短編③
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「わー久しぶり!今何してんの?元気?」
「うっそ、変わったねー痩せた?」
・・・・などという会話があちらこちらで交わされている、今。
ここは同窓会真っ只中。
・・・・来るんじゃなかった、と私は今後悔している。
何故ならば、
「ぎゃははは!あんた変わらなさすぎ!今でも高校生でイケる!」
「・・・・そりゃどうも」
皆が予想以上に変わり過ぎていて、
私が変わらなさすぎでいるからである。
18で高校を卒業して、
今20歳。
たったの2年ですよ!?
ねえ!?
2年で人ってこんなに変わるもの!?
茶髪に金髪にピアスに果てはリーゼント、
子連れとか!!
・・・・化粧も髪も、
ファッションでさえ。
何も変わってなかったのは私だけだった。
・・・一見、何も変わっていないように見える人だって多いに変わってた。
だからあんなに人だかりが出来てるのかな。
それとも彼の人間性故にだろうか。
・・・・昔からモテるもんね、エース君は。
「エース君は相変わらずすごいわよねー外見変わってないように見えてすっごい色気」
「・・・・だねえ」
癖のある黒髪も、
そばかすも、
ファッションでさえ変わっていないエース君は、
爽やかな笑顔に色気が増した。
故に人だかりの中心は女の子だ。
「あんたに色気は追加されてないのね」
「・・・・ごほ」
「で、行かないの?エース君のこと好きだったでしょアコ」
「可愛くなってるどころか何1つ変わってない私が行ったところで激しく爆笑されるだけだよ」
「されてくればいいじゃん」
「・・・性格は変わってなくて安心したよ我が友よ」
「あ、私の好きな人発見。ちょっと行ってくんねー!」
「・・・行ってらっしゃい」
ほんっとに変わらないなオイ。
再会した友人と別れて1人になったところで、
食べ物でも取りにいこっかな。
・・・・あ、美味しそうなお肉。
あー美味しい。
「お、美味そうだなその肉」
お肉を咀嚼している私の耳に聞こえた声。
「・・・・え・・・エース・・・君」
「アコ、その肉何処にあった?」
「・・・・・・・そこ」
名前を呼ばれたことに驚きながらもお肉の場所を教えたら、
目にも止まらぬ速さでそこへ行き、
あっという間に戻って来た。
・・・・早っ!
「ん、美味ェ!」
・・・お肉を食べて無邪気に笑うとこは2年前と変わらない彼。
なのに顔つきもたった2年で大人びてるし、
背も高くなった。
「・・・久しぶりだねエース君」
遅ればせながら再会の挨拶。
「おう、久しぶりだなーアコ」
・・・出来れば会いたくはなかった。
何も変わってない私を見てエース君は果たして笑うか、
無反応か。
「アコ全然変わってねェのな、すぐわかった」
「・・・・・・うん。変われなかった」
・・・そっちか。
「アコ?」
落ち込んだ私を見てエース君が心配そうに顔をのぞき込む。
「・・・エース君元気そうだね」
優しいエース君に心配かけまいと、
(少なくとも笑われなかっただけで良かったし)
話題を変えてみた。
「ああ、まァな」
「弟君も元気?」
「元気過ぎるくらいにな。もう17だぜ」
「高校生かー・・・・2年生だね」
「2年っていや覚えてるか?修学旅行ん時」
「修学旅行はあったけど・・・何かあったっけ」
思い出はあるけど、
エース君との思い出はないに等しい。
・・・クラスは同じだったけど、
とてもじゃないけど私が近づけるような人じゃなかったから。
「いや、覚えてねェならいいんだ」
「・・・・そう?」
「ああ。つーか酒飲まねェのか?20歳になっただろ?」
「お酒は苦手で・・・」
情けない。
エース君の言う修学旅行の思い出がわからないのもだけど。
お酒が飲めないのも。
「へェ、んじゃ潰し甲斐あるな」
「・・・私家結構遠いからね?」
冗談なのか本気なのかわかんないエース君の言葉に本気で返せば、
「俺が送ってく」
真面目な顔で答えが返って来た。
「その前に潰さないことを考えようか!?その方が面倒じゃないでしょ!?」
「別に面倒じゃねェ」
「・・・・そうデスカ」
・・・・何かエース君てよくわかんない。
あ、でも前からそうだった気もする。
「うし、じゃあ飲もうぜ」
「ええ、本気?」
「嫌か?」
「・・・・飲めないから、ほんとに」
・・・ここで飲んで潰れて迷惑はかけたくない。
でも、こんな頑なに断る自分も嫌い。
「・・・そっか。悪かったな」
ほら、エース君だって落ち込んじゃった。
・・・・馬鹿みたいだ私。
同窓会なんて、来るんじゃなかった。
「・・・・ごめんね、私もう帰る。会えて良かった」
「おいアコ、」
「皆にもよろしく伝えておいて」
泣きそうなのを堪えて、
そのまま会場を出た。
あー・・・・最悪な日だった。
せっかくだから本屋でも寄って帰ろうかな。
気分転換になんか買おう。
でなきゃやってらんないよ。
「アコ!」
「・・・・・・・へ?」
エース君の私を呼ぶ、声。
振り向いた先に居たエース君。
「自己完結して勝手に帰んなよ」
「あ、スミマセン・・・」
怒った様子のエース君に思わず謝っちゃったけど、え?
何?
「ったく」
「え・・・と、何か用だった?」
「用・・・っつーか、言いたいことはある」
「あ、何?」
真剣な顔のエース君は何処か怒ったようでもある。
「会いたかったんだよ、俺は」
「・・・・・・誰に?」
「お前に」
「・・・・有難う」
「・・・会ってみて、変わってなくて安心した」
・・・・・安心した、だって。
「がっかりしたんじゃなくて?」
「がっかりなんかしねェよ」
「・・・皆、エース君も変わったよね」
「・・・そっか?」
「・・・私だけ変わってない」
「俺はアコが変わってなくて安心したけどな」
嬉しかったんだ、とエース君は笑った。
「でも・・・」
「まあ俺も少しは変わったかもしれねェけど、変わってないモンもあるんだぜ?」
「それは・・・そうだろうけど」
「いいから聞けって。俺はずっとアコのことが好きだったんだよ」
「・・・・・・・・・・え?」
エース君が発した言葉の意味を理解出来なくて何回か瞬きをした。
「修学旅行ん時、俺アコの部屋行ったんだ」
「・・・・ええええ!?」
そんな私にエース君の口から次々告げられる衝撃の事実。
「夜な。告ろうと思ってよ。でも赤犬の見回りが来ちまって、慌てて布団に潜り込んだら」
赤犬、っていうのは怖かった先生だ。
待って待って全然思い出せない!
「そこは、アコの布団だった」
「・・・・そ・・・」
そんなことが。
「ラッキーだと思って抱きしめて、好きだって言ってキスしたんだけど反応ねェから」
アレやっぱ寝てたんだな。
・・・・エース君は寂しそうにそう笑った。
・・・・寝てましたね、恐らく。
「・・・・・・あ、うん」
「で、どうなんだよ」
「・・・・何がでしょう」
「今は起きてんだろ?俺ちゃんと言ったぜ、好きだって」
「・・・・・あ」
あ、そっか。
返事・・・・しなきゃだ。
「わ・・・・」
・・・・私も好き、と言おうとして口ごもった。
・・・・私で、ホントにいいのか。
そう思ってしまったから。
「一応言っとくけど、余計なことは考えんなよ?」
「・・・・え、何で」
「何年好きだと思ってんだよ。・・・いいから俺を好きかそうでないかで答えろ」
「・・・・・・好き」
「っしゃ!」
エース君はガッツポーズして、
そのままの勢いで私を抱きしめた。
「ホントはアコ、変わってんだぜ?」
「・・・・え、どのへんが?」
「可愛くなった」
「・・・・っありがと」
・・・・同窓会、来て良かった。