短編③
夢小説設定
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「エースー見張り交代来たよ」
今日の夜は私が見張り。
準備も完璧。
「おー」
「異常なし?」
「異常なし。つーか暇で寝るとこだった」
「ホントは?」
「・・・・・寝てた」
「あははっ、エースってばもう。お疲れ様」
「ん」
・・・・・と言いながらエースが見張り台から降りようとしないので、
どうしたんだろうと思いながらエースの視線を辿った。
「・・・・エース?」
「ん?」
「戻らないの?」
「・・・・・ん、ああ」
「・・・・・・・・・・食べたいの?これ」
夜食用に、って私が焼いたクッキーと、淹れたての珈琲。
明らかにそこにエースの視線が集中してるのがわかった。
「食いてェ」
「さっき私おやつ持って行ったよね?」
「あれも食ったぜ、美味かった」
嬉しそうに笑うエース可愛い・・・・じゃなくて。
「・・・いいよ、食べて」
「いいのか?」
「一緒に食べよ」
「頂きます」
90度の丁寧なお辞儀。
それからクッキーをぱくり。
「美味ェ」
それから満面の笑み。
それを見て私も一口。
「うん、我ながらいい出来」
「・・・・いい夜だなァ」
「だね。いい天気だし。星も綺麗。明日も晴れるねえ」
空を見上げてエースがしみじみと呟いたから、私も同じように空を見た。
確かに、いい夜。
おやつも美味しいし、平和だし。
・・・・・って、海賊にとったら暇なんだろうけど。
「・・・・今日でいいのかもな」
「え?」
エースがぽつりと何か口にしたんだけど、
小さすぎて何を言ったのかは聞こえなかった。
「いや、こっちの話しだ」
・・・・エースは何事もなかったかのように首を横に振った。
変なエース。
・・・・悩んでることがあるなら私に話してくれればいいのに。
「もうすぐ冬島だね」
「ああ、楽しみだな」
「・・・・何が?」
「飯が」
・・・・・だと思ったよ。
冬島の何をエースが楽しみにしてるのかと思ったら。
やっぱりねえ、エースはそうだよねえ。
「あったかいスープとか豊富そうだよね」
「鍋料理とかもあるみてェだぜ」
「へーそれは楽しみかも」
そんな話しをしながらも、クッキーをもぐもぐ。
珈琲をごくごく。
あっという間にクッキーも珈琲もなくなってしまった。
「・・・・はぁ、美味しかった」
「ご馳走様でした」
「いつも1人で見張りながら食べてたけど、2人で食べた方が美味しいね」
「これからは俺呼べよ?」
「そんなこと言ったら毎回私と一緒に見張りすることになるよ?」
「別に構わねェ」
「・・・・・・・・・エース」
「・・・食いモンのことしか考えてないなって思っただろアコ」
エースが呆れ顔で私の心を読んだ。
「あれ、バレた?」
「顔見りゃわかる。ったく失礼な奴だな」
「ごめんて。私としてはエースが居てくれた方が嬉しいし」
「・・・・それって、よ」
「誰か居てくれた方が楽しいし心強いし」
「・・・・俺じゃなくてもいいのかよ」
拗ねたように返して来たエースが可愛くて思わず笑いそうになったのを堪えた。
「勿論エースが1番嬉しい」
一緒に居て楽しいし。強いし。
何よりエースの美味しい、は私にとっての幸せでもある。
「・・・・そっか」
拗ねた顔から一転、子供のような笑顔。
・・・・好きだなぁ。
いつか告白出来たら、なんて思うけど。
今はまだこのままでいいかな。
・・・・・いつか。
「・・・・なぁアコ」
「ん?」
そんなエースが真剣な顔で私を見つめてきた。
ちょ・・・ちょっとドキドキする。
なんだろ。
エースの次の言葉に耳を澄まそうとしたら、
ごとん、と音がして少しだけ船が揺れた。
「何、今の・・・?」
不安になってエースの腕を掴んで周りを見渡す。
「何もねェな」
「・・・・でも今音、したよね?」
「よくあることだろ?」
「見張り当番としては見に行かないと!」
確認しないと、と降りようとしたらエースに腕をくい、と引っ張られた。
「特に気配もねェし・・・・大丈夫だと思うぜ」
「そ・・・・そう?」
「ったく危なっかしいな・・・1人で行こうとすんなよな、俺が居るのに」
「・・・うん、有難う」
エースの優しさが嬉しい。
お礼を言ったら、
「ひゃっ」
そのままエースの腕に閉じ込められた。
「なっ何エース!?」
「・・・・俺が居るだろ」
耳元でぼそりと囁かれてドキッとした。
「しっ知ってるよ!?」
「もっと俺を見ろ」
「み・・・・っ見ろって」
「もっと俺を頼れ」
「えーす・・・・っ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・好きだアコ」
低く甘い声に脳が融けるかと思った。
「う、そ」
「嘘じゃねェ。ずっと好きだった。俺が・・・ずっと守るから」
「わ・・・・・・・・・・・私も好き」
いつか言えたら。
そう思っていた私の気持ちは予想外に今日言えた。
後にエースに何であの日だったの?と聞いたら、
『いい夜だったから』
イケると思った、と笑ってた。
・・・・・・うん、確かにいい夜だった。