短編④
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エースと付き合い始めて数ヶ月。
・・・・・・・・こんなことは初めてだ。
「今日のお昼何だろねエース」
「・・・・・・そーだな」
いつものように2人の時間で、エースの部屋での雑談。
ベッドに座るエースと、
机の椅子に座る私。
・・・・・・・・・・・何か今日は妙に距離がある気がする。
実際の距離だけでもなくて、心の距離も。
さっきからご飯の話をしても、
父さんの話をしても、
更には弟の話をしてもまったく反応しないし。
そーだな、しか言わない。
「エース?」
「・・・・・・・・・・・・そーだな」
・・・・・・・・駄目かも。
さてどうしたもんかと考え始めた時、
「アコ」
今日初めてまともに名前を呼ばれた。
「ん?何?」
「・・・・・・・・・・・あ、あのよ」
「うん」
「・・・・・・・・・・・・・・おい」
「だから何」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おいで、アコ」
長い沈黙の後紡ぎだされたエースの台詞に思わず目を丸くした。
「え。エース?」
「だああああ!いいから来い!」
「うえっハイ!」
次にエースはそう叫んで、私は言われるがままエースが座るベッドの横に腰を下ろした。
「え、エース?」
来たよ?と促せば、目の前にエースの手が伸びてきて、
え、殴られる?と瞬時に目を閉じた。
「・・・・・・・・・・・・・・あれ」
けれど衝撃は来なくて。
代わりに頭の上に乗せられた手が優しく動いていた。
ぱちっと目を開けると真面目な顔のエースが目に入った。
・・・・でも、顔は真面目なのに。
目がとても優しくて。
じっと見つめるけど何も言わないエース。
お互い何も言わないのに、
何だか優しい空気が好きで。
私はただ黙って、されるがまま。
そしてぎゅっと抱き寄せられて、
「アコ、愛してる」
小さく、でもしっかりと告げられた愛の言葉。
全然言われない訳じゃないけど、
珍しい。
・・・・・・・今日は不思議で、素敵な日だなあ。
大好きなエースの匂いを感じながら目を閉じる。
「うん、私も」
愛してる、とエースの胸元で呟けば、今度はちゅ、と額にキス。
嬉しいんだけど、ここまで来ると感じるのは違和感。
「何か今日のエース変」
「・・・・・・・・・嫌だったか?」
率直な気持ちを口にすれば不安そうなエースの顔が可愛い。
「嬉しいけど・・・珍しいなって。さっきも挙動不審だったし」
そう答えればエースは何処かほっとしたような笑みを浮かべた。
「そっか、ならいいんだ」
「・・・・・・・・・・・今日のエースが挙動不審な理由聞いてないけど?」
問いただせば、ぎくりとしたように肩を震わせて。
・・・・・・・・怪しい。
「まあ、それは、アレだ」
「どれ」
「・・・・あー別にたいしたことじゃねェよ」
「へー誤魔化すんだ」
「べっ別に誤魔化してねェ!」
誤魔化してるよね思いっきり。
「私に言えないことがある、と。つまり私達の関係はそこまでだったと」
「わかった!言う!・・・・・笑わないって約束出来るか?」
じとーっとエースを見つめれば慌ててエースが口を開いた。
うーんでも、笑わないかって言われても。
返事次第だけど、ここはYESと言っておこう。
「うん、約束する」
「・・・・・・・・・・ナースが」
「ナースさんが?」
「倦怠期、そろそろじゃねェのかって」
「倦怠期ぃ?」
まさかエースの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。
・・・・・で、ナースさんに何を入れ知恵されたのかしら。
「倦怠期ってアレだろ?喧嘩とか多くなってすれ違って別れるんだろ」
「うん、まあ」
ちょっと大袈裟な気もするけど。
「で、どうしたらいいかって聞いてみた結果だ」
・・・・・・・・結果が、今までのってこと?
「えーと、つまり」
「・・・・おいで、って言って頭撫でてやって、愛してるって言えばいいって」
それで言いにくそうにあんなこと言ったんだ。
やっと納得。
ああ、何か笑っちゃいそう。
でも我慢。
何より、嬉しい気持ちの方が大きいから。
「うん、嬉しかった。すっごく」
「そ、そっか!」
「でも、エースらしく愛してくれた方が嬉しいよ?ていうか、その気持ちがあれば倦怠期なんてないない」
「いや、でもよ」
「そもそも喧嘩しないでわかり合える訳ないじゃん。喧嘩上等。ある程度はね」
「・・・・・まァな」
「エースとはわかり合えるって信じてる。すれ違っても無関心にならなければ大丈夫って」
そんな簡単なものでもないとわかってるけど。
でも今は信じていたい。
「・・・・・・・・・俺はアコに嫌われるのが怖ェ」
滅多に聞かないエースの不安。
心臓をぎゅーっと鷲掴みにされたみたいになった。
「嫌いになんか、ならないよ」
こんなにも私の心を占領してるのに。
こんなにも、愛しくてたまらないのに。
「アコ、好きだ」
「私も、好き」
こうやってちゃんと言葉にして。
不安な気持ちも、
嬉しい気持ちも。
ちゅ、とエースの頬に口付ければ、お返しとばかりに唇に返された。
「俺は・・・アコのことをずっと愛する。オヤジに誓う」
父さんに誓う、ってとこがエースらしい。
でも何より信じられる。
「じゃあ私も・・・父さんに誓う」
そしてこつん、と額を合わせた。
「よし、結婚すっか」
「へ!?」
「んで子供作ろうぜ」
「へ、は、」
突然突拍子もないことを言い出したエースに返事が出来ないでいる私に見えたのはエースの満面の笑み。
「指輪は今度島に着いたらな!」
「え、と?」
「とりあえず今は子供、だな」
「・・・・・・・・エース君?」
そのまますんなりとベッドに押し倒されて。
「嫌、か?」
なんて聞くもんだから。
嫌、なんて言える訳もなく。
「・・・・・・・幸せにするね」
と言えば、
「馬鹿。俺が幸せにすんだよ」
とエースが笑ったから、
私も笑って目を閉じた。