短編③
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その人を好きになったのは必然。
だと思ってる。
私の好きな漫画が舞台になった。
同じくその作品を好きだった友達に誘われて行った舞台。
・・・・正直に言えばキャラクターを人が演じるというのには抵抗があって。
不安が半分以上だった、私は。
幕が上がって、彼が出て来た時。
・・・私の好きなキャラクターが出て来た時。
息が止まった。
ああ、彼がそこに居る。
私の好きなキャラが。
今私の目の前で、動いて。
笑って。・・・・私を、見てくれた。
その時はただただ、すごい!という感動と興奮で、
この感情を伝えたい!と手紙を書いた。
ポートガスDエース。
彼を演じた俳優の名前はそうだとそこで初めて知った。
でももうその舞台が終わったらエースさんと関わることはない、そう思っていた。
でもたまたま見つけたSNSの呟きが、
【打ち上げ!焼肉!大盛り!!】
・・・・何気ないその呟きをとても可愛いと思ってしまって。
それからずっと彼のSNSをチェック。
手紙も毎月1回は送るようにした。
近いうちにイベントがあることを知って、
初めてエースさんの素の姿を生で見た。
最初のトークショーで、
「宝物は?」
と司会の人に聞かれて、
「応援してくれてる人からの手紙。公演中すっげェ励まされた」
と愛しそうに微笑んでる姿に胸が締め付けられた。
・・・ああ、私の手紙も読んでくれてるのかな。
なんて思いながら最後のチェキ撮影。
エースさんの瞳に私が映る。
「は、初めまして!アコと申します、よろしくお願いします!」
「有難う、よろしくな!」
ああ、頭が真っ白。
無難なポーズでチェキを撮って、
「あ、あの・・・エースさんらしく頑張って下さい」
これからも応援してます、とだけ何とか伝えて終わった。
それが最初の接触。
真っ赤な顔で、
「エースさんらしく頑張って下さい」
そう伝えてくれたアコに、勇気をもらった。
名前を聞いた時にいつも手紙をくれるコか、と思った。
有難いことにこの間までの舞台でファンが何人か増えて、
手紙ももらえるようになってきた。
それでもこの後の仕事がなくてちっと焦ってた。
・・・俺らしく、か。
・・・・そうだな。
ファンてのは有難い。
そう思わせてくれた、それがアコとの最初の出会いだった。
次にアコを見たのは、何とかもらえた舞台の仕事の時。
最前列にアコの顔が見えて、元気が出た。
俺のファンが見に来てくれてる、そう思うだけで嬉しいモンだ。
夜SNSで感謝の呟きをすれば5分しないうちにアコからコメントがついた。
・・・毎回コメントくれるんだよな、すっげェ嬉しい。
他にも何人かコメントくれるファンは居るが、
彼女の言葉はとても丁寧で真っ直ぐでやる気が出る。
2回目の接触の時、
アコが、
「て・・・っ、手を合わせて見つめ合って欲しいです!!」
と言うので言われるまま手を合わせて見つめ合ってのチェキ撮影。
・・・手、ちっせェ。
手の小ささにも驚いたが、1番驚いたのは本当に見て来たことだ。
今までも何回かこのポーズは他のファンとやったが、だいたい目を逸らされた。
無理ぃ、と言ってしゃがみこんだファンも居た。
・・・なるほど確かに見つめ合うっつーのは恥ずかしいモンだな。
でもアコはただ真っ直ぐに、俺を見つめて来て。
・・・綺麗な目を、ずっと見ていたいと思った。
始終落ち着いた様子のアコにクールなんだな、と思っていた。
その予想を裏切る出来事があったのは3回目の接触。
ラジオの公開録音のゲストに1週間前に決まって突然の告知。
どんだけ俺のファンが来てくれるか、予測もつかなかった。
アコからのコメントには仕事なので行けないかもしれませんが行けるように頑張ります!
だった。
・・・・まあ、突然だもんな。
公開録音の場所ではアコの姿は見えず、
まあメインのパーソナリティにファンが多いのは仕方ないことだ、と公開録音の後のチェキ撮影の時。
パーテーションで区切られた場所。
10人目くらいだったかに入って来たアコは紙袋持って、
「お、お疲れ様です・・・あのこれつまらない物ですが良かったら・・・」
・・・来てくれた。
「わざわざありがとな」
「いえ、あの私いつも応援させて頂いておりまして・・・っ」
「アコだろ?」
「へ・・・・?」
「手紙もプレゼントもいつも感謝してる」
お礼を言えばアコは突然顔を真っ赤にしてしゃがみ込んだ。
「い・・・・・いつもすみません・・・・気持ち悪くて・・・・っ」
上ずった声、上目遣いの目はうるんで見えた。
「・・・もしかして緊張してるのか?」
「めっちゃくちゃしてますぅぅ!!!」
・・・・可愛い、と思った。
3回目の接触で名前を呼ばれて頭が真っ白になった。
もう駄目、無理・・・・好き。
認知、ってやつだよね?
仕事先輩に代わってもらった甲斐があった!!
「緊張しなくていいって。笑ってくれよ、な?」
「あああ有難う御座います!あの、今度サボ君とイベント出られますよね?」
「ああ、来てくれるのか?」
「行きます!サボ君とのコンビ大好きでした!」
「よろしくな!」
「はい!」
接触、とは言っても。
チェキ撮られんのはいまだに慣れねェ。
特にポーズは簡単なやつがいい。
お任せ、って言われると困る。
「困らねェ?」
仲の良い俳優仲間のサボに聞いてみると、
「困らないね、俺はファンの子がどうすれば喜ぶか知ってるから」
・・・だと。
チクショウ俺だって。
そう意気込んで臨んだのに、
その日の接触でアコに、
サボ君はああしてくれました、こうしてくれました、と言われてイラッとした。
「あ、じゃあ最後はエースさんにお任せします」
そう言われて思わずアコの肩を強く抱いた。
・・・・俺の、アコだろ。
そう言いたかった。
絶対エース君怒ってた。
私はなんて馬鹿なんだろう。
・・・・反省の手紙を書いて送ろうとしたら4枚に及んだ。
次に会うのが怖い、そう思いながらも舞台に通ったり手紙を送ったりしているうちに仲間が出来た。
そしてあれから久しぶりの接触イベント。
「お、お久しぶりです・・・!」
「今日も来てくれて有難うな、アコ」
「今日のイベントも楽しかったです!!」
「あ、そうだ。これ」
「・・・・・・・こ、れ?」
これ、とファイルから彼は取り出したものを私に差し出した。
【アコへ】
私の名前が書かれた、手紙。
手紙!?
「あ・・・・・・・・・・・・・・有難う御座います」
ファイルには他にも手紙が入ってて、
たぶん今日来てるファン全員に書いたんだと思う。
・・・律儀だなあ。
帰り道、もらった手紙を仲間の皆と開けた。
「私2枚!」
「私も!」
え・・・・私、1枚。
そんなぁ・・・いやいや、愛情は枚数じゃない!!
「内容はお互い秘密ね!」
「う、うん・・・」
ドキドキしながら中を見たら。
【好きです。俺の彼女になって下さい】
丁寧に書かれた文字と、
エースさんのサイン。
そして電話番号と思われる数字と、
アドレス。
これを素直に喜べたら良かった。
・・・・・悩んで悩んで、
私も好きです、と彼に伝えられたのはしばらくしてから。
・・・・それはまた、別のお話し。