短編③
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「船降りた方がいいんじゃない?」
「そ・・・・・・・」
そんな。
それすら出てこなかった、あまりに衝撃過ぎて。
「だってそうでしょう?何故かはわからないけど、貴女はお頭さんに望まれてるってだけで乗ってるのよ」
「そう、ですけど」
「それだけなの、貴女は。強くもないし覚悟もない。四皇の名折れにもなりかねないと思わない?」
うぐぐぐ・・・・!!!
言い返せない。
「でもまあ、怪我はたいしたことなかったんでしょ?」
「・・・・はい」
「ならいいじゃない」
「・・・・・・良くは、ないかと」
「怒ってもいないんでしょ、あの人」
「はい、全然」
「貴女が気に病む方が辛いと思うわ。そんなこともわからない?」
・・・・・・・・・・相談して良かったのか、
良くなかった、のか。
この間小さい戦闘があって、
お頭がそこで怪我をした。
・・・・私を守ろうとして。
怪我は本当にたいしたことなかったし、
お頭も笑ってくれてたけど。
・・・・・私は笑えなかった。
今回は軽くですんだけど。
次は?
もし、もっとひどい怪我になったら?
・・・・・私のせいで。
そんな苦悩ばかり浮かんできて。
あまり寝られない日々を過ごして着いた島。
その酒屋さんに、馴染みの姐さんが出来たので。
相談してみることにした結果。
・・・・・・・・・・ぐさぐさっとやられた。
わかってはいたけど。
鋭い言葉が心に突き刺さる。
・・・何でかわからないけど、
お頭に望まれた。
それだけで私は今あの船に居て。
・・・・それだけ、だから。
守られて、そのくせ傷ついてる。
傷の手当ても満足に出来ない、戦うことなんてもってのほか。
誰にでも出来るようなことしか出来ない私が。
覚悟もなしにあの船に居たら。
・・・・・・・・・・・これ以上、は。
「ったく、ちょっと目を離すとすぐこれだ」
「・・・・酒臭い」
「当たり前だろう、酒飲んでんだぞ」
見るからに酔っぱらってるお頭が絡んできた。
「もう、飲み過ぎですよ」
「酒屋に来て酒を飲まねェでどうする!ほらお前も飲め」
「あんまり飲むと傷に良くないんじゃ、」
「心配するな、これくらいの傷すぐ治る。つーかもうほとんど治りかけてる」
「・・・・とか言って本当は痛いんじゃないですか?」
「これくらいの傷が痛くて海賊がやってられるか」
「・・・・なら、いいんですけど」
釈然としないまま頷いたら、
「ねえお頭さん?私も船に乗せて下さらない?」
姐さんがとんでもないことを言いだした。
「アコに誘われたのか?」
「まさか。私は私の覚悟で乗りたいと申し出ておりますのよ」
・・・・ごくり、と思わず唾を飲み込んだ。
お頭は何て答えるんだろう。
「残念だが定員オーバーだ」
「・・・・あら、それなら1人降りれば乗れるわね?」
姐さん怖い!!
目が本気、だ。
お頭は姉さんの本気の目を受けて、
「今うちの船に降りてもいい奴は1人も居ねェんだ」
・・・お頭も本気に返した。
「本当に?全員が覚悟を持って乗ってると?」
「ねっ姐さん・・・!!」
慌てる私にお頭は、
「ああ」
にィ、と自信ありげな笑みで即答。
・・・・かっこいい。
じゃなくて。
「姐さん本気で・・・・?」
「ええ、本気よ。貴女が席を譲ってくれるの?」
じぃっと姐さんが私を見つめる。
ふと気づくとお頭も私を見てる。
・・・私の答えを、待ってる。
「・・・・嫌、です」
ゆっくりとしっかりと。そう口にした。
「そう。じゃあしっかりやるのね」
それから姐さんは、
「お頭さん、ちょっといいかしら」
と今度はお頭と2人で話し出した。
・・・・・・・・・しっかり、か。
仕方なくお店を出てとりあえず船に戻ろうかと考えてると、
「こら」
短い叱咤の声。
「あれ」
声の主は姐さんと話していたはずの、お頭。
「ほんっとにアコは目を離せねェなァ」
お頭は苦笑して私に並んだ。
「・・・すみません」
「で、何処に行くつもりだ?」
「船に・・・戻ろうかと」
「俺を置いて、か?」
「・・・お話しされてたので」
「少しは妬いてくれねェか?」
ぐ、っと片腕を掴まれた。
「・・・・っ、何で、ですか」
胸が、苦しい。
「妬いて欲しいってことさ」
「・・・・・申し訳ないとは、思ってます」
「そりゃあ何にたいしてた?」
「何に、って」
・・・・私がいること、に?
「船に居るのが辛いか?」
「・・・辛いのは、役に立たないことです」
ようやく絞り出した答えにお頭は、
「そうか。なら辛くなる必要はないな」
・・・アッサリそう答えた。
いやいやいやいや!!!
私の深刻な悩み!!
「だって私弱いし、後ろ向きだし・・・っ」
「・・・俺が何でアコを側に置きたいかわかるか?」
「え、わかりません・・・」
これまた唐突なお頭の質問に、私もあっさり答えた。
今まで何回か考えたことがあるけど、答えまでたどり着いたことは1度もなかった。
漸くその答えが聞けると思ったら、
「アコは俺達が好きか?」
「好きです」
また質問。
「どんなところが?」
「・・・・優しくて、面白くて。一緒に居て楽しい、から」
「俺達が弱かったら一緒に居たくないか?」
「・・・・そんなこと、は」
「ないだろう?」
ない。
強いから一緒に居るんじゃない。
「俺達も同じさ。アコが可愛くて愛しい。だから一緒に居てェんだ」
ぽっと心に灯る温かいもの。
同時にすっと何か胸に引っかかっていた何かが落ちたような気がした。
「・・・お頭、姐さんとお話しってどんなお話しを?」
「惚れた女の悩み事1つ解決出来ないのか、と言われた」
「え」
「どういうことかと聞き出そうとしたら、ほらまたすぐ目を離す、と警告を」
「・・・・・それって」
私のこと?
「それで慌てて追いかけて来た訳だ」
「・・・・有難う、御座います」
この人はまた、こうして何度も私を笑顔にしてくれる。
「ずっと側に居てくれるか?」
「・・・・・はい」
この人の側に居て良かった。
そう思うから。
私も、
お頭が私が居て良かったと。
ずっと思ってくれるように。
頑張る。