短編③
夢小説設定
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「げほっ、ごほっ、・・・・おぇ」
・・・・・私死ぬんじゃないだろうか。
このまま死んだとして何日気づかれないだろうか。
・・・怖いなあ都会の1人暮らしって。
いやいや、風邪引いただけで何をネガティブになってるんだ私は。
大学生になって念願の1人暮らしじゃないか。
・・・・・・寂しいなんて。
・・・・・・・・・・・寂しいよ。
具合が悪い時って寂しくなる。
いつもはそんなこと思わないのに。
「こほっ、ごほ、ぁー!!」
薬・・・・飲まないと。
その前に胃に何か入れないといけないんだっけ?
げ、薬一回3錠だって。
そんな飲みたくないー・・・・・寝てるか。
頭もガンガンしてきた。
布団に潜り込みながら携帯で時間を確認して、
もうお昼か・・・大学の友達は何してるだろうと思った時だった。
ピンポン。
短いチャイムに仕方なく起き上がって玄関に向かった。
一応寝間着なんだけど・・・宅急便の人だったら可哀想だし。
「はぁい・・・・・・・・・・・え」
「具合、悪そうだな」
「・・・・めっちゃ悪いです」
なんて阿呆な答えなんだろうと思う。
でもそれくらいしか答えられなかった。
だってまさかまさか、
何でこの人がここに。
・・・・・うちに。
「一応、見舞いに来た。寝てたか?」
「起きて、ました」
「そうか。飯は?」
「まだ、です」
「じゃあ薬は?」
「・・・・食後にと思って」
「ちょうどいい。うどんを買って来たんだ、インスタントだが」
老若男女に人気のシャンクス先輩。
・・・・え、何コレ。
幻?
「・・・・シャンクス先輩?」
「辛いだろう?寝てていいぞ」
「・・・・・えっと、何故うちに」
「アコが風邪で休んでるって聞いたんで来たんだ。1人暮らしだって前に言ってただろう?」
言ったっけ!?
「熱は?」
聞きながらシャンクス先輩のおでこが私のおでこにこつん。
ぎゃああああ!!!!
ファンクラブの方ごめんなさぁぁぁい!!!
「ひ・・・・っ」
「少しあるな」
「はひ・・・・・っ」
「寝てていい、今飯作る」
「いいいいい今お茶を!!」
お淹れします!!
「馬鹿言うな。何なら一緒に寝てやろうか?」
「な・・・・・・・・・・っ」
言葉が出てこない。
何だこのシチュエーションは!!
夢か!!
「ほら、寝とけ」
「あ・・・有難う御座います」
とりあえず言われるがまま布団に入って目を閉じた。
1,2,3で目を開く。
・・・・居る。
間違いなくシャンクス先輩が我が家の台所に立っている。
う・・・うどんに火をかけているぅぅ!!!
「・・・・先輩?」
「どうした?」
声をかければ振り返って笑顔をくれる。
「・・・・先輩、授業、は」
「気にするな、単位は間に合ってる」
「・・・・でも」
「ほら出来た。食えそうか?」
「あ、はい」
「薬はこれだな?」
「・・・・3錠も飲まなきゃいけないんですよ」
「・・・・アコ」
はっと我に返った。
子供みたいなこと言ったかな先輩呆れてるかな!?
「す、すみませ・・・・っごほっ」
「フルーツゼリーを買って来た」
「え!?美味しそう・・・・!」
某有名ケーキ店の美味しそうなフルーツゼリーが目の前に。
「飲んだら食べさせてやる。薬、飲めるな?」
「・・・・・・飲みます!」
「いい子だ」
優しく髪を撫でられて完全に固まった。
・・・・・・・熱、上がるかも。
「・・・美味しいです、うどん」
「そうか・・・良かった」
シャンクス先輩の目の前でうどんを完食。
「薬、飲みます」
「ん」
渡された薬を一錠ずつ口に入れて水で飲みほした。
「・・・・はあっ」
具合悪い時って薬飲むだけでも疲れる。
「病院には?」
「行ってないです・・・」
怒られると思いきや、
「それもそうか。これくらいなら行かないのが正解だろうな」
「・・・・・そうなんですか?」
「待たされるし、病院から病気をもらうこともある」
・・・・さっすが先輩。
「あとはお楽しみのコレだ」
「うわあ美味しそう・・・・!!」
フルーツゼリー!!
「フルーツにはビタミンもある。あとは身体温めて寝てりゃ良くなるさ」
「いただきます・・・・っ」
スプーンを手にした瞬間奪われた。
「え」
そんな殺生な、と開いた口に放り込まれた冷たくて甘くて美味しいゼリー。
「言っただろう?食べさせてやるって」
・・・・にっこり微笑まれて何も言えずただ口を開いた。
こんな幸せでいいのだろうか。
ていうかこれ現実?
「・・・・ごちそうさまでした」
ゼリーはあっという間になくなった。
「よし。あとはあっためて寝てりゃ良くなるだろう」
「有難う御座います・・・!」
嬉しくて泣きそうだ。
「一緒に寝てやろうか?」
「はひ!?」
「・・・寂しいだろう、こういう時は」
・・・・・わかっちゃうんだなぁ、この人には。
「・・・・・先輩が居てくれるから、寂しくないです」
「・・・・アコ」
「はい?」
先輩は私が横になったのを見届けて、
少し気まずさそうに笑った。
「こんな時に言うのは卑怯だとわかっちゃいるんだが・・・・」
「・・・・どうぞ?」
「好きだ」
躊躇なくあっさりと、そしてはっきりとシャンクス先輩が口にした言葉。
・・・・・・・・あ、やっぱこれ夢だ。
「・・・・・いい夢だなぁ」
「・・・・夢じゃねェんだが」
「いやいや、そんなはずは」
「・・・・夢なら覚めないでもらいたいもんだな」
「え」
シャンクス先輩はそう言うと、
私の唇にゆっくりと自分の唇を重ねた。
頭が爆発しそうになって、
意識が飛んだ。
目が覚めたらシャンクス先輩は居なくて、
やっぱ夢じゃん。
そう思った私の枕元には空になったゼリーのカップ。
・・・・・と、
『大学で待ってる』
のメモ。
・・・・・・・なんだこれは。
夢か、幻か。
それとも現実、か。