短編③
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
自慢じゃないけど・・・本当に自慢じゃないけど、
何だか最近外を歩いてると声をかけられることが多い気がする。
モテ期?
理由は、
美容師さんのモデルから、
道を聞かれたりただのナンパだったりと様々だけど。
でも笑っちゃったのは、
フランスパンのお兄さん・・・いや、おじさん?
「ねェ彼女俺とお茶しない?」
だって。
今時そんな漫画かドラマみたいなナンパの仕方する人いるんだぁ。
髪形フランスパンだし。
「・・・・緑茶ですか?」
「へ?」
「お茶、って。紅茶ですかウーロン茶ですか緑茶ですか?ほうじ茶玄米茶、紅茶にはそれこそたくさんの種類がありますが」
「・・・・・が?」
「お好みは?」
「お・・・お姉さんの好きなので」
「却下」
「却下!?」
「そんな曖昧な人とお茶なんか飲めません」
「うわっキビしー!!」
だはーっと崩れ落ちた彼の後ろから、
「ウーロン茶」
芯の通った声が聞こえた。
「え・・・・」
そこに居たのはくせっ気のある黒い髪。
そばかすの男の子。
「ウーロン茶、一緒に飲まねェ?」
その真っすぐな瞳に、吸い込まれた。
自然と開いた私の口から得た言葉は、
「・・・・飲みましょう」
だった。
何だか興味をそそられた。
「俺はエース」
と彼は言った。
エースは宣言通りウーロン茶を注文した。
私もウーロン茶。
「私はアコ・・・エースはウーロン茶好きなの?」
「好きっつーか・・・・」
「・・・・つーか?」
「他のあんまり知らねェんだ」
そう言って苦笑した姿には可愛いとさえ思った。
・・・・でも真面目そうでナンパなんかしそうにないイメージなんだけどな。
「あははっ、正直だね」
「おう、正直が取り柄だ」
「じゃあ正直なエース君。まずいくつ?」
「20歳」
「あ、同じ年」
「じゃあお互い学生、だな」
「だね。今日は休講?」
「そんなとこだ。・・・・時間、大丈夫か?」
「私も休講。大学何処?」
「白ひげ大学」
「え、一緒」
驚いた、年齢も通ってる大学も一緒なんて。
「・・・マジで?」
「マジだよ。うわー偶然」
「・・・あのさ」
「うん」
見れば見る程真面目そうに見えるなぁとしみじみ見つめていたら、
エースが思いつめた様子で急に立ち上がった。
「なっ・・・・何?」
「俺と付き合って下さい」
そして見事な90度の礼。
・・・そしては私は何故かまた、
「・・・・はい」
頷いてしまった。
正直出会いはナンパだったけど、
エースの印象は悪くないしむしろ可愛いとさえ思ってしまったので後悔はしてない。
・・・好きになれそうな予感が、した。
それから携帯の番号やらアドレスやらを交換して、
再会したのは大学で。
「あ・・・・」
さて帰ろうかと言う時に私の目の前に現れたエース。
「・・・一緒に帰らねェ?」
「・・・・帰る」
驚きながらもそう答えたらエースは嬉しそうに笑って、
「・・・・うし」
私の隣に並んだ。
それから、
「い・・・嫌だったり痛かったら・・・言ってくれ」
そっと、手を繋いだ。
不思議と嫌じゃなかったし、
優しい力と真っ赤なエースの顔はやっぱり可愛かった。
なんてことがあって、1年が過ぎた。
「所詮出会いはナンパでしょ?」
ナミがつまらなさそうに言う。
こっちは真剣なんだけどなぁ。
「・・・・ナンパ、かなぁ」
「何よ違うの?」
「ナンパしてきたおっさんに質問したらおっさんの後ろに居たエースがそれに答えて一緒にお茶することに」
・・・・そうなんだよね実際エースが直接声をかけてきた訳じゃない。
たまたまあそこにいただけなのかもしれない。
・・・・・でもさ。
「最近あんまり会えないし連絡もないし」
何か忙しそうだし。
すれ違ってるっていうか。
・・・・そんな感じで。
飽きられたかな、と思ってしまう。
・・・・・私は、日々を重ねるごとにエースを好きになって行ってしまった。
エースは真面目で優しくて、面白い。
弟思い過ぎるのがたまに傷だけどないがしろにするより全然いい。
「あんたがモテるから諦めたとか?」
「最近は全然ないよそんなの。ポケットティッシュさえもらえないんだから」
私のモテ期は、エースとの出会いで終わった。
「他にいい男なんてたくさんいるじゃない」
「・・・・・いるかもしれないけどさ」
・・・・・・その人が私を好きになってくれるとも思えないし、
何より私がその人を好きになるとも思えない。
「携帯」
「え?」
ナミが私のカバンを指さした。
「鳴ってるわよ、例の彼氏からじゃないの?」
「あ・・・メール」
エースからのメール。
「・・・今から会えないかって」
「あら良かったじゃない。そうと決まればさっさと行く!」
「う・・・・うん」
・・・・・別れ話じゃないといいけど。
指定された喫茶店に行くと、エースが待ってた。
飲んでるのはウーロン茶。
私も同じものを注文して席に座った。
「お待たせ、エース」
「悪ィな急に呼び出して」
「ううん、平気」
「これ、土産。早く渡したくてよ」
「・・・・どっか行ってたの?」
とりあえず別れ話じゃなかったことにはほっとしたけど、エースがご機嫌で私に差し出した紙袋。
・・・お土産、って。旅行?
「言ってなかったか?2泊3日で京都」
「・・・誰と?」
「ルフィがどうしてもにしん蕎麦が食いてェって言うから行ってきたんだ、土産、八つ橋な」
「あ、ありがと」
・・・・まあね、食べ物の為に行っちゃうような人たちだよ。
「どうした?」
「え?」
「何か元気ないように見えるぜ?」
・・・・エースは私が浮気を疑ってたり別れを切り出されるかもって不安になってるなんて思わないんだろうな。
エースのこと信じたい。
信じる・・・・けど!
思い切って聞いてみようか。
・・・・ざっくりと。
「・・・最近あんまり連絡とかしてなかったし、会えなかったから」
「そうだったか?」
・・・・きょとん、とした反応のエースに今決めたばかりの心が揺らぐ。
寂しいって、会いたいって思ってたのは私だけ?
・・・所詮ただのナンパだったの?
「最近ちょっと考え事してたんだ、悪ィ」
「・・・そっか」
・・・誰のこと考えてたの?
聞けない言葉に思わず俯いたら、
大きな手がぽん、と頭に乗った。
「あんま1人で考えんなよ。俺が居るだろ」
「・・・美味しいねウーロン茶」
私とエースの出会いのきっかけになった、ウーロン茶。
「そんなことより京都でよ」
なのにエースはそんなこと、と言ったので頭にきた。
「っエースにとってはそんなことかもしれないけど・・・っただのナンパたっだかもしれないけど!!」
私には大事な思い出なんだよ。
・・・馬鹿野郎。
思わず叫んだらエースが悲しそうな顔をした。
「・・・・ただのナンパじゃねェよ。つーかあんな出会いにするつもりじゃなかったんだ」
「・・・・・え、どういう」
「サッチがナンパしてアコが困ってるとこを俺が助けるって予定だったんだぜホントは」
「・・・・・さっち?」
「フランスパン」
「えええええ!?何それ初耳」
あの古風なナンパの仕方してきたおっさん!?
「・・・最初に会ったのは本屋。急に雨降って来て雨宿りしてた俺とルフィに傘貸してくれた時だ」
「そ・・・・・」
そんなことがあったような気もする!
私家近いし安物の傘だからあげちゃえ、って。
「そん時一目惚れしてっからナンパじゃねェ。同じ大学だったとは思わなかったけど」
「嘘ぉ・・・・」
「嘘じゃねェよ。・・・・だから、これ」
これ、と言ってエースが差し出した紙袋。
「あ・・・開けていい?」
「ん」
エースの了承を得て開封したら、
虹色のペンダント。
「綺麗・・・・」
「もうすぐ1年だろ?だから何かねェかずっと考えてて京都でいいもん見つけたんだ」
京都オパールっていうんだぜ、とエースが笑った。
「わ・・・私何も用意してな、」
もうすぐ1年かあなんてのんびり思ってただけで。
「いらねぇよ。・・・俺とウーロン茶飲んでくれるだけでいい」
「エース・・・・・・」
「もう他の奴には渡せねェ。・・・ナンパされたら言えよ」
そいつぶん殴ってやるから。
「エースこそ。ナンパされたら言ってよ」
私が負けじとナンパしてみせるから。
そこの素敵なエース君、
私と一緒にウーロン茶飲まない?って。