短編③
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「今度の島で必ず船を降りてもらう」
たったそれだけの、言葉。
・・・・・突然のことだった。
お頭からの短い言葉。
それでも私はその言葉を理解して、
「・・・・わかりました」
それだけを伝えて、
部屋に戻った。
・・・・部屋で1人ぼーっと考える。
そっかぁ。
私・・・・・この船に居られなくなっちゃうのかぁ。
いつ着くんだっけ、次の島。
・・・・1週間後、とか言ってたっけ。
・・・・・・・1週間て長いのか短いのか。
や、短いな。
だって今まで何年ここに居たと思ってるんだ私。
・・・・・それがあとたった1週間で。
すべてにお別れ。
・・・・・・・・・・・・・・・お別れ。
何て簡単な言葉なんだろう。
なんて、寂しい言葉なんだろう。
何が駄目だったのかな。
・・・・そういえば最近新入りが増えたから部屋が足りなくなった、とか。
・・・・考えても仕方ないな。
もう決まったことなんだから。
そしたらあとすることは荷物まとめておくことと、
皆に挨拶・・・・かな。
せめて泣かずに挨拶しよう。
「降ろされるぅ!?お前がか!?」
「はあ・・・・」
ちょうど部屋を出たらヤソップさんが通りかかったので私の部屋でお話しを。
ヤソップさんめちゃくちゃ驚いてるけど私だって驚いてる。
「何したんだよ・・・」
「私が聞きたいですよ」
「聞かなかったのか!?」
「聞ける訳ないじゃないですか」
「おいおい・・・・」
ウソだろ、とヤソップさんは口をあんぐり。
「・・・・嘘、だったら良かったんですけど」
「理由くらい聞くだろ普通お前のことあんなに可愛がってたんだぜ!?」
「ええ、ですからあのお頭が私を降ろすということはそれなりのことをしたんでしょう」
それならそれをお頭の口から言わせる訳にはいかない。
「にしたってお前も嫌だーって抵抗しろよ」
「この船のお頭が決めたことに逆らえませんよ」
「お前ってほんっと・・・・・」
「・・・・馬鹿ですよねえ」
ヤソップさんは呆れ顔で頭をがしがしと掻いて、
「ベンに告白したとか」
「してません」
「されてOKした」
「してません」
「ちょっと俺お頭に聞いてくる」
「ヤソップさん・・・・いいん、です。ホントに」
「・・・・・いいのかよこれで」
「はい、皆には・・・お頭にはお世話になりましたから」
せめて最後は、綺麗に。
「・・・・俺が思うに、だけどな?」
「はい」
「最近お頭とのデート断ってたから、だったりして?」
「・・・・・・・いいんです、理由は」
・・・・理由は聞かない。
それでも。
・・・・・・・・信じてるから。
「行くところは決めておいた」
「え・・・・・・」
そんなことまで決められちゃうの?
・・・・あれか、せめて安全なところにっていうお頭の配慮?
「何処か行きたいところがあったか?」
「あ、いえ・・・・」
と言われても私はよく知らないし。
・・・・お頭の顔は普通。
・・・・というか少し嬉しそう?
私と離れるのがそんなに嬉しい?
私ホントにそこまでのことしちゃったの?
あの優しいお頭を・・傷つけたの?
・・・・・・・いっそ自分を消してしまいたい。
「今荷物・・・準備、してる、ので」
「お、そうか。早いな」
「・・・・早くなんかないです」
むしろ足りないくらいだ。
こころの準備、全然出来ないもの。
1週間じゃあっという間。
「もしかしたら予定より早く着くかもしれねェ」
「そ・・・・うですか」
・・・・言葉が出てこない。
・・・・お頭ってこんな人だったっけ?
いくら怒ってたとしても、
長年連れ添った仲間を追い出す時にこんな楽しそうにする?
・・・・・・・・絶対しないよ。
「・・・楽しそうですねお頭」
「ああ、楽しみだな。アコは楽しみじゃないか?」
「ぜんっぜん楽しみじゃないです」
今までそんなお頭の側に居た訳じゃない。
・・・・・私は。
「そんなに嫌か?」
意外、というか不服そうな顔のお頭に悲しさは募るばかり。
・・・違う、悲しさじゃない。
違和感、だ。
「・・・・・嫌、です」
「いいところだぞ」
「それでもです」
ここ以上にいい所なんてきっとない。
「景色もいいし食い物も美味い」
「・・・・そんなの」
皆が居なきゃ、
お頭が居なきゃ意味がない。
「そんなに根詰めることねェだろう、たまにはいいじゃねェか」
・・・・たまには?
「俺だって寂しいんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・は、」
「そんなに俺とのデートが嫌か・・・」
・・・・がっくりとうなだれるお頭にちょっと頭が追い付かない。
「・・・・でぇと?」
「今度の島はいいとこらしいんでな。そんなに船に残って仕事したいか?」
「・・・・・しごと?」
「・・・・・どうした?」
「・・・・・船を降りるって」
「降りて俺とデートだ」
にィ、と悪気なく笑うお頭。
「・・・・・・・・・・・・・・・私の覚悟返して下さい」
「覚悟?」
「・・・・・もう、居られないかと思ったじゃないですか・・・・・っ!!」
この言葉にピンと来たらしくお頭はすぐに苦笑を浮かべて、
ふわり。
私を片腕で包み込んでくれた。
「悪かった。・・・・そうだな、アコが勘違いするようなことを言っちまったな、俺は」
「・・・・・・ほんとですよ」
「最近ずっと船に籠りっきりだっただろう?だから今度こそ、と思ってたらつい・・・」
「・・・・・もう」
「俺が何も言わなかったらそのまま居なくなるつもりだったのか?」
「・・・・・実はこっそり戻るつもりもありました」
半分本気で覚悟して、
半分本気で反乱するつもりだった。
「・・・・それでこそ、だ」
「お頭も」
私の信じたお頭で良かった。
・・・・・あとでヤソップさんに説明しておこう。