短編③
夢小説設定
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「金縛り?」
「そうなの。怖いのよ」
「金縛りってぇと、動けなくなるやつか?」
「それがね、私は幻聴とか幻覚とかなんだよね」
会社の同僚、シャンクスと営業周り真っ最中。
車の中での会話。
シャンクスは会社の中でも優秀で、
私は会社の中でも下の方。
サボってるんじゃないかというあらぬ疑いをかけられて今日はシャンクスが同行。
・・・・まったく失礼な、
サボってなんかいない。
ただ営業が下手なだけだ!
で、車の中での会話のネタに最近の私を差し出したという訳で。
「金縛りの原因と言やァ疲れ、だったか」
「・・・・疲れてるのかな私」
そうかもしれない。
深刻に呟いた私にシャンクスは、
「成績が上の方ならそれもわかるんだがな」
とケラケラと笑った。
「・・・・別にサボってる訳じゃないんだけど」
「わかってるさ。下手なだけだろ?客に丸め込まれて終わる」
「・・・・ですよ」
「要は営業に向いてねェんだなアコは」
「・・・かもね」
「まずは優しさを捨てることだ」
運転しながら真面目に語るシャンクスはまるで、
「その言い方だとまるで私が優しい人間みたいだね」
と思った。
「実際そうだろう?いらないだろうモンを売りつけられねェんだ」
「だっていらないって言ってる人に説明したって買ってはくれないじゃん」
「本当に必要ないのかを探ればいい」
「・・・・それがすんなり出来たら今頃シャンクスと一緒になんか居ないよ」
「まあそう言うな。もうすぐ着く」
「・・・・きっと今夜も幻覚か幻聴に襲われるんだ」
寝るのが怖い、そう思える程。
「そんなに怖いか?」
「だってリアルなんだもん」
「幻聴ってのは何て言ってるんだ?」
「ほぼ聞こえない。聞こえた時もあったけど忘れた」
「幻覚は?」
「扉のとこから女の人が覗いてたり」
「・・・・重症だな」
苦笑してシャンクスは、それから少しの沈黙。
ああ、もうすぐ今日のお客様のところだからか。
あのビル、だったよね。
憂鬱ではあるけど今日はシャンクスが居てくれるから正直心強いし、
学ばせてもらおう。駄目モトで。
そう思っていたのに。
「・・・・え、シャンクス?」
シャンクスはビルを通り過ぎた。
「予定変更だ」
「は?」
驚いた私にシャンクスはにィ、と不敵な笑みを見せた。
「大事な同僚を救うことが先決だ。今日は俺とデートだ」
「はぁ!?」
「この時間だ、とりあえず飯でも行くか」
「いや仕事は!?」
「実はな・・・今日の仕事先は」
「・・・・先、は?」
「アポを取ってない」
「えええええ!?」
平然ととんでもないことを言ったよこの人!!
まさかのアポ取ってなかったの!?
「そっそんなんで良く・・・・!」
行く気満々でしたね!?
「突然行った方が相手は心の準備が出来てない」
「そりゃそうでしょう」
「隙だらけだ、その隙をつく」
「うっわ」
「実はこの商品を見た時真っ先に貴社を思い出し、すぐにでも提案しなければと」
「・・・・そう言うのね?」
「そういうことだ」
私にはとてもじゃないけどマネできない。
「でも突然行って相手に予定がある時だってあるでしょう?」
「勿論待つさ」
「何時間かかるかわからなくても?」
「待たせたぶんだけ罪悪感が相手に募るな」
「・・・・おお怖い」
シャンクスは敵に回したくない人だ。
「だから今行かなくても問題はない。それに1回や2回で取引成立するものでもないしな」
「・・・じゃあシャンクス怒られない?」
恐る恐る聞いたらこつん、と額を小突かれた。
「そう言う優しさが金縛りを引き起こすんだ。今日俺と居る時くらいは我が儘でいい」
「・・・じゃあお寿司食べたい」
私のリクエストで回転寿司ランチ。
「はぁー美味しい・・・・」
「たまにはいいな、寿司も」
「ってかシャンクスよく食べるね・・・」
14皿。
私は9皿。
「成績を上げるコツはよく食うことでもある。糖分取らないと頭も回らないだろ?」
「おお・・・さすが」
「それと今のアコに必要なのはストレス発散だな。食欲が満たされたら物欲を満たすってのはどうだ?」
「買い物!したい!」
今までもらったお給料で!
「見てこの超絶美味しそうなパフェっ」
「ああ、美味そうだ」
インデパ地下。
ここのケーキもあそこのお菓子も美味しそう!!
「じゅるり・・・・」
「女の買い物と言えば服とかアクセサリーだと思ったんだが」
シャンクスが楽しそうに笑う。
「糖分が大事なんだもん、糖分の買いだめ」
「なるほど」
あそこのあれとこの店のこれとこれーと、ケーキだけでもそこそこ買い物をした。
ああ、買い物って楽しい。
「次服見たいんだけどいい?」
「ああ、勿論だ」
・・・はた、と気づいた。
「ごめんシャンクスケーキっ」
気が付いたら全部持たせてた。
「気にするな。それより服に行くんだろう?」
「・・・・うん、ありがと」
エスカレーターに乗る時さり気に腰に添えられた手とか、
服見てる時にも、
「それはアコには合わない」
ときっぱり言ってくれるところとか、
それでも「それは最高に似合ってる」
と褒めてくれる時はべた褒めしてくれるとことか。
・・・・・・・好きになりそうだ。
シャンクスが最高に似合ってる、と言ってくれたワンピースを買って次はどうしようといったところに、
「あ」
・・・・・最高に可愛い靴を見つけてしまった。
大きめのジュエルとピンクのリボンがついた、ヒールの高い・・・・お値段も高い靴。
目を、奪われた。
「欲しいのか?」
「・・・・や、さすがにこれは。お値段が」
「俺が買ってやる」
「何言っ・・・・ヒールだって高いし絶対転ぶから」
だからいいよ、と言ったら。
「転ぶ前に俺が支えれば問題ないな?むしろずっと手を繋いでいればいい」
「そ・・・・・」
「さっき買ったワンピースとも合うだろう。これで今度俺とデートしてくれりゃいい」
「・・・・・正気?」
「アコが俺のことを好きになってくれるならもっといい」
「・・・・・・・もう好きですよ」
なるほど、さすが営業NO.1
「もう金縛りなんかあわせねェ」
それから見る夢は、
素敵なワンピースとあの靴を履いた私が、
シャンクスと腕を組んでデートする夢ばかり。
で御座いました。