短編③
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お正月が終わると、
街はもうバレンタイン一色。
・・・・・バレンタインなんて。
苦い思い出しかない。
・・・好きだった、上司。
シャンクス部長との、忘れたい、
忘れられない思い出。
去年のバレンタイン。
シャンクス部長のデスクにこっそり置いたチョコレート。
頑張って手作りして、手紙も書いた。
でも帰る時に聞いてしまった。
「チョコも女も苦手なんだ」
という、シャンクス部長の言葉を。
そんなんだからお返しも皆まとめての飴しかもらえなくて。
・・・シャンクス部長の笑顔も、信じられなくて。
辛い、バレンタインの思い出。
ああ、今年ももうバレンタインかあ。
仕事、辞めようかと思ったこともあったけどまだ続けてる。
自分でもよく頑張ってると思う。
・・・でもさすがに気まずくて、いたたまれなくなったのでお願いをして部署だけは異動させてもらった。
だからもう、シャンクス部長との接点はあまりない。
・・・・ほっとしてる反面、寂しくもある。
でもこれでいい。
そう自分に言い聞かせた。
「バレンタイン、誰かにあげるの?」
「今年は自分用」
「わ、寂しい」
「いいの」
いいの、これで。
シャンクス部長のことはもう忘れる。
もう決めたの。
もうバレンタインか、と去年を思い出す。
去年は本命からこそもらえなかったものの。
・・・誰からかわからないチョコが1つ、あったな。
机の上に積み上げられたチョコレート。
その1つ。
心の籠ったラッピングに、手作りのチョコレート。
・・・・これが、あいつからのものだったら。
そんなあいつも異動して会えることはなくなっちまったが。
「・・・会いてェなァ」
ぽつりと呟いて今年のテーブルの上に並べられたチョコレートを見る。
・・・今年は、あの可愛いラッピングはなさそうだ。
「なんで」
何で、どうして!?
どうして私の家に・・・去年シャンクス部長にあげたはずの手紙が、ここにあるの?
・・・・バレンタイン前日の休日。
浮かれた外に出たくなくて部屋で片づけをしていたらひらりと舞った手紙。
・・・・私、つけ忘れてたの?
じゃあ私のチョコは・・・名無しからのチョコ、だったってこと。
私の気持ちも何も伝わってなかったってこと!?
さいっあくだ!!!!
・・・・今年のバレンタイン。
このまま自分用のチョコだけで。
ほんとに、いいの?
苦い思い出の、ままで。
バレンタイン当日、急いで仕事を終わらせた。
慌てて1年前までいたあの部署へ走った。
・・・シャンクス部長の、いる場所へ。
頑張って終わらせたけど少し遅くなってしまった、
シャンクス部長まだいるかな・・・?
「失礼しま・・・っぶ」
部屋に突入したところで誰かとぶつかった。
「すまん、大丈夫か?」
「しゃ・・・・・」
シャンクス部長。
「怪我は?・・・アコ?」
懐かしい声、優しい顔。
「・・・お久し、ぶりです」
ああ、会えた。
と感極まってる場合じゃない。
「久しぶりだなぁ、ホントに。元気にしてたか?」
変わってない、笑顔。
「はい、元気で・・・・ほんとは、少し寂しかったです、けど」
「・・・そうか。いつでも希望出してくれれば戻れるようにしておくぞ」
「はい、有難うございま・・・・じゃなくて」
「ああ、そういやここに用事か?俺で最後だが」
「これ、シャンクス部長に、渡し・・・たくて・・・・っ」
自分用に買ったチョコを溶かして作った手作り。
去年と同じように頑張ったラッピング。
・・・忘れずに添えた、手紙。
「これ・・・・は・・・・」
「きょ、今日バレンタインなので!」
「・・・・このラッピング」
「頑張りました!」
「見覚えがあるんだ、もしかして去年も・・・」
「あ・・・さ、差し上げました!手紙をつけ忘れて・・・・・」
恥ずかしながら事実をお伝えするとシャンクス部長の目が愛おしそうに細まった。
「・・・そうか、アコ、だったのか・・・」
「・・・・あ、あの・・・?」
「俺は去年もアコからもらえてたんだな・・・」
「ご迷惑だとは承知です!すみません!!」
「迷惑?」
「・・・あの、去年シャンクス部長・・・女性とチョコは好きじゃない、って」
「・・・いや、そんなことはないが」
「えええええ!?」
じゃああれは何!?幻聴!?
と、突然シャンクス部長が笑った。
「ああ、そりゃあベックのことだ」
「ベックさん・・・」
「あいつはチョコも女も苦手だから早々に逃げたって話しをしたな、去年」
「・・・・・・・・・・・なんということ」
私は勘違いをして、
更にドジをして。
・・・・苦い思い出にしてたのか。
「それで、これはもらっても?」
は、と我に返った。
「い、一応本命です!失礼します!!」
いたたまれなくなってそれだけ言って逃げた。
・・・・・ほんとは、異動してもずっとシャンクス部長のことを想ってたなんて。
言えない、けど。
そしてホワイトデー。
今年はいいとこマシュマロでももらえたら、と思っていたら。
365本の薔薇とダイヤのネックレスを渡された。
「チョコ、美味かった。来年からもずっと作ってくれないか?」
の言葉と共に。
365本の薔薇の意味は、
毎日あなたを想う。
ちなみに部署は戻してもらえて、
またシャンクス部長の下で働けることになりました。