短編③
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ちゅ、と優しいキス。
必ず最後にするそのキスが本当にとても優しいので、私はたまに泣きそうになる。
・・・いつまで、こんな気持ちで身体を重ねるんだろう、私は。
いつまでこんな曖昧な関係でいられるだろう。
こんな身体だけの関係で。
・・・・・シャンクスは幸せそうに笑うけど。
私は、辛い。
初めてのキスは2人で残業した時、デスクの前で。
私が眠気覚ましの為に飲んでいた缶コーヒーをシャンクスが飲みたい、と言ったのでじゃあ1口、とあげたのがきっかけ。
同期の中でも仕事が出来てイケメンで優しいと評判だったシャンクス。
「それ、新発売のやつか?気になってたんだ」
「飲む?」
「いいのか?」
「どーぞ」
ごくりと飲んだシャンクスが妙に艶めかしくて、
「間接キスね」
なんて冗談めかして笑ったら、
「ああ・・・・直接でもいいんだが」
「え?」
挑戦的な笑みのシャンクスが近づいて、
お互いの唇が、重なった。
・・・・それから何度か身体を重ねた。
最初こそシャンクスに片思いしていた私は舞い上がってたけど。
今は苦しい。
だって私は『恋人』じゃない。
可愛い、とか好きだ、とはよく言われる。
・・・・ベッドの上で。
時にはデートもする。
それでも私は恋人じゃない。
それがこんなにも、辛い。
「シャンクスせんぱぁーい、ここがわからないんですぅ」
「おう、どうした?ここか、これは・・・」
・・・・可愛い後輩の女の子が、
シャンクスに近い。
見る限り仕事での疑問を聞く以上の他意はないんだろうけど。
・・・・私のシャンクスなの、って言えたら。
思えたら。
良かったのに。
「アコ?どうかしたか?」
「え」
いつの間にかシャンクスが後輩から解放されて私の目の前に居た。
「アコもわからないことが?」
「・・・ううん、平気」
平静を装って首を横に振れば彼はそうか、と笑って、
私の耳元に口を近づけた。
「今夜、どうだ?」
俺の部屋で。
「きょっ・・・・今日は、やめとく」
不意を突かれて思わず声が上ずった。
「わかった、また今度だな」
それでも彼は気分を害した風でもなく笑って戻って行く。
・・・恋人になりたいと口に出したらシャンクスはどんな顔をするかしら。
この関係も、終わってしまうかもしれない。
こんな関係でも、シャンクスが求めてくれるなら。
側に居られるなら。
・・・・ああ、私ってこんなに臆病者だったかなあ。
そろそろプロポーズも考えている、と言ったら笑われた。
「フられて指輪が無駄になるに1票」
「そりゃないぜベック。もう1年付き合ってるんだ、早いってこともねェだろう?」
「最近浮かない顔をしていることが多いように見えるが?」
「・・・アコが、か」
「アンタは1年前からずっと浮かれてるだろうが」
「ははっ、違いねェ」
1年前、アコと恋仲になれた日から、俺はずっと浮かれてた。
だがアコも嬉しそうにしてくれてた(ように俺には見えた)もんで、
何も思わなかったが。
確かに最近ベックの言う通りアコの様子が変ではある。
「他に男でも出来たんじゃないのか」
「・・・・・・まさか」
「100%ないと言い切れるか?」
アコが俺以外の男を?
・・・・考えただけで、胸糞悪い。
なんてもんじゃない。
こうなったら早々に手を打つか・・・。
「は・・・ぁ、・・・・っ」
夜、シャンクスの家。
今日のシャンクスは少し変。
シャンクスにしては珍しく余裕がない、というか。
荒々しい行為だった気がする。
「・・・アコ」
私の名前を呼んで、いつものようにちゅ、と軽いキス。
それから目を閉じて同じベッドで眠る。
いつもと同じ、はずだった。
「・・・・シャンクス?」
いつもと違った、シャンクスの手に小さい箱。
「受け取ってくれるか?」
中を開ければ高そうな・・・小粒ながらに美しく輝くダイヤモンドの指輪。
「こ・・・・・こんなの、いらない」
身体の関係だけじゃ悪いと思ったの?
罪悪感からプレゼントしとけばいいか、みたいな?
それともこれが手切れ金代わり?
嬉しくない、嬉しくない。
思わず口に出てしまった言葉にはっとなった。
「・・・・・・そう、か」
「・・・・ごめ・・・・・っ、ごめんなさい」
慌てて服を着てシャンクスの家を出た。
・・・・・・・・・・最悪。
最悪だ。
「やっぱり無駄になったか」
「頭が痛い、これ以上はやめてくれ」
「二日酔いだろうが。自業自得だ」
「・・・・・まさか拒否されるとは思ってなかったんだ」
「ちなみにこれは確かな筋の情報だが」
「・・・なんだ?」
「今彼女に恋人はいないそうだ」
「・・・・・アコのことか?別れたつもりはないぞ」
プロポーズは拒否されちまったが、恋人関係まで解消したつもりはねェ。
どういうことだ。
「ま、話し合うのが1番だろ」
「・・・・そう、だな」
・・・・・別れたいと言われても、
離せる気はしないが。
「話しがしたい」
仕事中にシャンクスにそう話しかけられて、心臓が止まったかと思った。
「・・・・・っ、今、ここで」
「今は無理だ。・・・出来れば俺の部屋で」
「・・・・・わかった。私も話したいこと、あるから」
ドキドキドキドキ。
心臓が飛び出るんじゃないかと思うくらい、勇気を出した。
久しぶりに見たシャンクスの真剣な顔。
ああ、そうよね。
シャンクスはモテる人だから。
私が拒むなら別の女の人がいる。
きっとそういう話だ。
そう思ってたのに。
「結婚が嫌ならいい。ただ俺は別れるつもりはない」
なんてシャンクスが言いだして驚いた。
驚いて出されたお茶を吹き出しそうになった。
「けっ・・・・・・・・・・こん?」
何言ってるんだろうこの人は。
誰が誰と結婚するっていうんだ。
「結婚が嫌じゃないなら指輪が気に入らなかったのか?それなら言ってくれ、すぐに買い替える」
「・・・・・・・・・・え、待って?指輪って・・・・この間のって」
「プロポーズのつもり、だったんだが」
シャンクスが酷く困惑した顔で言うから、
「うえええええええええ!?わわわ私に!?」
今度こそお茶を盛大に零した。
「・・・・伝わってなかった、のか」
「そもそも私達ってそういう関係じゃないでしょ!?」
「・・・・?恋人だろう?」
そうなの!?初めて知った!!!
「・・・・そんなの、初めて・・・・っ」
「・・・・そうか、そういうことか」
シャンクスは頭に手をやり天井を仰いだ。
「・・・・私達、ずっと」
すれ違ってたのね・・・・。
あんなに何回も身体は重ねてたのに。
心は重なってなかったのかあ。
・・・・なんか、笑える。
「・・・・アコの話しを聞こう」
「あ。えーっと、シャンクスの正式な恋人になりたい、っていう・・・・」
・・・・結婚して欲しいシャンクスと。
恋人になりたい私。
ホントに、おかしい。
シャンクスもなんとも言えない顔してる。
「俺は言葉が足りなかったな、すまん」
「・・・・そんな」
シャンクスだけが悪い訳じゃない。
「アコ」
「は、い」
「愛してる。結婚を前提に俺と付き合ってくれ」
「・・・・・はい」
改めて。
交際1ヵ月後に私たちは結婚しましたとさ。
エースver
↓
↓
↓
↓
↓
「あーあ、エース先輩にとって私って何なのかなあ」
ぽつりと呟いた愚痴に、
「恋人でしょ」
とアッサリ友人のナミ。
「いーや、絶対妹とか思ってそう」
「・・・妹に手出したりしないでしょ」
「だって頭撫でてくれたり、可愛いなァって言ってくれるの」
「嬉しくないの?」
「嬉しいけど」
「ずっと好きだったんでしょ?」
「・・・・うん」
出会いは高校。
カッコ良くて優しくてスポーツ万能な1個上の先輩。
・・・エース先輩。
同じ大学に行きたくて、
『先輩と同じ大学に行きたいです!!』
本人にそう宣言したら、
『あぁ、来いよ。待ってるぜ』
って返してくれて。
だから私も一生懸命勉強して。
同じ大学に入学することが出来た。
ナミっていう親友も出来た。
でもまさか、大学で再会したエース先輩とこんなことになるとは思わなかった。
「アコ」
鍛えられた身体が目の前。
「ん・・・・・くすぐったい、です」
ちゅ、ちゅ、と啄むようなキスが降って来て。
「もう1回、って言いてェんだけどルフィがそろそろ帰って来ちまう」
「今日お夕飯何ですか?」
「カレー」
「いいですね、カレー」
「アコも食っていくよな?美味いぜ、俺のカレー」
「はい、頂きます」
身体を重ねた後、結構な頻度で私は夕飯をご馳走になる。
おかげで先輩の弟のルフィ君とも仲良くなった。
・・・・・先輩の行為は、とても優しい。
痛くないか、辛くないか、と頻繁に聞いてくれる。
終わったあとは優しく頭を撫でてくれる。
・・・・でも、じゃあ。
私達の関係は、と聞かれたら。
私はきっと黙ってしまう。
答えられない。
・・・・ただの先輩と後輩、じゃない。
でもきっと、恋人でもない。
「アコ悪い、肉出してくれるか?」
「はーい。あ、エース先輩の好きなお酒も出しておきます」
「お、悪いな。サンキュ」
「・・・・いえ」
・・・・始まりは、お酒から。
大学の飲み会でエース先輩が珍しく酔っぱらってしまったことがあった。
幸い歩ける程ではあるけど心配だ、ということで、
私はたまたまエース先輩の家を知ってることから付き添った、だけのつもりだった。
『じゃあ先輩、私帰りますね。お水、ここに置いておきますから・・・』
その時弟のルフィ君は修学旅行で不在。
『んー・・・・アコ-・・・・』
『・・・エース先輩?』
名前を呼ばれて近づけば、
先輩の手が私の頭に回されて。
唇が深く重なっていた。
『・・・・ふぇ!?』
『へへっ、もーらい』
へらぁ、なんて力なく笑うエース先輩が可愛くて。
そのままそこからされるがまま。
・・・・それから、
『今日、うち来ねェ?』
・・・・が合図。
正直嫌じゃない、と言えばウソになる。
でも高校の時から憧れてた先輩とこうしていられるなら。
今はそれでいい。
「ご馳走様でした。じゃあ私はそろそろ帰りますね」
お邪魔しました、と玄関に向かえば、
「送ってく」
とエース先輩。
「大丈夫ですよ、まだそんなに遅くないですし」
「ってももう暗いだろ、いいから送らせろ」
「じゃあ・・・お言葉に甘えます」
エース先輩の隣を歩きながら、
手繋ぎたいなあなんて思う。
・・・・言えないけど。
本当の恋人だったら。
言えたかもしれないけど。
・・・・本当の恋人に、なりたい。
「エースアコとケッコンすんのか?」
弟の唐突かつ真っ直ぐな質問に思わず茶を吹き出すとこだった。
危ねェ。
「あー・・・・そりゃあまあ、いつかはな?」
「いつかっていつだ?」
「今はまだ学生だからなァ。俺がちゃんとしたとこに就職して・・・」
安定して、そしたらアコにプロポーズ、だな。
「ケッコンしたらアコもうちに住むんだろ!?早くすればいいんだ!」
「・・・簡単に言ってくれるけどな、アコの気持ちも考えろよな」
「アコはエースとケッコンしたくねェのか?」
そんなことは思いたくない、絶対に。
恋人である以上少しはそういうことも意識するだろ・・・?
いやいや、まだ付き合って半年だしな。
とりあえず今は俺の飯喜んでくれてるみたいだし。
少しずつで、いいよな。
「アコちゃんてさ、今付き合ってる奴とかいんの?」
「え?」
お昼ご飯をエース先輩と一緒に食べようと待ってた時のこと。
同じサークルの先輩に声をかけられた。
「俺ずっとアコちゃんのこと気になってたんだよ」
「つ・・・・・・・・・付き合ってる人は、いません」
今は、まだ。
「そうなん?エースと仲良さそうだから駄目かと思った」
「え、エース先輩とはまだそういう関係じゃないですけど、でも・・・・っ」
でもこれから、と口を開いた時に目の前に見えたものに私は目を疑った。
エース先輩と、腕を組んでいる女性。
「あれ、あっちがエースの彼女?」
ふとエース先輩と目が合って。
ふい、と目が逸らされた。
・・・・それがまるで、お前には関係ないだろ、と言われたようで。
「失礼しますっ・・・・!!」
走って逃げた。
頭が真っ白で。
もう何も考えられない。
もう何も考えたくない。
恋人に、なりたくて。
お弁当作って来たのに。
エース先輩の分も。
お弁当渡して、恋人になりたいですって言いたかったのに。
・・・・・・・もう、どうしたら。
どうしたらいいんだ俺は。
「つ・・・・・・・・・付き合ってる人は、いません」
恋人っであるはずのアコが目の前の男にそう言ってるのを聞いちまった。
目が合って、それが自分の本心だと言われたようで、
認めたくなくて思わず目を逸らしてしまった。
・・・・って、馬鹿か俺は。
「ねぇエースくぅん、弟君紹介してよお」
腕に絡みつく女を振りほどいて、
俺は逃げたアコを追った。
「アコ!!」
エース先輩の声が聞こえて追いかけられてることを知った。
「待て、アコ!!・・・ったく、この!」
そうとなれば私なんかが逃げ切れるはずもなく。
あっさりと腕を捕らえられてしまった。
「エースせんぱ・・・・わた、私・・・っ」
パニックで何を言っていいかわからない。
「俺のこと・・・好きなんじゃないのかよ・・・」
「私は・・・・・っ」
好きだけど、身体だけの関係は嫌だと。
伝えなきゃ。
「俺のこと大学まで追いかけてきてくれたのも、酔っぱらった時世話してくれたのも・・・違うのかよ」
先輩の辛そうな顔に涙が零れた。
「・・・・好きです・・・・だからっ!!恋人に、なりたくて・・・!!」
「・・・・・・今は、違ェの?」
「え!?」
きょとん、とした先輩の顔に更に混乱が増した。
どういうこと!?
「今は恋人じゃないのか?俺はずっと恋人だと思って来たんだぜ・・・?」
「だっ・・・・だって先輩私のこと好きだなんて1度も!!」
「言わなかったか!?」
「聞いておりません!!!」
あまりの衝撃に涙が止まった。
「何だよ・・・結局ずっと俺は片思いしてたのかよ・・・」
「私だってずっと片思いしてました・・・エース先輩に」
「・・・あん時、酔ってたからな俺も。好きだって言って受け入れてもらえてた気でいた」
「・・・じゃあ今、聞きたいです」
エース先輩は私の懇願に頭をがしがしと掻き、
「・・・好きだ、アコ。俺と付き合って下さい」
深いお辞儀。
「私もずっとエース先輩のことが好きでした・・・・っ!!」
これにて一件落着。
かと思いきや。
「あ、私エース先輩にお弁当作って来たんです」
「え、俺もアコに作って来た」
エース先輩は私が作ったお弁当2個と自分が作った1個をぺろりと食べきりました。
私はエース先輩が作ってくれたお弁当1個を美味しく完食。