短編③
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「この時間に軽々しく男の部屋に上がり込んでくるのは問題だと思うんだが?アコ」
「由々しき事態なの。仕方がないの」
「・・・・と言う割にそれがどんなかは話さねェ、と」
「・・・・・・・・だって」
シャンクスが不思議そうな顔で聞いてくる。
まあね。
確かにね。
シャンクスの言うことにも一理あると思いますよ。
いい歳した女が、
大学からの友人とは言えやっぱりいい歳した男の1人暮らしの部屋に夜に上がり込むなんて。
でも本当に仕方がないんだよ。
「だって、何だ?」
「・・・・・・・・・・・だってさ」
「・・・・俺に襲われに来たってんなら大歓迎だが」
にこ、と微笑んでシャンクスが近づいて来た。
「・・・・こっちの方が危険かしら」
「・・・危険?」
ちょっと真面目に考えようかなと思っていたらシャンクスの耳が動いた。
「・・・・怖いんだもん」
「ストーカーか何かか?」
「それなら即警察通報してる」
「確かにな。なら・・・・アレだな?」
シャンクスはピンときたらしい。
私が恐れているものを。
「・・・・・・そう、アレ」
「アレと比べるのはいくら何でも酷くないか?」
シャンクスが苦笑した。
「・・・怒った?」
シャンクスは酷く優しくて器が大きい。
・・・・と勝手に思ってる。
実際シャンクスが本気で怒ったところは今まで見たことがない。
でも流石に今回ばかりは怒った、かな?
「怒りゃしねェが・・・・呼んでくれりゃ退治に行くといつも言ってるだろう」
「無理。うち散らかってるから」
「片付けて待っててくれりゃいい」
「片付けてる最中に遭遇したらどうするの!?」
「別に殺されりゃしねェだろう」
「殺されるって思うからここに居るの。・・・迷惑だった?」
「勿論大歓迎だ。泊まって行くか?」
・・・・・まあ、実際殺されるとは本気で思ってないけど、
驚いて飛び退いて頭打って運悪く、なんてこともあるかもだし。
怖いことに変わりないからシャンクスのとこまで避難してきたんだけど。
・・・・・通称G。
でも、さすがに泊まるのはマズい・・・・よねえ。
友達とは言え男の人、だし。
もういい歳、だし。
でもこんな時間(夜22時)で、
家がうちから近くて行っても迷惑そうな顔をされなくて。
そんな人、で咄嗟に思いついたのがシャンクスだった。
とはいえ、泊まるのまでは。
「ううん、そこまでは迷惑かけられないし」
「帰るのか?」
「う・・・・」
「奴の居るところに?」
「・・・・・・・ビジネスホテル探す」
「この辺にはなかったと思うが」
「さ、探せばきっと!」
「この時間に空いてるといいな、部屋」
シャンクスの淡々とした回答に思わずため息が漏れた。
「・・・だよね」
大人しく帰るしかないの・・・?
「行くよ」
「え?」
「家に行って駆除して来ればいいんだろう?」
「え、や、でも」
「多少散らかってるくらい気にしねェ、むしろ奴を探すとなると散らからざるを得ないしな」
「・・・・でも、悪いし」
「そんなこと気にする関係か?」
・・・ほんとは、笑われると思ってた。
Gが怖くてここに来たって言ったら。
馬鹿にされるって。
だから言いたくなかったんだけど。
・・・・笑わないでいてくれたシャンクスになら、頼ってもいいかな。
「・・・いいの?」
「どの道今日泊まったところでいつかは帰らなきゃいけねェだろう」
「・・・・・ですね」
すべてシャンクスの言う通りだ。
「行こう」
私の前に立ったシャンクスの広くて大きい背中が、無性に愛しくなった。
「き・・・っ気を付けてね!?」
「ああ、問題ないさ」
シャンクスは平然。
私はびくびく。
戻って来た私の部屋。
「まずあり得るのは水場だな」
「そうなの!?」
「台所、トイレ、風呂だな」
言われるがまま台所とトイレを案内する。
「・・・・影はないな」
「・・・散らかってるからわかんないだけかも」
「言う程散らかってないから大丈夫だ」
ごめんと謝る私にシャンクスは優しく笑う。
「あと・・・お風呂はこっち」
「ほー・・・・」
シャンクスが意味ありげに呟いたので。
「・・・・いそう?」
恐る恐る聞いてみたら、
「いい匂いがする」
見当違いな返事が返って来て肩を落とした。
「・・・あ、そう」
「シャンプーとリンス、俺も同じの使ってる」
「あ、ほんと?あれいいよねーちょっと高いけど」
「ああ、俺も気に入ってる」
「・・・・ところでさ。それでいいの?武器」
武器。そう呼ぶのは、台所洗剤。
シャンクスが手にもっているのはG用殺虫剤ではなく、それのみ。
「これが1番いいんだ。下手な殺虫剤だと風圧で逃げられるからな」
「そうなの!?」
「これなら奴を覆ってる油分を溶かして窒息死させることが出来る」
「し・・・知らなかった」
「惚れたか?」
にっこりと微笑みかけてくるシャンクスに、
「奴を倒してくれたら惚れるかも」
まだ安心は出来ないと伝えると、
「ということは・・・・」
「・・・・ということは?」
何かを考えるように顎に手をやり数秒。
「倒せばアコは俺と結婚してくれるんだな?」
・・・・・・訳のわからないことを言って来た。
「い・・・意味が」
わからない、と言おうとした瞬間目の端で何かが動いた。
「ぎゃああああああ!!!!!」
「で、どうなんだ?」
「いたいたいた!!!そこそこそこっそこ!!」
「してくれるか?」
「するするする!!結婚するから!!」
「よし、そこだな」
しゅー・・・・・・。
と言う音が続いて。
私は恐ろしくて目を閉じてた。
「・・・・シャンクス?」
「捨ててきていいか?」
「あ」
気が付けば私シャンクスの腕に抱き着いてた。
そ・・・そうだよねこれじゃ動けないよね!
「お、お願いしますっ」
ぱっと腕を離したらシャンクスは何処か寂しそうにGをティッシュに包み、
トイレに流してくれた。
「ご・・・ゴミ箱じゃないんだ」
「万が一、ということもあるしな。これで完璧だ」
脅威は消えた・・・!!」
「有難うシャンクス・・・・っ!!」
「これからも俺が守るから、安心しろ。・・・・で」
「で?」
「式はいつにする?」
「・・・・・・・・・・・・・・え、あれ本気」
・・・・だったの?
「勿論本気だ。俺は確かに聞いた、結婚してくれると」
・・・・・・・言ったわ。
脳裏に過る頼もしい背中。
腕に感じる逞しい腕。
目の前にある、笑顔。
「・・・・・・・・・・する」
私は素敵な旦那様を手に入れたけど。
奴には絶対感謝はしません。