短編③
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「アコ中佐!赤髪の船が!」
・・・・・やる気のない私のところに舞い込んでくる、こんな情報。
「スルーで」
「しかし!」
「赤髪なんかとやってうちが敵う訳ないでしょ?無駄な血を流すことないわ」
「・・・・・中佐」
感動の涙を流してる部下の後ろに、
「・・・・・ねえ」
「は!」
「下がっていいわ」
「失礼致しました!」
部下を下がらせて、
「なんか、とは酷いな」
「・・・・・・・・・ねえほんと、ここ海軍の船よ一応」
「ああ、知ってる」
「あなた海賊でしょ」
「赤髪のシャンクス、と呼ばれてる」
「・・・知ってる」
部下の後ろに見えた赤髪。
なんっで、海賊が海軍の船に堂々と乗り込んでくるの!?
あ、うちが弱いから?
とにかく赤髪に乗り込まれたからには覚悟を決めないといけない。
「中佐か」
「大将相手にしたいんなら帰ってくれる?」
「いや、十分だ」
・・・・マジで。
思わず構えた私の手を赤髪が取った。
「え」
そしてそのまま、
「えええええ!?」
私を自分の肩に乗せて、
飛んだ。
「いやああああああ!!!」
ウソでしょねえ!?何コレ!?
たいした距離はなかったものの、
私を抱えてここまで飛べるのこの人!!
そして難なく着地された場所は当然というべきか。
・・・・レッドフォース号。
「よっ、と」
ゆっくりと降ろされて、そこに立つ。
「・・・・私を人質にする気?」
「人質?必要はないな」
赤髪は満足そうな笑みで私を見る。
「じゃあ何?私を帰す気あるの?」
「ない」
そのくせこの質問にはあっさりと即答で拒絶。
「・・・・目的は何?」
「もう達成したさ」
「だから何」
「何だと思う?」
私をからかっているのか。
考えろと言うなら考えようじゃないか。
・・・・人質は必要ない。
まあね、四皇だもの。
私なんか人質の利用価値すらないでしょうよ。
でも私を帰す気はない、と。
目的は達成したってことは私をこの船に連れてくることが目的だった。
・・・・問題は私個人でなくても海軍のある程度の人間なら誰でも良かったか、
それとも私個人でなくてはいけなかったのか、だけど。
中佐で十分。彼はそう言った。
でもじゃあ、人質じゃないなら何の為?
・・・・私が、女だから?
「全然わかんない」
考えることが面倒になってそう答えを出した。
そもそも海軍の私に海賊である彼らの考えがわかってたまるか。
「だっはっは、正直だな」
「で、何なの?」
「拉致監禁、と言ったら?」
がらりと空気が変わった。
ピリっと痛んだ肌。
・・・・覇気。
「・・・・うちの部下に手を出さないっていうなら受け入れてあげる」
「約束しよう、アコ以外に手は出さねェ」
「待って。・・・・何で私の名前知ってるの?」
中佐まで上り詰めたとはいえ、私のやる気のなさは青雉大将に負けてないと言われた。
・・・・それでも青雉大将に気に入られてるからここまで来れたと言っても過言ではない。
「案内しよう、俺達の船だ」
赤髪は私の質問を無視し、勝手に歩き始めた。
仕方なくついていくと、
見知った顔が目を丸くした。
「・・・・ほんとにやったのかアンタ」
煙草を銜えたまま赤髪を睨み付ける男。
たぶん、
「副船長のベックマンだ、怖いだろ」
・・・聞く前に赤髪の紹介で予想通りの答え。
「海軍か」
「海軍よ。ねえ、さっきのどういう意味?」
「海軍の女を1人仲間にすると言われてたんでな。ホントにやるとは思わなかった」
と言いながら、ベックマンは私に背を向け、興味がないと言わんばかりに去って行った。
「誤解だアコ、女だから連れて来たんじゃねェ」
「・・・・いや誤解とか言われても」
何その恋人に言い訳するような言い方。
困惑する私に変わらず赤髪はにこにこと、
「まあまずは飲もう」
・・・・人の話しを聞かない。
手強いわ、これは。
「私は貴方を知ってるけど、貴方は私を知らないでしょ?」
相手が私の話しを聞かないのなら私も聞かないことにした。
そしたら、
「いや、知ってる」
・・・初めてまともな答えが返って来た。
「何故?」
「会ったことがある。・・・覚えちゃいないか」
初めて少しだけ寂しそうな顔を見せた赤髪。
そんな彼の言葉を信じて必死に記憶を辿る。
いやでも赤髪と会ってたらさすがに覚えてるでしょいくら私でも。
「・・・・・・・・・あ」
あれ待って。
「思い出してくれたか?」
「・・・・・・うちの管轄の島でお酒飲んだ時」
「一緒に飲んだ」
飲み過ぎて記憶ほぼなかったけど思い出した。
行きつけのお店で飲んでいた時確かに見覚えのない赤い髪の男と隣り合わせて、
「めっちゃ楽しく飲んだ気がする・・・・」
意気投合したのを思い出した。
「嬉しいな、思い出してくれたか」
「それで何で拉致監禁・・・・」
「何を話したかは覚えてるか?」
「え、えーっと・・・」
『私?海軍やってるの』
『海賊の方が楽しいぞ』
『いいわねー海賊』
『やるか、一緒に』
『拉致監禁でもされたら考えてもいいわ』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私か」
すべての原因私だった!!!
すべてを思い出した瞬間頭が真っ白になった。
「改めて聞こう、アコ。俺達と一緒に海賊をやらないか?」
「いやいくら私がやる気がないからって・・・・!!」
海軍からいきなり海賊になんて!!
「中佐だったとは知らなかったが、申し分ない。部下思いなところも気に入った」
「・・・・十分だって言ったのは」
そう言う意味、か。
「ま、飲みながら考えてくれ」
連れて来られた赤髪の部屋で、
出されたお酒。
「顔は知ってたはずだったのに・・・・」
何であの時気づかなかったのかと自分を叱りたい。
後悔の念を呟いて一気に飲み干した。
「あの時既にかなり酔ってたからな」
「酔ってる時に口説くなんて卑怯よー!!」
「なら今口説こう」
「は?」
「まだ酔ってねェだろう?」
「そ・・・・・・そうだけど」
赤髪は私の片手を取り、手の甲にちゅ、と口づけた。
「ひぃ!?」
「運命なんざ信じちゃいねェが、これも何かの縁だ。これから俺の側で旅をする気はないか?」
その真剣な眼差しと。
思い出される居酒屋での出来事。
「・・・・私をあそこに返して」
「駄目か?」
「部下たちに指示とお別れを。それくらいさせてよね」
「許可しよう」
「でもその前に」
酔わせて。
貴方に。
・・・・・・・なんてね。
・・・・すべてをお酒のせいにして。