短編③
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「出張?」
「ああ、急に決まって・・・明後日から1週間の予定だ」
「わかった、準備しておくね」
「いや、大丈夫だ。自分でやるよ」
「・・・気を付けて、行ってきて」
同棲中の恋人、シャンクスが出張に行くらしい。
1週間、この家にシャンクスが居ないのかあ。
寂しいけど・・・仕事なら仕方ない。
「戸締りはしっかり頼む。それから不用意にドアを開けたりしないこと」
「はいはい、大丈夫よ」
「・・・・すまん」
シャンクスは優しく私の髪を撫でて、
申し訳なさそうに呟く。
「ううん、頑張ってね」
なるべくシャンクスに気にさせないようにと笑顔を作ったら、
ちゅ、と軽いキスが降りて来た。
・・・大丈夫、1週間なんてきっとあっという間。
急な出張が決まった。
仕方がないこととはいえ、アコのことを考えると気が重い。
アコは大丈夫、と言ってくれたが。
寂しい思いをさせちまうな。
「何かあったらいつでも連絡してくれ」
「シャンクスもね。ちゃんとご飯食べて、お酒ばっかり飲まないでね」
「・・・アコの手料理が食べられないのは辛い」
「帰ってきたらいっぱい食べさせてあげる」
「楽しみにしてる。・・・行って来る」
「行ってらっしゃい」
・・・いいホテルとっておいたぞ、と言われたが。
俺にとってアコがいる場所よりいい所なんてない。
あー帰りてェなァ・・・アコの居る家に。
まだ出たばかりだってのに、
笑顔で見送ってくれたアコが脳裏に焼き付いて離れない。
出張先でアコにお土産たっくさん買って帰らないとな・・・と思いながら、
電車に乗り込んだ。
行っちゃった、とばたんと閉まったドアを見て思う。
・・・行かないで、なんて言える訳もないし。
1週間だけだし。
洗濯は済ませたし、あとは食器の片づけをして・・・お昼食べたら夕飯の買い物に行かないと。
シャンクス今日何食べたいかな、なんてふと頭に浮かんで、首を横に振った。
・・・今日からシャンクスの夕飯いらないんだった。
1人、かあ。
それなら適当に・・・お弁当でも買って食べようかしら。
なんてシャンクスの居ない寂しさを感じたけど、
こんなのまだ序章に過ぎなかった。
シャンクスの帰って来ない家にいる時間。
いつもならまだかな、そろそろかなと時計を見ながら心待ちにしているものだけど。
今日はいくら待っても帰ってこない。
・・・・それが、心にぽっかり穴が開いたよう。
1人で食べる食事も。
スーパーで買って食べたお弁当も何だか味気ない気がして。
シャンクスも今頃夕飯かな。
お酒飲み過ぎてないといいけど。
本当は連絡もしたいし声も聴きたい、けど。
・・・・忙しいかもしれないし。
1日目だもん、我慢。
確かにいいホテルではある。
部屋も広く、ベッドも上質。
サービスも接客も申し分ない。
・・・・ここにアコがいないことを除けば、だが。
部屋でも仕事が入ったこともあって、
気が付けば日付が変わる寸前。
・・・アコに連絡の1つでも入れたいところだが、もう寝てるかもしれねェな。
まあ、1週間ある。
出来ればアコからの連絡が欲しいという思いもあって、その日はすぐに就寝した。
・・・・・が、俺の仕事が順調であるのと反比例して、
アコからの連絡はなかった。
もう4日目だ。
変わりないか?とこちらから連絡すれば大丈夫、と返っては来る。
・・・・が、アコからの連絡は一切ない。
急に決まった出張に怒ってるのか?
それとも浮気を疑っているのか。
・・・アコの居ない時間が、こんなにも辛いとはな。
早く家に帰りたい。
結局アコからの連絡はないまま、
出張は終わった。
土産はたくさん買った・・・・が。
気に入ってくれるだろうか。
実は怒ってるんじゃないか?
・・・家に帰ったら荷物ごといなくなってたら?
不安を抱えたまま、
「アコ、ただいま・・・」
恐る恐るドアを開けると部屋には明かりがついていて、
「シャンクス!?」
駆け寄ってきてくれて、
「ああ、アコ・・・・っと」
アコの姿が見えて安心した瞬間、
アコが俺の腕の中に飛び込んで来た。
「おかえりなさい・・・・っ」
小さく呟いたアコの頬に流れた涙が見えた。
・・・・ああ、そうか。
俺の仕事の邪魔にならないように連絡を控えてくれてたんだな。
・・・本当に、愛おしい。
「寂しい思いをさせちまったな」
「うん、寂しかった」
「俺もだ」
それから深い口づけを交わすと、
「ご飯の支度がね・・・1人分なの」
アコが寂しそうに話し出した。
「美味いの食べたか?」
「お弁当買って来たり作ったりしたけど・・・美味しくなかった。後片付けも1人分」
「そう・・・だな」
「洗濯物もそう。全部が1人分なの。・・・シャンクスの存在ってこんなに大きかったんだなあって」
「・・・俺もだよ、アコ」
ホテルの食事、レストラン、何処の食事も決して不味くはなかったが、
思い出すのはアコの味だった。
1人で食ってる時、目の前にアコの笑顔がないこと。
夜寝る時におやすみ、と言ってくれるアコがいないこと、
朝起きて抱き寄せられるアコがいないこと。
行ってらっしゃい、と見送ってくれる笑顔がないこと。
他にもたくさんあった。
「俺にはアコがいないと駄目みてェだ」
「とにかく無事に帰ってきてくれて嬉しい。今日は腕によりをかけたの、食べて」
テーブルに並べられたシーザーサラダと、
唐揚げと・・・もつ煮込み。
全部アコの手作り、か。
「よし、じゃあ食わせてくれ。ん」
「へ」
「約束しただろう?食わせてくれると」
「・・・・・はい、あーん」
「ああ・・・・最高に美味いよ」
久しぶりのアコの味だ。
「美味しいって食べてくれるシャンクスが居るって幸せ」
「・・・勿論このあとは、アコの存在をしっかり確かめさせてくれるんだな?」
「疲れてるでしょ?」
「アコに会えなかった時の方が疲れたさ。・・・癒してくれるんだろう?」
「・・・・はいはい」
(離れたことで、お互いの大切さを思い知りました)