短編③
夢小説設定
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・・・・・・・終わった。
私の今年のボーナスも、
私の首も。
「・・・・・・申し訳御座いません」
10円の、為に。
「・・・気にすんなよい」
相変わらずの無表情。
・・・・ああ、この顔が私の未来を物語っているのね。
私はただコンビニでお弁当が買いたかっただけなのに。
お弁当とお茶とサラダ、だけで良かったのに。
デザートに目を奪われてどうしてもどうしても食べたくなった私馬鹿。
・・・・そのせいで、レジで会計の時に10円足りないことになるとは思わなかった。
財布を見て10円足りないことに気づき、
仕方なくデザートを諦めようといた時だった。
後ろから無言で足された10円玉。
そこにあったはパイナップ・・・・・もとい我が上司。
通称社長の右腕パイナップル。
じゃなかったマルコさん。
・・・・その特徴的な髪形もさることながら、
有能な頭を持ち合わせ、鋭い視線と毒舌で恐れられている人。
そんな人からお金を借りるとは!!
私の人生終わったも同然。
「短い間だったけど有難う御座いましたサッチさん・・・・」
「いやいやそんな、10円くらいで・・・いくらマルコでも」
「でもたぶんめっちゃ怒ってたー!!」
「・・・10円返した?」
「返してません」
だってないものお金。
「これ私の財布です」
札入れに入ってるのはレシート。
小銭のところは何もナシ。
・・・・空っぽ。
「・・・・大丈夫?」
「大丈夫じゃないです」
「今日の夕飯は?」
「あ、それは大丈夫です家にカップ麺あるんで」
「・・・・それ大丈夫じゃないっしょ」
「でも飢え死にはしないですよ」
サッチさんは呆れ顔。
「でも身体に悪いっしょ?うち来る?美味いの作ってあげるからさ」
「えー・・・・」
有難いけどサッチさんの家に行くのはなぁ、と返事に困っていたら、
「サッチ、資料が足りてねェよい!」
「げっ忘れてた!」
・・・マルコさんの怒鳴り声。
サッチさんは慌ててパソコンに向かった。
・・・・ほっと、安堵のため息。
も束の間。
じろりとマルコさんに睨まれた。
「・・・・今夜」
「はいっ」
10円返せって!?
「飲みに行くよい」
「えっでも私お金」
ないんですけど!?
「説教ついでだい、今日はいい」
せっ・・・・・・・・・説教されるんだ私。
「・・・・・かしこまりました」
「しゃっせー!!2名様ご案内ー!!」
・・・説教の場所として選ばれたのは普通のチェーン店の居酒屋。
え、騒がしくない?
私こんなとこで怒られるの?
タダ飯につられて拒否出来なかったけど。
「好きなモン頼めよい」
「きょ、恐縮です・・・・」
好きな物と言われてもそうはいかないので、
とりあえず電子リモコンでウーロン茶を注文。
マルコさんは焼酎。
・・・・てか説教受けるんだもんね、酒飲んだら駄目だわ。
あんな美味しそうなデザートさえ目に入らなければ!!
とろ生ショコラなんて食べたくなるに決まってるでしょ!?
美味しかったわものすごーく!!
「食いモンは?」
「へ」
「飲み物だけじゃ足りねェだろい、適当に頼め」
「まっマルコさんは何を・・・」
「何でもいいよい」
・・・・・いいよいって言われてもよい。
それが1番困るんですよい。
「えーとじゃあ」
漬物盛り合わせと、焼き鳥盛り合わせ。
それと冷奴と刺身盛り合わせ(小)を注文。
と、メニューに見つけた、鍋。
・・・・・鍋!!
1人者の私には(寂しいから)やらない鍋!
美味しそう・・・・!!
ピッ。
「あ」
え。
嘘・・・・・・・マルコさん注文しちゃった。
「以上でいいのかい?」
「あ・・・・・・ハイ」
それからすぐにとりあえずの飲み物が届いて、
「い、いただきまーす・・・」
ごくり。
・・・・・・さて説教を待ちますか。
「アコ、よい」
「はいっ」
「サッチの言うことは間に受けるんじゃねェよい」
「・・・・サッチさん、ですか?」
「よい。家に行くなんてもってのほかだい」
「・・・はい」
「それから食い物はしっかり食え」
「・・・・・・・は、い」
・・・・何だこの説教は。説教なのか。
「貯金もしっかりしとけよい。何があるかわからねェだろい」
「・・・・・・・・・・明日必ずお返しします10円」
「別にいらねェよい」
「え、でも」
「10円であの顔が見れりゃ満足だい」
「・・・・・え?」
「こっちの話しだい、気にすんな」
・・・・・・・頬を赤くして、拗ねたように目を逸らした。
その顔に。
今の言葉に。
・・・・きゅんときてしまった。
もしかして今日サッチさんに資料を促したのって私を助ける為?
「鍋でーす熱くなってます気を付けて下さいー」
そうこうしてるうちにお鍋が到着。
ぐつぐつぐつ。なんていい音。
蓋を開ければ広がる湯気。
「はあああっ美味しそう!!」
「火傷しねェように気をつけろよい」
「はいっいただきます!・・・・あつっ、はふっ」
そうは言われても我慢出来ず口に頬張り、案の定舌が熱い。
「・・・・言ってる側から何してんだい」
「熱いけど美味しいです!1人暮らしだと鍋なんて縁ないし!」
やっても寂しいし!
幸せ!しかもタダ飯!
「・・・・そうかい」
「この御恩は仕事で返します!」
「シメにうどんもあるよい」
「わーい!」
「・・・・・甘いモンは、どうするんだい」
「甘いもの・・・いやいやさすがにそこまでは」
「それの分の説教もしてやるから頼めばいいよい」
・・・と言うマルコさんの顔は優しく笑んでいて。
・・・・・・惚れてしまうじゃないか。
「・・・・いいんですか?」
「その代り言わせろい。サッチとは絶対飯に行くなよい」
「・・・・じゃあマルコさんまたご飯付き合ってくれますか?」
「・・・・付き合ってやるよい」
・・・・・しばらく10円は返せそうにない。
(なるべく接点多く持っておきたい)