短編③
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「これは燃える、こっちは燃えない・・・・・っと」
ペットボトルはキャップをはずして、と。
燃えないゴミは明日出すからここにまとめて。
よし。
時間もまだある、ゴミ出ししてから出勤。
気合を入れてドアを開けたら、
「あ」
「お・・・・おはよう、アコ」
お隣さんとばったり。
「おはよう、御座い・・・・ます」
あばばばば!!!
予想だにしてなかったお隣さんとの遭遇に心臓が暴れ出した。
・・・・結婚を前提に付き合ってくれないか、と言われたのはついこの間。
驚きながらも彼に惹かれていた私は頷いてしまった。
「これからか?なら駅まで一緒に行かないか?」
「え、でもシャンクスさんの会社って」
ここから近いのでは。
「今日は所用で駅まで行くんだ、一緒に行こう」
「は、はい・・・」
「アコ」
シャンクスさんが爽やかに手を出して来て思わず首を傾げた。
あげられるもの何もないんだけどな?
「手を繋いでも?」
苦笑したシャンクスさんの言葉に意味をようやく理解して、
「あ・・・・・っ、ご、ゴミ捨てて来ますぅ!!」
恥ずかしくなってゴミ捨て場に逃げた。
・・・・お隣さんは、見れば見る程うちのマンションには似合わない。
背が高くて顔が良くて、着てるもの、身に着けてるものも良いものだと一目でわかる。
・・・だって社長だもんね、そりゃそうだ。
そんな人が私に会う為にこんなこじんまりとしたマンションに・・・・。
世の中不思議なこともあるもんだ。
「行けるか?」
「うぁ、はい!!」
ゴミを捨てて物思いにふけっていた私に声がかかって思わず直立した。
そして再び差し出された手をそっと取った。
指と指が交差する、いわゆる恋人繋ぎ。
ふわあああああ!!!
「・・・嬉しいもんだな、こういうのも」
「・・・・おとな・・・シャンクスさんおモテになりそうなのに」
そんなこと言うのずるい。
「俺は結婚詐欺師なんだそうだ」
「・・・・は?」
真顔で何を言うのこの人。
「社内でそんな噂が出回ってるらしい。そんな訳でモテるなんて威張れるようなことは経験がねェ」
「・・・・そんな馬鹿な」
「アコも・・・信じるか?」
なんて少し寂しそうに問いかけて来る。
「わざわざ詐欺する為にこんなマンションに引っ越しする人居ます?」
「だっはっは!そうか!信じてくれるか!」
「でも何だってそんな噂が・・・・」
「取引先と会うことが多いんだが、相手が女性が多かったせいだろうな」
「あーなるほど・・・・・」
そうだよね今は女性も活躍する世の中。
そんなこともあるのかもしれない。
「お前は一生結婚出来ないと相棒にも言われた」
「相棒・・・その方も女性、ですか?」
「いや、優秀だが不愛想な男だ」
「お仕事大変ですか?」
「そうだな・・・大変ではあるが楽しいこともある。アコはどうだ?」
「私も同じです。辛いこともあるけど嬉しいこともあります」
「・・・今日は何時頃終わるんだ?」
「えっと・・・・たぶん19時には」
「夕飯は何を食べたい?」
「へ!?」
「今日は早く帰れそうなんだ、うちに来て食べないか?」
「た・・・・・・・っ!!食べたい、です」
シャンクスさんの作るご飯美味しいし・・・!
「何がいい?」
「かっ・・・・唐揚げ・・・・」
「わかった、楽しみにしてくれ」
優しい笑みに見惚れる。
・・・・幸せかも、しれない。
「シャンクスさんはすごいですね、料理も上手で」
「そうか?今時自炊出来ないとのたれ死ぬだろう」
「のたれ死にますかね・・・」
「少なくとも惚れた女の胃袋を掴むにはいい」
「ぎゃふん!!」
なんて言ってるところで駅に着いた。
「あ・・・・じゃあ、また夜に。お部屋に伺いますね」
「ああ・・・待ってる」
少しだけ名残惜しそうに手を離したシャンクスさんはそのままその手をぽん、と私の頭の上に。
爽やかな笑顔を残して去って行った。
・・・・・信じられないなあ。
「何が?」
「あんなに素敵な人が私の恋人って」
休憩中にナミにお隣さんとのことを相談。
前から心配してくれてたし。
「やっぱり結婚詐欺ね」
「・・・・そんな馬鹿な」
「じゃないにしても、一目惚れした女の為に家調べて引っ越してくるってストーカーじゃない」
「は!」
「怪しいわね」
「確かに・・・私なんかの為にそこまでするなんて・・・・」
「よっぽどあんたに惚れたか、お金があるのね」
・・・・私は彼のそんな気持ちに、応えることが出来るだろうか。
「お邪魔しまーす・・・・」
仕事を終えて一旦自分の部屋に帰って。
色々準備してお隣さんの部屋へ。
「お疲れさん、こっちもちょうどいい頃合いだ」
部屋に響くじゅわぁぁぁ、のいい音。
そして広がる唐揚げのいい香り。
「わぁぁぁお腹すいたぁぁぁ・・・・!」
・・・割と長いこと1人だったから、
帰って誰かに作ってもらうご飯は嬉しい。
そして、
「さあ、食ってくれ」
「頂きます!」
・・・・誰かと食べるご飯も、嬉しい。
「んん!!美味っしい!!!」
サクサクじゅわああ!!
「口に合ったみたいだな、良かった」
「・・・・シャンクスさんは、不安とかなかったですか?」
「不安?」
「一目惚れした相手の隣に引っ越して・・・もし思ってた人物像と違ってたら、気持ちが冷めてしまったらって」
私は今怖い。
シャンクスさんに惹かれていく自分をわかっているから。
いつか幻滅されるんじゃないかって。
・・・一目惚れは、長くは続かないと、思ってしまうから。
シャンクスさんは私の問いに、
「不安はなかったな」
考える素振りも見せず即答した。
「道端で叫んでる変な女って思いませんでした?」
「言っただろう?叫んだ後真っ直ぐに前を向いて歩き出した姿に惚れた、と」
「う・・・・」
「・・・・その目に、惚れたんだ。俺が見てるとは思ってなかっただろう?取り繕った姿を好きになった訳じゃない」
改めて聞かされると恥ずかしい。
・・・・でも、嬉しい。
「あとあの・・・・指輪、なんですけど。サイズが」
「合わなかったか?」
「いえ・・・・めっちゃぴったりだったのですごい驚いてます」
指輪は引っ越す前に買ったって言ってた。
その行動力もさることながら、サイズが合ってたことは本当に驚いた。
「目には自信があるんだ」
「じゃっ、じゃあこんな狭くてお世辞にも綺麗とは言えないところに引っ越しなんて嫌だとか・・・」
「惚れた女の隣が空いてるんだ、そんなことは気にすべき点じゃねェな」
「でもこのテーブルも・・・ソファもいいものですよね」
「確かに値は張るが長持ちする」
「はあ、なるほど・・・・」
「・・・・金銭感覚が気になるか?」
「・・・そこまで思ってくれるシャンクスさんに私はちゃんと返せるかなあと」
思い切って不安をぶつけてみれば、
シャンクスさんは一瞬だけ目を丸くしてそれからすぐに細めて笑った。
「・・・嬉しいなァ。そこまで気にかけてくれるのか、優しいなアコは」
「そんな、こと・・・・」
「下手をしたらストーカーまがいなことをしてた自覚はある」
「・・・はあ」
あるんだ。
「それでもこうしてアコが受け入れてくれてる、それだけで十分だ」
「・・・・いいんでしょうか」
「今は俺がアコの心を射止める時だからいいんだ」
・・・・もうすでに射止められてるんですけど。
「私も・・・たくさんお返し出来るように頑張ります!」
ただでさえこの関係になる前から色々高級品もらってたし。
「じゃあまずはここから、頼む」
「こっ・・・・・・これって・・・」
シャンクスさんから渡されたのは明らかにこの部屋のものと思われる鍵。
合鍵!?
「不安にさせたくはない・・・いつでもいい、来てくれ」
「は・・・・・はい・・・!」
「おっと、酒が足りなくなっちまったな。買いに行って来る」
「じゃあ私も!!」
「・・・・一緒に行くか?」
「ま、まずはここから頼みます!!」
そっと彼の大きな手と自分の手を絡めた。
ここからが、始まり。
帰って来た時、
シャンクスさんがぽつりと、
「これからずっと同じ部屋に帰れたら最高だな」
なんて言ってきたのでもう駄目です。
・・・・もう、離れられません。
そんなお隣さんと私。
もとい、
恋人と私。