短編③
夢小説設定
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ほんっとに、ぐたぐだぐだぐだとさ。
もう頭に来た。
これ以上言われるのは御免だ。
書類を整えて机を片付けて。
「お、今帰りかアコ?どうだ一杯」
飲みの誘いをかけてきた同僚のシャンクス。
「シャンクス、私と結婚しない?」
「ああ、いいぞ」
「よし。じゃあそういうことでよろしく」
「よし、じゃあ式場や日取りの相談がてら飲みに行くか」
・・・・・・本気にしてないなこれ。
シャンクスはいつものように人好きのする笑顔を私に向けて、
「いつものどこでいいか?」
「・・・・うん」
私に手を差し伸べる。
・・・・・・・シャンクスと私は、ただの同僚。
恋人でも何でもないし、冗談だと取られても仕方ない。
「で、式はいつがいい?」
「気候がいいから秋」
「いいな。式場の希望は?」
「そこそこのとこ。駅から近い方がいいかなー」
馴染みの居酒屋に着いて、
お互い生で乾杯した後。
シャンクスはにこにこと上機嫌。
「ドレスは洋装がいいと思うんだが」
「あーいいんじゃない?」
生ビールをぐびぐび。
「ツマミも食わないと酔うぞ」
「平気。んで、絶対上層部の奴ら招待するからね」
「・・・・何か言われたな?」
「女は結婚して子供産んで育てて1人前なんだぞ、わかるかね君ィ」
「・・・なるほど」
シャンクスが苦笑した。
「ばっかじゃなかろうか!!じゃあアンタらはいつ1人前になるのよ!子供産めもしない育てもしないくせに!!」
「だっはっは、その通りだ」
「セクハラで訴えてやろうかしら」
「訴えるんなら手伝うぞ」
「有難う。・・・・・・・じゃないね。ごめんシャンクス」
「何のことだ?」
「すっごい失礼なこと言ってた私」
・・・・冷静になってみて気が付いた。
馬鹿だな私。
「気にするな。アコの気持ちはよくわかる」
「とか言って。シャンクスはそういうのないでしょ」
シャンクスは優秀だ。
周りからの人望も厚い。
加えて容姿端麗、性格も良し。
・・・・よりによってタイミングが合ったからってすごい人にプロポーズしちゃったもんだよ私。
「そうでもねェさ。色々ある」
「・・・・・じゃあ言ってみてよ、例えば?」
「服装は心の乱れだ、規則を守れ。とかな」
「わかる、それは私も思うわ」
「厳しいな」
「・・・・悔しかったんだよね、仕事と関係ないところで1人前じゃないって言われて」
「仕事で言えばお前はもう1人前だ」
「年齢だけはね」
「そうか?俺は信頼してるが」
「いいよ気遣わなくて」
だってシャンクス1人で何でも背負い込んだ挙句やっちゃうんだもん。
信頼してるって言うならもう少し私を頼ってくれてもいいのに。
くくっ、と笑い声が聞こえた。
「拗ねてるのか?」
「うっさい」
・・・・とか口に出ちゃうところがまだまだ子供だと自覚しよう。
「そうだな・・・男が1人前ってのは惚れた女とか家族を幸せに出来たら、かもしれないな」
「結局結婚しかないってこと?」
「しかないってことはないだろうが、人と関わることで、ってとこだろうな」
「でも結婚なんて余裕がなかったら出来ないと思わない?」
「金銭的な面ではな」
「精神的にも、でしょ?」
「それには賛成しかねる。誰かを支えることで自分を保てることもある」
「・・・・・そう?」
「愛する妻が居ればこそ仕事も頑張れる、だろ?」
「シャンクスはそうなの?」
言われてみればまあ確かにそんな人も居るかもしれない。
「そうだな、頑張るつもりだ」
「・・・・・生追加していい?」
「俺も頼む」
おかわりの生ビールを注文。
「お前はその辺でそろそろやめておいた方がいいな」
「やだ。まだ飲む」
「・・・駄目だ」
シャンクスが苦笑した。
「飲み潰れたらその辺にほっといて」
「俺の家に連れて帰っても?」
「何でわざわざ大変な選択するの?シャンクスは馬鹿じゃないと思ってたんだけど」
「確かに意識のないお前を運ぶのは大変だが、それ以上に俺に得があるのさ」
そこに生2つがやって来て、
「ぷはーっ!!迷惑料なら払わないからね」
「そんなモンはいらねェ」
「・・・・ふーん」
冷たい感覚が喉を通って、お腹に落ちた。
「でも、そうだね。人は誰かと関わらないと生きていけないんだもんねえ」
「アコにとってその誰かってのは俺になるな」
「確かに、こうして愚痴も聞いてもらってるし」
いつも助けてもらってるし。
「・・・シャンクスは結婚しようって人居ないの?」
「居るぞ」
「え」
居るの!?知らなかった。
「ようやくその気になってくれたらしい。式は秋頃だ」
「あー良かったねえ、式には呼んで」
「何言ってるんだ、ドレス着るんだろう」
「・・・・・はい?」
「相談も進んでねェしな、つまみも追加しよう」
「・・・・・・・マジで」
シャンクスの気持ちに気づいてなかった私は、
やっぱりまだまだ半人前だったようで。
前略、上の方々。
私秋に結婚します。
支え合って生きて、
1人前になれますように。