短編④
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「ねえお願いお頭さぁん」
・・・・・甘ったるい声で、
身体を密着させて。
上目使い。
の、お願い。
・・・・・・・すごいなあとある意味尊敬する。
たぶんこれが、完璧な『女』の使い方、なんだろう。
私には出来そうにない。
そして今日が4日目の彼女の攻撃になる。
この島に上陸して、1週間。
どれだけ頼んでも無駄だとは思うけど。
・・・・・船に乗せてくれ、なんて。
お頭がそう簡単に承諾するはずがない。
「・・・・そうだな、今度近くにある島を見て来ようと思うんだが」
「連れて行ってくれるの!?」
「あの島には詳しいか?」
「行ったことならあるわ」
え、嘘。
「ガイドついでに乗ってみるか?あの程度なら2日ですむ」
「きゃぁ嬉しいっ」
・・・・・・・う、そ。
うそおおおおおおお!!??
「よろしくお願いしまぁすっ」
まだ若い女の子だ。
・・・・・20代前半と見た。
今まで船に女は私しかいなかったから、
船の士気も心なしか上がってるような気がする。
「この船の女はアコだけだ、わからないことがあったらアコに聞けばいい」
「はい、お頭ぁ」
「・・・・よろしくどうぞ」
「よろしくお願いまぁす、先輩っ」
ライア、というらしい。
・・・・悪い子じゃないのはわかる。
・・・・・・・・でも。
「・・・・どういう気まぐれですかお頭」
夜お頭の部屋まで行って聞いてみた。
「ガイドついでだ、2日くらい問題ねェだろう」
「・・・・これからもずっと乗る、って言ったら?」
「そん時考えるさ」
・・・・・お頭は、何を考えてるんだろう。
・・・・・・いやほんと何考えてるのお頭。
「お頭ぁ」
・・・・・お頭にべったりのライア。
船は近場の島に向かっている。
・・・・・・お頭も何だかんだライアを可愛がってるように見える。
ああいう子がお頭の好みだったっけ?
「心配か?」
ベンさんが声をかけてきてくれた。
「・・・心配?お頭ならそう簡単に寝首をかかれたりしませんよ」
「いや、そっちじゃなくてな」
「・・・どっちです?」
「お頭の心変わりの方だ」
「・・・・もしお頭が私を捨てると決めたのなら私は従いますよ」
ライアを仲間に引き入れて、私を捨てるという選択をしたならば。
「そう言う意味でもなかったんだが・・・気にならないのか?アコ」
ベンさんの言いたいことがイマイチわからない。
「何が・・・・ですか?」
「ライアのお頭に対する執着にだ」
「お頭が嫌がってないならいいんじゃないですか?」
お頭が私を乗せたのも気まぐれ。
なら今回ライアを乗せるのも気まぐれで。
それにまあ、キャラはアレだけど女の子が増えるのは少し嬉しいことでもある。
「・・・・お頭も大変だな」
ぽつりと呟いて葉巻を口に銜えたベンさんの言葉の意味はやっぱりよくわからなかった。
「せーんぱい」
「はいー?」
甲板で軽く掃除をしていたらライアがにこにこと話しかけて来た。
「お話しがあるんですけどぉ」
「・・・・何?」
「お頭、私がもらっちゃってもいいですか?」
「お頭がいいって言ったらね」
「やったっ四皇ゲット!!」
・・・・何と言うかこう、素直というか正直というか。
ぽ●もんゲットじゃないんだからさ。
まあでも、
「四皇としか見てないなら無理だと思う」
「・・・それ、どういう意味ですか先輩」
さてどう説明しようかと思っていると、
突然船が大きく揺れた。
ざぱぁん、と音がして。
目の前に。
「・・・・わお」
海王類出現。
「きゃーっいやーっ!!助けてお頭ぁぁっ!!」
「落ちついてライア、ここを何処だと思ってるの?」
「え?」
次の瞬間静かに海王類は戻って行った。
後ろに立っていたのは、
「お頭ぁぁっ怖かったですぅぅ!!」
・・・・覇気をまとったお頭に抱き着くライア。
「怖かったか?ライア」
「とおおおっても怖かったですぅ!!」
「アコ、大丈夫か?」
「おかげさまで」
っていうかいつものことだし。
「アコは怖くなかったのか?抱き着いて来てもいいんだぞ」
何処か挑戦的にすら見えるお頭の笑みに、
「怖くなんかなかったです」
私も余裕の笑みを返せた、と思う。
実際こんなのしょっちゅうあることだし。
船に乗って最初の方こそ怖かったけど。
「というかせっかく掃除したのに・・・びしゃびしゃ」
仕方なくモップを取に行って甲板に戻ると、
お頭だけが残ってた。
「・・・・・ライアは?」
「部屋に引きこもってる」
「・・・・そんなに怖かったですかね」
「この船に乗るのは嫌、だそうだ」
・・・・・あんな海王類で諦める女とは思えなかったんだけどな?
「俺に怒ってた」
・・・あっけらかんとお頭が言うもんで一瞬意味を理解出来なかった。
「・・・・・何言ったんです?」
「俺は何も言っちゃいないが。当て馬にするなんて失礼ね、だそうだ」
「・・・・馬?」
よくわからないと首を捻る私の頭をお頭の片腕が撫でた。
「覚えてるか?アコがうちの船に乗って初めて海王類に遭遇したとき」
「・・・・ぜんっぜん」
「怖かっただろうと慰めた俺に怖くなかった、と言ったんだ」
「・・・そう、でしたっけ」
「この船に居る為には怖いと言っちゃいけないと思ったんだろうな」
・・・・そう、だったかもしれない。
今は本当に怖くないんだけど。
「怖いと甘えて泣くこともなければ、他の女を連れて来ても妬きもしちゃくれねェ可愛いアコ」
ぎゅ、と今度は軽く抱き寄せられた。
「おっさんは覚悟を決めた。可愛くてたまらねェんだ、アコ。愛してる」
「・・・・・・・・・・・・は」
本当に可愛いこの人は。
四皇じゃなくても、
ただのおっさんでもきっと私は好き。
「・・・・駄目か?」
捨てられそうな子犬のような目で見て来るから。
「私も好きですよ」
って、言った時の笑顔。
・・・・結局馬の意味はわからなかったけど、
ライアは島の案内のあとすぐに船を降りて、
次のいい男探すんだからーっと意気込んでいた。