短編④
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
初恋は叶わない、なんて言葉を聞いたことがある。
だからまあ、あえて言うけど。
「初恋はマルコさん」
「・・・・嘘でしょ?」
「こんなとこで嘘ついてどうするんですか、嘘じゃないですよー」
ナースさん達とのお茶会。
まあ女子ならでは、ということでファッションの話しだったり、
お菓子の話しだったり(それがもとで出来るスイーツレシピもあったりする)、
恋の話しだったりする訳だけども。
今回のテーマは初恋。
なので言ってみちゃったりした訳で。
ナースさんの反応はもうものすごいことになってる。
「・・・・・何と言うか、まあ・・・アレよね」
「・・・・ねえ?アコ、ほんと?」
・・・・・ここまで露骨に出さなくても。
「ほんとですよぅ」
「何処を好きになったの?」
「・・・・笑顔」
「・・・・・そんなに笑う人だったかしら」
「え、結構笑ってますよ?」
「そう?でも厳しい人よね」
「でもちゃんとしてればわかってくれますよ」
「・・・・べた惚れじゃないアコ。今も好きなの?」
「うーん・・・・・」
「あら」
返答に困る質問に思わず唸る。
好き、と言えば好きだし。
でも最初の頃程のときめきがないっちゃないし。
・・・・・・というか。
初恋は敵わない。
そう思って諦めた。
「マルコ隊長といえば女っ気全然ないわよね」
「あらでも遊んではいるみたいよ」
「ま、何にしてもマルコ隊長はやめて正解ね」
「・・・・そう、ですか?」
「女より家族って感じだもの、少なくとも私には向いてないわ」
「・・・・家族」
きっと彼にとって私は家族なんだろう、
家族として私は間違いなく大切にされている。
・・・・それなら、それでいい。
このままで。
「はいどーぞ」
「・・・・悪いねい」
「いいえ」
この日はマルコさんが1回も食堂に顔を出さなかったので、
どうしたのかと近くのクルーに聞いてみたら、
終わらない仕事があって部屋に籠ってるんだそうで。
片手で食べられるサンドイッチとレモンティーを持って行った。
「誰かから聞いたのかい?」
「はい、少しだけ。大変みたいですね・・・大丈夫ですか?」
「は、誰に聞いてるんだい?」
見せてくる不敵な笑みに、
さすがマルコさんと感服する。
「少しは休憩もして下さいね、私に出来ることがあれば言って下さい」
「ああ・・・・それなら頼もうかねい」
「はい、どうぞ」
珍しい、マルコさんから頼まれるなんて。
「アコの言う通り休憩にするよい。付き合ってくれるかい?」
「休憩に?」
「話し相手だよい。頼めるかい?」
「勿論です」
笑顔で頷いたら、
「座れよい」
と促されたので遠慮なくベッドに座らせてもらった。
・・・・ちょっとだけ、ドキドキする。
私はまだこの人に・・・恋をしているんだろうか。
「失礼しまーす・・・」
「もうこんな時間かい・・・どうりで腹が減ってる訳だ」
「今日は食堂にお顔を見なかったので心配しました」
「そりゃ悪かったねい・・・問題児が多いからよい」
「エースとか?」
「わかってるねい」
ははっ、とマルコさんが笑った。
「でもあんまり苛々してらっしゃると眉間に皺増えますよ」
「血圧も上がるよい」
「レモンは高血圧を抑制する効果あるんですよ」
「そりゃいいねい。助かるよい。・・・しかし珍しいじゃねェかい」
「珍しい、ですか?」
「いつもは珈琲だろい?」
「あ・・・珈琲の方が良かったですか?」
「いや、ただ気になっただけだい」
・・・・・今日に限って珈琲ではなくレモンティーにした理由。
それは。
「・・・・・ナースさん達とお茶会したんですけど」
「ああ、たまにやってるねい」
「そこで初恋の話しになったんです」
「初恋?」
「初恋の味はレモン、なんて」
・・・呆れられちゃうかしら。
不安になりながらマルコさんを見つめたら、
えらく感心した様子で、
「苦くて酸っぱい、よく言ったもんだい」
と呟いた。
「・・・・マルコさんの初恋って」
「覚えてねェよい」
「・・・ですよね」
覚えてても教えてくれなさそう。
「初恋は叶わないから苦くて酸っぱいんですかね」
「叶わないのかい?」
意外にもこの噂は知らなかったらしい。
「っていう噂・・・言い伝え、ですかね。有名ですよ」
「アコの初恋、興味あるねい」
・・・これも意外。人の恋に興味があるなんて。
「私の初恋は・・・・叶っては、いないです」
「言ったのかい?」
「・・・・何も」
「それは叶ってないんじゃなくて叶えてないだけだろい」
「・・・・・うぐ」
厳しい視線が突き刺さる。
・・・密室、2人きり。
レモンティーを持つごつい手とか、
優しい声とか。
・・・・・ドキドキが、止まらない。
私まだ初恋真っ最中?
「・・・そうですね、私まだ初恋真っ最中みたいです」
ちゃんと終わらせて諦めよう。
「モビーの人間、かい?」
「っていうかマルコさんなんですけどね」
覚悟を決めたらぽろりと出て来た言葉。
「・・・・・アコ?」
さすがにこれにはマルコさんも驚いたらしい。
いつもの眠そうな目が見開いている。
「好きでした。・・・・・えーっと、じゃあ私はこれで」
私もさすがに恥ずかしくなっていたたまれなくなったので部屋を出ようとしたら。
「・・・逃がすと思うかい?」
どさ。
身体が倒れた。
ああ、後ろベッドで良かったあ。
なんて思う暇もなく。
「初恋は叶わない?その言い伝え俺が覆してやるよい」
・・・にやりと笑んだその顔はまさに海賊。
「・・・・・お仕事は?」
驚く私に本日2回目の、
「誰に聞いてるんだい?」
そしてレモンティーの味の口づけが落とされた。
・・・初恋はレモンじゃなくてレモンティーだった。