短編③
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
現在3月9日夜19時。
私は自分の部屋でベッドにうつぶせになっている。
私はこれからどうすればいいのか。
ああ、憎い。
今こんなに私を悩ませ苦しませているあの人が。
今日、誕生日の。
・・・・お頭が、憎い。
ことの起こりは数時間前。
「今日お頭誕生日ですね。何か欲しい物とかあります?」
朝ご飯を一緒に食べながら何気なく聞いた私の質問にお頭は、
「お前」
と即答した。
「おま・・・・・・私、ですか?」
困惑しながらもさらに聞き返すと、
「ああ、アコが欲しい」
にこりと微笑んだ。
「ど・・・・・どういう意味、ですか」
「そのまんまだ。他に意味なんてねェ」
「・・・・わた、し?」
それってつまり、それってつまり・・・・どういうこと!?
「今日夜23時」
「へ?」
「俺にアコをくれる気があるなら23時までに俺の部屋に来てくれ」
「・・・・23時」
「来なかったら潔く諦めるさ」
お頭はあっけらかんと笑って去って行った。
それから現在まで、悩みに悩んでる。
プレゼントは私ですぅ!
・・・・ってキャラじゃないんですけど。
でも他にこれといったプレゼントも用意してない。
さっきまでの宴は大いに盛り上がったし、
何なら今でも盛り上がってる。
・・・さっきちょっとお酌しに行ってみたけど普通に嬉しそうで。
このことに関しては一言も話題になってない、し。
・・・・どうしたらいいのかな。
そりゃあ行けばお頭は喜ぶだろうけど。
お頭はどういうつもり?
揶揄ってるだけ?
・・・・・には見えなかった。
・・・・私はお頭のこと、好き、だけど。
じゃあお頭は私に気持ちがあるの?
・・・・と考えて見てもわかる訳ない。
色々と考えてるうちに21時になってしまった。
タイムリミットはあと2時間。
ふと気づけば宴の席に今日の主役、
お頭の姿はない。
ヤソップさんにお頭は、と聞けば部屋に戻ったみたいだぜ、と返ってきた。
心臓がどくんと跳ねた。
・・・私は、どうしたらいい?
駄目?
覚悟決めてないのにお頭の部屋に行ったら。
・・・お頭、がっかりする、かな。
でもお頭の真意がわからない以上は。
これ以上考えても仕方ない!
女は度胸だ!
という訳で、
「失礼します」
軽くノックをして部屋に入るとお頭はベッドに座って1人盃を傾けていた。
「・・・随分と早かったな」
そして私を見て酷く驚いた顔をした。
「あ・・・えっと、違うんです・・・プレゼントは私、じゃなくて」
「その顔を見るに俺の方が喰われそうだな」
お頭は楽しそうにかっかっか、と笑った。
「・・・・プレゼント、したいのはやまやまなんですけど」
「けど?何か問題があるのか?」
「お頭の気持ちを知りたいです」
「愛してる。・・・そう言えばアコは手に入るか?」
・・・揶揄われてるのか、真剣なのか。
今のお頭の表情からは読み取れない。
「お生憎ですが、私は安い女ではありません」
「勿論だ。無理強いするつもりはないさ」
「・・・・でも私は今日この日を・・・お祝いしたいん、です」
これが私の心からの本音。
「その気持ちだけで十分だ」
ぽんぽん、と私の頭を軽く叩くお頭。
・・・胸が締め付けられる。
「お頭は・・・いいんですか?」
「ん?」
「プレゼントが・・・本当に私、で」
「言っただろう?アコがいいんだ」
この言葉を聞いてふぅ、と息を吐いた。
すると不思議と落ち着いて覚悟が決まった。
「いいですよ、私でいいなら」
「・・・・いいのか?」
「どうぞ」
隣に腰を降ろせば肩を抱き寄せられた。
「今日は格別にいい日だ」
「それなら何よりです」
「仲間に祝ってもらえて、酒は美味い。その上惚れてた女も側に居る。こんなに嬉しいことはない」
「側に居るだけで、いいんですか?」
「ああ、それでいい」
「・・・・欲ないですね」
海賊なのに。
あまつさえ四皇なのに。
・・・色々、覚悟してきたんだけど。
「日頃アコを独り占め出来ることはなかなかないからなァ」
「そうでしたっけ?」
「広い船とは言えこんだけ人数が居れば難しいだろう、アコも忙しそうだしな」
「まあ、やることもありますし」
「だが今この時間は・・・アコは俺のだ」
愛おしい、そんな目で見つめられて。
顔がゆっくりと近づいた。
静かに重なった唇はくっついてすぐに離れた。
「・・・側に居るだけで満足なのでは?」
「さあ、どうだったか」
舌の根も乾かぬうちに。
「・・・もう」
「すまん・・・つい、嬉しくてな」
なんて本当に嬉しそうに笑うから私もつい許してしまう。
それに今日は、
「いいですよ。お頭の誕生日だし」
「あと30分、か」
「え?」
「俺の誕生日の終了までだ」
「ああ・・・そうですね」
「それまでもっとアコを堪能しても?」
なんて何処か寂しそうにお頭が言うものだから、
「あら、私も欲張りだってご存知なかったんですかお頭」
「・・・ほう?」
今日が終わったら魔法が溶ける、だなんて海賊らしくもない。
「今日が終わっても私はお頭が欲しいです」
「だっはっは!そうだな、アコが俺のものなら俺はアコのものだ」
「勿論」
「・・・敵わねェなァ」
「・・・・シャンクス」
「ん」
「お誕生日、おめでとう御座います」
心から。
あなたに出会えて良かったと。
散々迷ったけど今ここに。
あなたの側に居られて良かったと思います。
だから今度はお祝いの気持ちを込めて私から。
ちゅ。