短編③
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「本命にはホワイトチョコなんだって!」
「・・・・・そうなの?誰にあげるの?」
同僚が嬉しそうに話しかけて来たので、
パソコンに向かっていた手を止めた。
そう言えば明日はバレンタインだっけ。
「勿論サボ君」
「サボ君・・・・」
と言えばうちの人気男子。
イケメンで優しくて仕事も出来る同期。
入社の時から話題になってたけど、
私は仕事や人間関係に慣れるので精一杯だったのもあり、
たいした興味もない。
「アコはあげないの?」
「サボ君に?」
「他にあげたい人居なくない?」
「まず1番に自分にご褒美チョコかな」
「・・・・寂しいなあ」
「いいの」
バレンタイン当日。
「サボ君受け取って」
「有難う」
笑顔で受け取って、これで何個目だろうか、と数える。
それでも本命からは貰えそうにない。
・・・・バレンタインには自分用にしか買わないという情報が入ってるからそうなんだろうな。
今のところ彼女が誰かにあげている姿も確認してないところを見るに、だが。
「今年ももらえそうにないんでしょ、サボ君」
「・・・・バレンタインは自分用に、だそうだ」
「やだ、その情報何処から手に入れたの。怖いんだけど」
「特別な情報通から」
「とか言って誕生日にも何ももらえてなかったじゃない」
「・・・・・うるせ」
そっちにその気がないなら、
その気にさせるまでだ。
チャンスは待ってるモンじゃない。
掴むモンだ。
「アコ」
「・・・どうしたのサボ君」
仕事中のアコに声をかける。
「大変そうだな、手伝えることあるか?」
まずは小さなことからコツコツと。
そして、
「ううん、大丈夫。有難う」
「そっか、何かあったら言ってくれよ、同期なんだから」
「うん」
めげないことだな。
それから適度な距離感。
しつこすぎても警戒されるからだ。
「アコ、今帰りか?」
「あ、うん」
「駅まで一緒に行こう」
「サボ君もこんな時間まで大変ね」
「まあな。でもこんな時は飲む酒が美味くなる」
「お酒かぁ。私は美味しいご飯の方がいいな」
「何にせよ自分にご褒美は大事ってことだ」
「それはわかる。美味しいご飯と甘いデザートだけで幸せになれるもの」
「アコにとって美味しいご飯て何だろうな」
「残業で遅くなった時はお寿司とか食べるけど・・・好きなのはラーメンかな」
「ああ、ラーメンはカロリーが気になるもんな」
「そ。最近忙しくてお店の開拓も出来てないし」
「今を乗り越えれば少しは楽になるさ」
「だね。頑張ろう」
「ああ、頑張ろうな」
さりげない会話から情報を掴む。
特に好きな食べ物の情報は有難いな。
1週間後。
「アコ、大丈夫か?」
結構前からパソコンと睨み合いしてるアコ。
皆はもう帰った。
「・・・・だい、じょうぶ」
明らかに大丈夫じゃない顔に思わず苦笑する。
「ここはこれで短縮出来るんだ」
「え。嘘・・・・・」
「これで早く出来るだろ?」
「すっごい・・・・・!!」
「俺も先輩から教わったんだ」
「有難うサボ君、これでもう終われそう」
「よし、じゃあ帰りにご褒美でもどうだ?」
「ご褒美?」
きょとん顔のアコににっこり微笑みかける。
「美味いラーメン屋を見つけたんだ、デザートもある」
「本当に!?行く!」
初めて見たな、アコが目を輝かせたところ。
可愛いな。
サボ君に誘ってもらって入ったラーメン屋さんは駅から近くて。
私の知らない店だった。
「いただきます」
まずはスープを一口。
「ん。美味しい」
「口に合って良かった。ちなみにデザートのおススメはチョコレートプリンだ」
「あ、それ食べる」
「ははっ、好きなんだなチョコレート」
・・・笑った顔が可愛くて、何だかドキッとしてしまった。
サボ君てこんな子供みたいに笑える人なんだ。
名前は知ってたけど興味なくてあんまり見てなかった。
追加でサボ君おススメのチョコレートプリンを1つだけ注文。
「チョコと言えばバレンタイン、いっぱいもらってたみたいだね」
「そう思うだろうけど、あんなのあっという間になくなるんだぜ」
「え」
だって結構あったように見えたけど!?
驚く私にサボ君は平然と、
「チョコレートは大好物なもんで」
「・・・・じゃあ来年は私もあげようかな」
「本当か?嬉しいよ」
本当に嬉しそうなサボ君に、モテる理由がわかった気がした。
同時に今年あげなかったことを少しだけ後悔した。
「・・・でもサボ君そんなチョコ好きなのにプリン頼んでないね?」
「ああ、頼んでないけど食べられる、と思ってる」
「・・・・どういうこと?」
「来ればわかる」
意味深なサボ君の台詞に首を傾げた次の瞬間。
「お待たせしましたぁプリンでぇす」
「ぷ・・・・・・・・・・・・」
私は目を疑った。
「な?」
目の前に置かれたのは巨大なチョコレートプリン、生クリーム添え。
「これを1人で食べろと!?」
「その為に俺が注文しなかったんだ」
「なるほど・・・・!」
サボ君が半分食べてくれるみたいでほっとして手をつけた。
「おいっっっしいっ!!!!!」
絶妙な甘さ!舌に感じる滑らかさ!
生クリームとの調和!もうすべてが美味!!
「美味いだろ?ホワイトチョコレートも期間限定で出てるんだ。また今度食べに来ないか?」
「ホワイト・・・・チョコレート」
『本命にはホワイトチョコなんだって!』
思い出す、同僚の言葉。
「・・・・じゃあ今度、そのプリンは私がサボ君にあげるね」
「アコは食べないのか?」
「遅くなったけど、バレンタインチョコの代わりに」
「そっか、有難う」
「あー!!もうお腹いっぱい!!サボ君タッチ!!」
「よし、任せた!」
「待ってスプーンもう1コもら、」
食べてもらうにしても、スプーン1コしかついてなかった(それで私が食べた)ので、
もう1つ貰おうとしたのにサボ君は私の食べたスプーンでそのままぱくり。
・・・・間接、キス。
そして私を見てにやりと笑った。
「・・・・サボ君、ホワイトチョコレート、何個もらった?」
「え?えーと、何個だったかな・・・・」
「来年はホワイトチョコ贈る。っていう宣戦布告しとくね」
「ははっ、そりゃ楽しみだ」
来年からは、
バレンタインも。
彼の誕生日も。
私も参戦します。
恋のバトル。
(サボ君の勝利)