短編③
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そこは、お酒とピアノの音色を楽しむ場所。
私の息抜きの場所。
「キールを」
「かしこまりました」
その日キールロワイヤルを注文したのはたまたま。
「お待たせいたしました」
出されたグラスを彩る赤。
頂きます、と呟いて口にしたら、
「失礼」
隣に座った男性に目が行った。
・・・今口にした液体と同じ色の、赤い髪。
「マティーニを」
私の隣に座った男性はそう言って、私を見た。
「この店には、よく?」
「・・・ええ、まあ」
「初めてなんだが・・・おススメがあれば聞きたい」
「・・・キールロワイヤル」
「なるほど、参考にさせてもらおう」
「貴方の髪と同じ色。勿論味も保障するわ」
「それは楽しみだ」
たまたま自分の飲んでいるものと同じ色の髪を持つ彼に興味を持った。
「・・・・この曲、何だったかしら」
ぽつりと呟けば、
「ケニードリューのアナスタシア、だな」
「・・・詳しいのね」
驚いた。
答えが返ってくるなんて。
「酒と女だけを目当てにこういう店に来る訳じゃないさ」
「あら、あなたのような色男ならよりどりみどりじゃなくって?」
「とんでもない、こんな酔っぱらいじゃ相手にはされねェのさ」
「私で良ければ話し相手くらいにはなってさしあげましてよ?」
「断る理由はないな」
目が合って2人で微笑んで、
「私はアコ」
「俺はシャンクスだ」
お互いに自己紹介。
それから2人で他愛もないことを話して、
シャンクスは2杯目には私のおススメのキールロワイヤルを注文した。
「トリッパのトマト煮込みもおススメよ?」
「随分と赤を推されるな」
「貴方の髪が綺麗だから」
「この髪で良かったと今心底思ったよ」
「せっかくなら今度赤い服を着て来て」
「それでまたアコに会えるなら着て来よう」
「・・・会えたらいいわね」
「期待しておく」
なんて、ただの社交辞令。
それでもその夜はとても楽しかったし、
また会えたらいいなと思った。
・・・・期待を、しては駄目なのに。
私はあのお店に行く度に赤い髪を探してしまうようになった。
「また会ったな」
初めて見た時は澄ました顔のクールな美人だと思ったが、
笑った顔は花が咲いたようだと思った。
店に入って来たアコは俺を見つけて驚いた顔をした。
「赤・・・・のネクタイ、ね」
「ああ、願掛けだ」
「これも?」
「勿論」
「じゃあ私も同じもの。キールロワイヤルを」
「2人の再開に乾杯」
2人でグラスを合わせて、
2人でキールロワイヤルを口に。
流れるジャズに耳を傾けて、
「綺麗な指だな」
たまに会話を楽しむ。
「昔ピアノを習ってたの」
「聞いてみたいな、アコの弾く音色」
「・・・機会があれば演奏してみたいわね」
「アコの好きな曲は?」
「・・・・笑わないって約束してくれる?」
「・・・約束しよう」
「星に願いを」
これを口にすると皆子供みたいだね、と笑うのだけど。
そう言って恥ずかしそうに笑ったアコが可愛かった。
「ああ・・・俺も好きだ」
「素敵な曲だと思うの」
「老若男女関係なく知ってる名曲じゃないか」
「初めてピアノで弾いた曲だったのよ、思い出もあって・・・好きなの」
「今でも弾けるのか?」
「ええ」
「いつか聞かせてくれ」
「・・・ええ、いつかね」
それから、毎週金曜日。
どちらから言い出した訳でもないのに、
自然と店でアコと会うようになっていた。
アコの細くて長い綺麗な指に指輪が見えないのをいいことに、
「飲み過ぎたんじゃないか?送って行こう」
「平気」
「・・・あまり酔った姿を俺に見せない方がいい」
「こんなの酔ったうちに入らないわ」
「・・・すまないが、彼女にシンデレラを」
・・・口説いちゃいるが、なかなかままならねェ。
「シンデレラ・・・・?」
「どうぞ、プリンセス」
アコは一口飲んでから、くすりと笑った。
「ノンアルコール、って訳ね」
そっとカウンターに置かれたアコの手に自分の手を重ねた。
「俺がプリンスじゃ不服か?」
「・・・・そうね、飲み過ぎたみたい」
帰るわ、と立ち上がった彼女に、
「送らせてくれないか?心配なんだ」
と声をかけるも頑なに拒否されてしまった。
「心配し過ぎ。・・・今日も楽しかったわ、それじゃあ」
「・・・・気を付けて」
こうなれば勝負に出るしかなさそうだ。
重なり合った手が熱い。
・・・・指輪、しておけば良かったと今更後悔しても遅いのに。
左手の薬指。
・・・・あの人を、裏切る訳にはいかない。
「珍しいのね」
そう言ったのはシャンクスが飲んでいたのがキールじゃなかったから。
「これを、アコに」
すっと差し出されたそれは、
「・・・これは?」
赤いカクテル。
「キャロルだ」
「へえ・・・・」
「アコ知ってるか?カクテルには意味がある」
「少しは知ってるけど・・・」
「キャロルの意味は・・・この思いを君に捧げる、だ」
「・・・・シャンクス?」
「愛してるんだ、アコ。結婚を前提に俺と付き合ってくれないか?」
心臓が、止まった気がした。
「・・・そっ・・・・わ・・・・・たし、は」
私だって本当はシャンクスが好き。
・・・・・でも私は、シャンクスとは付き合えない。
ましてや結婚なんて。
・・・出来る筈がない、だって私はもう。
結婚してるんだもの。
でも・・・好きなのに、嫌なんて・・・っ!!
「・・・ゆっくりでいいさ、考えて欲しい」
「・・・・ええ、有難う」
その日はそれだけ絞り出すのが精一杯で。
それでもシャンクスの優しさに甘えて。
変わらずこのお店でシャンクスに会っていた。
「キールの意味は最高の巡り合い、だそうだ」
「・・・あの日キールを注文したのはたまたまだったんだけど」
「偶然が重なると運命になる。あの日俺がこの店に引き寄せられたのも運命だったって訳だ」
「ふふっ、それで口説いてるつもり?」
「先に口説かれたのは俺だと思ってる」
「え?」
「髪が綺麗だ、っていうのは立派な口説き文句だ」
「・・・・そうね、そうかもしれないわ」
あれから色好い返事はもらえてねェが、
感触としては悪くないと思っていた。
「アコ?」
彼女の名前を呼ぶ男が、現れるまでは。
「・・・知り合いか?」
「・・・・主人よ」
「・・・・・・・そう、か」
・・・・結婚、していたのか。
「最近何処かに行っていると思ったらこんなところにいたのか・・・帰るぞ」
「でも、」
「でもじゃない。・・・どなたか存じませんが妻がお世話になりました、失礼します」
じろりと睨まれ、アコは俯いたまま軽い会釈を残して店から出て行った。
・・・・・確かに、独身とは言ってなかったな。
・・・・・・・参った。
「もうあの店に行くのは禁止だ」
「・・・どうしても?」
「浮気じゃないなら平気だろう?」
「・・・・ええ」
・・・・家庭のストレスから逃れられる、
たった1つの居場所でさえ。
あなたは奪うのね。
全てを私から奪って奪って。
・・・・私には、もう。
お店に行かなければシャンクスに会うことはない。
・・・・今更、会ったところで話すこともないわ。
怒られるだけね。
何で今まで言わなかったんだ、騙してたのか、って。
このまま諦めるのが1番。
・・・・わかってる、わかってるけど。
・・・・・・会いたい。
ふと見上げた空は星が綺麗で。
・・・・・どうか、願いが叶うなら。
彼に会いたい。もう1度だけで、いいから。
ああ、駄目。急いで帰らないとあの人に怒られてしまう。
「アコ?」
「え・・・・・」
もうあの店に行ってもアコに会えなくなった。
ある意味では当然の状況だな。
仕方ない、と自分に言い聞かせつつ仕事を終わらせ帰り道。
切なげに夜空を見上げるアコを見つけた。
・・・星に願いを、か。
「アコ?」
「え・・・・・」
「久しぶり、だな」
・・・ちょうどいい、これで思いを断ち切ろう。
これが最後だ。
「・・・この間は、ごめんなさい。もうあのお店には行けないから」
「いや、旦那が居れば当然だ、今まで楽しい時間を有難う」
それじゃあ元気で、と立ち去ろうとした瞬間だった。
腕をぐい、と引っ張られた。
「貴方の気持ちを弄んでた訳じゃ、なかったの・・・これだけは、信じて・・・っ」
「・・・・アコ」
「シャンクスのことが好きなの・・・好きだから、言えなかった・・・・っ」
ごめんなさい、と涙を流すアコを思わず抱きしめた。
「俺はまだ・・・アコを好きでいてもいいのか・・・?」
「・・・好きで、いてくれるの?」
「アコの本当の気持ちが知りたいんだ」
「・・・好き」
想いが溢れて泊まらなかった。
あの人は私から仕事を奪い、家族を奪い、
私の心のよりどころも、
好きな人も奪った。
・・・・シャンクスを、愛しているの。
そう伝えたら、わかった、あとは任せてくれとシャンクスが言った。
それから数日後、
まさかのあの人が浮気していることが判明した。
しかも相手を妊娠までさせたらしい。
「慰謝料取って離婚、だな」
「・・・納得するかしらあの人が」
「何、心配ない。俺が全部何とかする」
「え」
「言ってなかったか?」
俺は弁護士なんだ。
とシャンクスが笑って、
更に1ヵ月後無事に離婚が成立。
1週間後、
久しぶりに行ったあのお店。
変わってない、と嬉しくなって席に着いたら、
目の前に見慣れた赤いカクテル。
「まだ頼んでないわ」
「あちらのお客様からです」
・・・少し離れた席に、カクテルと同じ赤い色。
「改めてアコ。俺と結婚を前提に付き合って欲しい」
「・・・・はい、喜んで」
実はずっと私たちのことを見守ってくれていたらしいマスターが、
お祝いに、と私にお店でピアノを弾かせてくれた。
弾く曲は、
星に願いを。
そこは、お酒とピアノの音色を楽しむ場所。
私の息抜きの場所。
「キールを」
「かしこまりました」
その日キールロワイヤルを注文したのはたまたま。
「お待たせいたしました」
出されたグラスを彩る赤。
頂きます、と呟いて口にしたら、
「失礼」
隣に座った男性に目が行った。
・・・今口にした液体と同じ色の、赤い髪。
「マティーニを」
私の隣に座った男性はそう言って、私を見た。
「この店には、よく?」
「・・・ええ、まあ」
「初めてなんだが・・・おススメがあれば聞きたい」
「・・・キールロワイヤル」
「なるほど、参考にさせてもらおう」
「貴方の髪と同じ色。勿論味も保障するわ」
「それは楽しみだ」
たまたま自分の飲んでいるものと同じ色の髪を持つ彼に興味を持った。
「・・・・この曲、何だったかしら」
ぽつりと呟けば、
「ケニードリューのアナスタシア、だな」
「・・・詳しいのね」
驚いた。
答えが返ってくるなんて。
「酒と女だけを目当てにこういう店に来る訳じゃないさ」
「あら、あなたのような色男ならよりどりみどりじゃなくって?」
「とんでもない、こんな酔っぱらいじゃ相手にはされねェのさ」
「私で良ければ話し相手くらいにはなってさしあげましてよ?」
「断る理由はないな」
目が合って2人で微笑んで、
「私はアコ」
「俺はシャンクスだ」
お互いに自己紹介。
それから2人で他愛もないことを話して、
シャンクスは2杯目には私のおススメのキールロワイヤルを注文した。
「トリッパのトマト煮込みもおススメよ?」
「随分と赤を推されるな」
「貴方の髪が綺麗だから」
「この髪で良かったと今心底思ったよ」
「せっかくなら今度赤い服を着て来て」
「それでまたアコに会えるなら着て来よう」
「・・・会えたらいいわね」
「期待しておく」
なんて、ただの社交辞令。
それでもその夜はとても楽しかったし、
また会えたらいいなと思った。
・・・・期待を、しては駄目なのに。
私はあのお店に行く度に赤い髪を探してしまうようになった。
「また会ったな」
初めて見た時は澄ました顔のクールな美人だと思ったが、
笑った顔は花が咲いたようだと思った。
店に入って来たアコは俺を見つけて驚いた顔をした。
「赤・・・・のネクタイ、ね」
「ああ、願掛けだ」
「これも?」
「勿論」
「じゃあ私も同じもの。キールロワイヤルを」
「2人の再開に乾杯」
2人でグラスを合わせて、
2人でキールロワイヤルを口に。
流れるジャズに耳を傾けて、
「綺麗な指だな」
たまに会話を楽しむ。
「昔ピアノを習ってたの」
「聞いてみたいな、アコの弾く音色」
「・・・機会があれば演奏してみたいわね」
「アコの好きな曲は?」
「・・・・笑わないって約束してくれる?」
「・・・約束しよう」
「星に願いを」
これを口にすると皆子供みたいだね、と笑うのだけど。
そう言って恥ずかしそうに笑ったアコが可愛かった。
「ああ・・・俺も好きだ」
「素敵な曲だと思うの」
「老若男女関係なく知ってる名曲じゃないか」
「初めてピアノで弾いた曲だったのよ、思い出もあって・・・好きなの」
「今でも弾けるのか?」
「ええ」
「いつか聞かせてくれ」
「・・・ええ、いつかね」
それから、毎週金曜日。
どちらから言い出した訳でもないのに、
自然と店でアコと会うようになっていた。
アコの細くて長い綺麗な指に指輪が見えないのをいいことに、
「飲み過ぎたんじゃないか?送って行こう」
「平気」
「・・・あまり酔った姿を俺に見せない方がいい」
「こんなの酔ったうちに入らないわ」
「・・・すまないが、彼女にシンデレラを」
・・・口説いちゃいるが、なかなかままならねェ。
「シンデレラ・・・・?」
「どうぞ、プリンセス」
アコは一口飲んでから、くすりと笑った。
「ノンアルコール、って訳ね」
そっとカウンターに置かれたアコの手に自分の手を重ねた。
「俺がプリンスじゃ不服か?」
「・・・・そうね、飲み過ぎたみたい」
帰るわ、と立ち上がった彼女に、
「送らせてくれないか?心配なんだ」
と声をかけるも頑なに拒否されてしまった。
「心配し過ぎ。・・・今日も楽しかったわ、それじゃあ」
「・・・・気を付けて」
こうなれば勝負に出るしかなさそうだ。
重なり合った手が熱い。
・・・・指輪、しておけば良かったと今更後悔しても遅いのに。
左手の薬指。
・・・・あの人を、裏切る訳にはいかない。
「珍しいのね」
そう言ったのはシャンクスが飲んでいたのがキールじゃなかったから。
「これを、アコに」
すっと差し出されたそれは、
「・・・これは?」
赤いカクテル。
「キャロルだ」
「へえ・・・・」
「アコ知ってるか?カクテルには意味がある」
「少しは知ってるけど・・・」
「キャロルの意味は・・・この思いを君に捧げる、だ」
「・・・・シャンクス?」
「愛してるんだ、アコ。結婚を前提に俺と付き合ってくれないか?」
心臓が、止まった気がした。
「・・・そっ・・・・わ・・・・・たし、は」
私だって本当はシャンクスが好き。
・・・・・でも私は、シャンクスとは付き合えない。
ましてや結婚なんて。
・・・出来る筈がない、だって私はもう。
結婚してるんだもの。
でも・・・好きなのに、嫌なんて・・・っ!!
「・・・ゆっくりでいいさ、考えて欲しい」
「・・・・ええ、有難う」
その日はそれだけ絞り出すのが精一杯で。
それでもシャンクスの優しさに甘えて。
変わらずこのお店でシャンクスに会っていた。
「キールの意味は最高の巡り合い、だそうだ」
「・・・あの日キールを注文したのはたまたまだったんだけど」
「偶然が重なると運命になる。あの日俺がこの店に引き寄せられたのも運命だったって訳だ」
「ふふっ、それで口説いてるつもり?」
「先に口説かれたのは俺だと思ってる」
「え?」
「髪が綺麗だ、っていうのは立派な口説き文句だ」
「・・・・そうね、そうかもしれないわ」
あれから色好い返事はもらえてねェが、
感触としては悪くないと思っていた。
「アコ?」
彼女の名前を呼ぶ男が、現れるまでは。
「・・・知り合いか?」
「・・・・主人よ」
「・・・・・・・そう、か」
・・・・結婚、していたのか。
「最近何処かに行っていると思ったらこんなところにいたのか・・・帰るぞ」
「でも、」
「でもじゃない。・・・どなたか存じませんが妻がお世話になりました、失礼します」
じろりと睨まれ、アコは俯いたまま軽い会釈を残して店から出て行った。
・・・・・確かに、独身とは言ってなかったな。
・・・・・・・参った。
「もうあの店に行くのは禁止だ」
「・・・どうしても?」
「浮気じゃないなら平気だろう?」
「・・・・ええ」
・・・・家庭のストレスから逃れられる、
たった1つの居場所でさえ。
あなたは奪うのね。
全てを私から奪って奪って。
・・・・私には、もう。
お店に行かなければシャンクスに会うことはない。
・・・・今更、会ったところで話すこともないわ。
怒られるだけね。
何で今まで言わなかったんだ、騙してたのか、って。
このまま諦めるのが1番。
・・・・わかってる、わかってるけど。
・・・・・・会いたい。
ふと見上げた空は星が綺麗で。
・・・・・どうか、願いが叶うなら。
彼に会いたい。もう1度だけで、いいから。
ああ、駄目。急いで帰らないとあの人に怒られてしまう。
「アコ?」
「え・・・・・」
もうあの店に行ってもアコに会えなくなった。
ある意味では当然の状況だな。
仕方ない、と自分に言い聞かせつつ仕事を終わらせ帰り道。
切なげに夜空を見上げるアコを見つけた。
・・・星に願いを、か。
「アコ?」
「え・・・・・」
「久しぶり、だな」
・・・ちょうどいい、これで思いを断ち切ろう。
これが最後だ。
「・・・この間は、ごめんなさい。もうあのお店には行けないから」
「いや、旦那が居れば当然だ、今まで楽しい時間を有難う」
それじゃあ元気で、と立ち去ろうとした瞬間だった。
腕をぐい、と引っ張られた。
「貴方の気持ちを弄んでた訳じゃ、なかったの・・・これだけは、信じて・・・っ」
「・・・・アコ」
「シャンクスのことが好きなの・・・好きだから、言えなかった・・・・っ」
ごめんなさい、と涙を流すアコを思わず抱きしめた。
「俺はまだ・・・アコを好きでいてもいいのか・・・?」
「・・・好きで、いてくれるの?」
「アコの本当の気持ちが知りたいんだ」
「・・・好き」
想いが溢れて泊まらなかった。
あの人は私から仕事を奪い、家族を奪い、
私の心のよりどころも、
好きな人も奪った。
・・・・シャンクスを、愛しているの。
そう伝えたら、わかった、あとは任せてくれとシャンクスが言った。
それから数日後、
まさかのあの人が浮気していることが判明した。
しかも相手を妊娠までさせたらしい。
「慰謝料取って離婚、だな」
「・・・納得するかしらあの人が」
「何、心配ない。俺が全部何とかする」
「え」
「言ってなかったか?」
俺は弁護士なんだ。
とシャンクスが笑って、
更に1ヵ月後無事に離婚が成立。
1週間後、
久しぶりに行ったあのお店。
変わってない、と嬉しくなって席に着いたら、
目の前に見慣れた赤いカクテル。
「まだ頼んでないわ」
「あちらのお客様からです」
・・・少し離れた席に、カクテルと同じ赤い色。
「改めてアコ。俺と結婚を前提に付き合って欲しい」
「・・・・はい、喜んで」
実はずっと私たちのことを見守ってくれていたらしいマスターが、
お祝いに、と私にお店でピアノを弾かせてくれた。
弾く曲は、
星に願いを。