何!?何!?」
「好きだアコ。・・・寝顔、すっげェ可愛かった」
・・・その幸せそうな、なのに何処か寂しそうにすら思える笑み。
胸が締め付けられた。
「私今まで何も・・・」
「してねェよ。隣で寝てただけだ」
それだけで幸せだったし、と彼はふて腐れたように呟いた。
それから、
「ずっと好きだってアピールしてんのに全然気づかないんだもんな」
「・・・・・・・・ごめん」
・・・・・サッチさんが言ってたことの意味をようやく理解した。
「・・・・・・アコ俺」
「・・・・・何?」
「今日もこのままここで寝る」
「・・・・・・・・・・・・は?」
「悪ィけど離さねェから。・・・・んで朝起きたら、返事聞かせてくれよ」
「・・・・え、うそ」
ぼすん、と宣言通り隣に横になったエースは、
そのまますぐに寝息を立て始めた。
・・・・・嘘ん。
・・・・・・・朝エースの目が覚めるまであと何時間。
・・・・・・私も好きと言えない私は、
まだ寝れそうにない。