短編③
夢小説設定
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「・・・・・・・最悪だ」
迷った。
戻ろうにも戻れない。
何処から来たのかも忘れた。
・・・・・・やっぱり1人で来なきゃ良かった。
海賊が山になんか行くものじゃないわ。
遭難です。
・・・・とか言ってる場合じゃない。
もう空が暗くなってきた。
たまには皆に山菜なんかを振る舞ってあげたいと。
辿り着いた島の隣にあった山。
・・・・行き先は誰にも告げてないから。
心配してくれてるかな?
それともただ遊び歩いてるって思われてるかなあ。
ここで山賊にでも会ったらどうしよう。
道でも教えてくれればいいけど。
「ふんぎゃ!?」
下ろうとして思いっきり足を踏み外したらしく、
「・・・・・いっ、た・・・・」
思いっきり腰を打った。
かなり痛い。
・・・・何だか動く気も失せてしまった。
今日はここで野宿、かあ。
仕方ない。
私だって海賊。
まったくの丸腰って訳じゃないけど。
・・・・山賊、もしくは。
人じゃない・・・・動物とかでも危険に変わりはない。
・・・・・・・はあ。
ため息を吐いたらぐぅ、ぎゅるるる。
とお腹が鳴った。
お腹が空いたことを確認したら、寂しくなった。
・・・・・・・・・・・無事にモビーに帰れるかな私。
最悪の妄想が頭を過って慌てて首を横に振って消した。
こんなとこでどうにかなったりなんか出来ない。
まだまだやり残したことあるんだから。
試したいレシピだって山ほどあるし、
食べてみたい料理だってあるし、
・・・・好きな人に、好きって。
・・・・・言いたい。
ガサガサ、と音がした。
思わず身構えた。
・・・・・何だろう、風の音じゃない。
人?・・・・敵?
それとも。
「・・・・・・・・け」
数秒後に姿を現したそれは、
結構大きいオオカミ、だった。
・・・・・・・嘘でしょ。
グルルル・・・・と鳴きながらこちらを見てる。
・・・・腰は打ったけど動けなくはない。
でも逃げたら追って来るのは必至。
でもって逃げきれず捕まってアウト。
そもそも背中見せるの怖い。
助かる方法は1つ。
戦うこと、だ。
幸い相手は1匹。
私だって白ひげ海賊団の一員。
じっと見つめ合うこと数秒。
「おすわり」
「え」
私じゃない、聞き慣れた声が聞こえた。
そして次の瞬間、
「ふせ」
ズシャァ。
そんな音がして、目の前のオオカミが地面にめり込んでいた。
「う、わ・・・・・」
オオカミの上に乗り、片手で押さえつけてたのは、
「・・・犬じゃないんだからさ、エース」
「似たようなモンだろ」
「・・・・・まあね」
・・・エース。
「ったく、探したぜアコ。怪我ねェか?」
「あ、うん・・・有難う。どうしてここがわかったの?」
「言っただろ?すっげェ探した」
エースはオオカミから降りて、私の目の前に来ると怒ったような顔を見せた。
・・・実際、怒ってるのかもしれない。
「・・・・ごめん」
「何でこんなとこ来たんだよ、しかも1人で」
「皆に山菜料理でも振る舞おうかと・・・サプライズで」
「次からは俺誘えよ・・・危ねェだろ」
「うん、有難う・・・・・ごめんね」
「いや・・・・まあ俺も謝らないといけねェし」
助けに来てくれたエースが、何か私に謝罪があるらしい。
「え、何?」
「・・・・俺も迷った」
「あ・・・・・・あははっ、そっかそっか」
まさかの言葉に思わず笑いを堪え切れなかった。
「・・・怒らねェの?」
「怒らないよ。元々は私が悪いんだし、助かったのは事実だし。・・・何より」
「何より?」
「エースが居てくれてるだけで心強いから」
「・・・・まぁ、アコには傷1つつけさせねェよ」
「うん。信じてる」
「朝まではここ動かない方がいいだろうな」
「だね」
とその時。
ぐぅ、ぎゅるるる。
こ・・・っこれはオオカミとかじゃなくて。
「・・・・腹減った」
エースのお腹の音。
「キノコならあるけど・・・どれが安全かはサッチさんに聞かないとわからないから・・・」
どうしよう。
一応採れたキノコをエースに見せたら、
エースはキノコをじぃっと見つめて、
「これは食えねェ、毒がある。これとこれは食えるな」
「え・・・・わ、わかるの!?」
「まァな」
エースすごい・・・・!!
「焼くか」
「焼こう!!」
その辺にある枝を集めてまとめて、そこにエースが火をつけて。
キノコを焼いた。
「あ、私塩持ってる!!」
「お、いいな」
キノコ焼いて塩振っただけ。
・・・・・でも。
「頂きます。・・・・・んめェ!!」
「美味しい・・・・塩最高」
お腹がすいてたせいもあるだろうけど、
美味しい。
エースが居て。
キノコ焼いて塩かけただけのものを食べて。
・・・・それだけで、こんなに。
「・・・・何か嬉しそうだなアコ」
「・・・・うん。実はちょっと嬉しい」
「ま、腹が膨れりゃ嬉しいけどな」
「それもあるけど」
エースらしい思考に苦笑して、
「けど?」
「さっきまで結構ネガティブだったのね私」
「まー遭難すりゃあな」
「もうモビーに戻れないかもって思ったりして」
「・・・・そこまでかよ」
「そんなのやだ、絶対生きて帰るんだって思うんだけど。怖かった」
「・・・・まァな」
「でもまだ試したいレシピもあるし告白もしてないしって自分奮い立たせてた。・・・・それでも怖かった」
「・・・・・・・へェ」
「でも今エースが来てくれただけで楽しいし嬉しいし、ポジティブになれたなって」
「初耳」
「え、何が?」
真顔のエースが私を見つめる。
「好きな奴、居たんだなアコ」
「え。あ。あ・・・・・あー・・・・・・・」
つい口にしてた私馬鹿。
「・・・・誰だ?」
「いやそれは・・・・」
「助けに来たんだからそれくらい聞かせろよ」
ふ、と焚き火の火が消えた。
と同時にふわりと何かが私の身体を包んだ。
「・・・・エース?」
たぶんだけど、エースに後ろから抱きしめられてる。
「・・・・・なァアコ」
「・・・・・・うん。エースのおかげで助かったんだもんね」
「・・・あァ」
「無事に朝迎えられたら言うよ」
「誤魔化すなよ」
「誤魔化してないよ、今言ったら気まずいもん」
「・・・・・・今言ったら気まずい相手?」
今のこのドキドキに任せて、
言ってしまおうか。
「・・・・・・・好きな人が、助けに来てくれたの」
「え」
「今言えるのはそれだけ!おやすみっ」
暗闇に任せて目を閉じた。
「ちょっ、おいアコ!」
朝になったら、
ちゃんと好きって言おうと思います。