短編③
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高校で同じクラスだったエースに卒業と同時に告白されて、
付き合って6年過ぎたところで同棲を始めた。
一見不真面目に見えるエースだけど、
根はすごく真面目で。
告白してくれた時も色々考えてくれたらしい、エースらしからぬ夜景の綺麗なレストランでだった。
一緒に住まないか、と言われた時も夕陽が綺麗な海辺で、だいぶ緊張した面持ちでだった。
いつも私のことを考えてくれて、
いつも私に一生懸命なエース。
・・・・大好きな、彼。
そんなエースがまた何かに悩んでいるらしい。
何とか力になりたいなぁ、と思うんだけど。
「エースクッキー焼けたよ」
お互いに社会人だけど、
たまに休みが重なる日はだいたい家でゆっくり。
私の手作りクッキーを楽しんだり、
DVDを見たり。
2人で旅行をすることもある。
「お・・・ありがとな」
「・・・・ねえ、エース?」
・・・・なので、この休みを利用して。
エースの悩みを是非聞きだしたい。
「んー?」
「何か最近元気ないね?」
「・・・そんなこと、ねェよ」
・・・・撃沈。
勿論無理に聞き出そうとは思ってないけど。
「そっか。・・・クッキー美味しい?」
「当たり前だろ?お前の作るモンは何でも美味ェ」
「ありがと。おかわりあるからね?」
「おう」
そう言ってエースは笑ってくれるけど。
やっぱり何処か陰があるように見える。
「今日夕飯何食べたい?」
「あ、今日は俺が作ってやるよ。いつもアコに任せてばっかだし・・・」
「ほんと?エースのご飯美味しいから嬉しい」
「何食いてェ?」
「ハンバーグっ」
・・・・・って私が喜んでどうするの。
エースの悩みを聞きたかったのにー。
「んじゃあ一緒に買い物行くか?」
「うん、行こっか」
・・・・でもこうやっていつもみたいに手を出してくれて、
2人で手を繋いで買い物に行けるのはやっぱり幸せ。
「・・・・なァアコ」
「ん?」
「俺、幸せだ」
「・・・・うん、私も」
大好きだよ、と言ったらエースが、
俺も、とはにかんだ。
・・・・可愛い私の恋人さん。
「って感じなんだけどどう思います?マルコさん」
エースと(私もだけど)仲がいいマルコさんに相談。
「俺から言えることはねェよい」
「マジですか・・・」
やっぱりマルコさんも知らないんだ、とがっくりと肩を落とす。
わざわざご飯に誘って悪いことしちゃった。
「エースはエースなりに必死なだけだろい」
・・・・あれ、何か今の言い方。
「・・・何か、知ってます?」
そんな気がした。
「・・・知ってはいるが話せることはねェ」
「どういうことですか?」
「エースの苦悩を無駄にするようなことは言えねェってことだい」
「でもエースが苦しんでるなら助けたいです、私」
「お前ェの気持ちもわかるが、俺が言えるのはあいつを信じてやれってことだけだよい」
・・・よくわからないけど、これ以上マルコさんに聞いても無駄なことはわかった。
男同士の友情ってやつなのかなぁ。
・・・ちょっと、羨ましい。
マルコさんとはそれから普通に世間話をしてご飯を食べてお別れした。
「マルコさんと久しぶりに会ったけど元気そうだったよ」
軽い気持ちでエースに報告したら、
「・・・・マルコ、何か言ってたか?」
「ううん、特には」
「・・・・そっか」
真剣な顔で考え込んでしまった。
「・・・どうかした?エース」
「でも何でマルコと飯なんか行ったんだよ?」
「・・・ちょっと、相談」
「相談なら俺に先に、」
「でもエースだって」
・・・私には言ってくれないじゃない。
マルコさんは知ってる風だったのに。
「俺は悩みなんてねェ!」
「嘘」
「マルコに聞かせた悩み事俺にも聞かせろよ」
「それは・・・っ」
「それは?・・・俺には言えねェのか?マルコにしか言えないってことか?」
何だかお互い感情的になってきて、
これじゃ駄目だと思うのに、
わかってるのに止められなかった。
エースだって私には言わないことマルコさんに言ったんでしょ、と思ったら。
悔しくてエースのことを相談したんだ、とも言いたくない。
「エースの馬鹿っ」
もう知らない、と吐き捨てて私は1人ベッドに潜り込んだ。
次の日の朝、作ったお味噌汁はしょっぱかったけどそのまま出した。
2人無言のまま家を出ようとした時、
「俺今日夕飯いらねェ。・・・・サッチと食ってくる」
とエースがぽつりと言った。
「・・・ん、わかった」
夕飯1人なら私も何処かで食べて来ようかなぁ。
こんな時に家で1人でご飯も寂しいし。
何より1人分作るの面倒。
久しぶりの外食が少しだけ救い。
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:
:
「お疲れ様でしたー」
仕事を終えてさて何食べようかなと駅前をふらふら。
・・・・エースももう終わった頃かな。
今頃サッチさんと食事してるのかな。
何話してるんだろう。
何時頃帰って来るんだろう。
・・・・仲直り、出来るかな今日中に。
1人で外食する時は特に夜は居酒屋には入らないようにエースに言われてるから、
無難にファミレスかな。
「いらっしゃいませー1名様ですね」
ご案内しまーすと言われて着いた席。
私は座る前に思わず一瞬かたまってしまった。
っす・・・すぐ隣にすごい知ってる人たち居るんだけど!!
焦りながらも座って、ささっとメニューを決めて、
「・・・オムライスとチョコレートパフェ・・・は食後にお願いします。以上で」
店員さんを見送って、隣の声に耳を澄ませた。
「アイツは俺よりマルコを頼りにしてんだぜ?」
・・・私の話し?
「エースの考え過ぎだろ?」
「・・・やっぱ俺じゃ駄目なんじゃねェかと」
「なんだぁ、エースらしくねェこと言うなァ。お前にはあの子しかいないんだろ?」
「・・・そうだけどよ」
「ほら、俺をあの子だと思うて言ってみろって!」
「・・・・・・無茶言うなよ」
「・・・・まあ、それはともかく。このままでいいのか?」
「良くねェ」
サッチさん、私とエースを仲直りさせようとしてくれるのかな。
・・・優しいな、サッチさん。
エースも優しいけど。
「なら仲直りだけでもしねぇと駄目だからな。例のことはともかく」
・・・・例のこと?
「仲直りは・・・今日頑張る。でもあのことは・・・やっぱまだ早くねェか?」
「むしろ遅いくらいだろ」
「・・・・アコに何て言ったら伝わるだろうな」
「君の作った味噌汁が毎日飲みたい、とか」
「・・・今も飲んでるよね、とか言われそうだ。今朝も飲んだし。しょっぱかったけど」
・・・何を当たり前のことを言ってるんだろう2人は。
今日も味噌汁作ったし、毎日作ってる。
「・・・ならそのまんま、まっすぐに言えばいいだろ」
「まっすぐ、か」
「結婚したいんだーってよ」
けっ・・・・・!?
驚きのあまり声が出たかと思った。
「でも今俺自信ねェんだ・・・・俺でいいのか、とか」
「悩むのもわかるが、男らしくいけエース!」
「・・・・おう!」
・・・・・・エースが、私・・・・に?
いやでも、
「オムライスお待たせいたしましたー」
「うぁっはいっ」
どぎまぎしたまま食べたオムライスとパフェは味がしなかった。
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:
こっそり先に出て1人で帰宅。
・・・・したはいいけど。
どどどっどうしよう・・・!
エース帰ってくるよね!?
私聞いちゃったんだけど!?
ななな何て言えば!その前にどんな顔すれば!!
1人であわあわしてたら、ガチャ、と音がしてドアが開いた。
「っ!!」
「あ・・・・」
「お・・・おかえり、なさい」
「た・・・ただいま」
心臓がばっくんばっくん言って、今にも飛び出しそう。
何だか気まずくて後ろを向いてしまった。
・・・・どうしよう。
顔、見られない。
今にも泣きそうな私の手をエースがそっと握ってくれた。
「昨日は・・・・ごめんな。俺、マルコに妬いた」
「・・・私も、ごめん・・・なさい」
「俺はまだ頼りないかもしれねェけど・・・」
「そんなこと、」
握ってくれた手から伝わって来るエースの真面目さ、優しさ。
「聞いてくれ。・・・・俺はアコを愛してる、誰よりも」
だから、と言ってエースが私の手に、
「・・・・俺がお前をを幸せにしたいんだ。今よりも、もっと」
「・・・・ゆび、わ」
いつの間に・・・・?
「俺と結婚してくれませんか?」
ダイヤがきらりと上品に光る、シンプルな指輪。
そしてエースの言葉はすんなり私の心に入って来て、
「・・・・・はい、喜んで」
私の口からも自然とそう出ていた。
私も貴方を愛していますから。
誰よりも。
悩む時はいつも私の為なあなたのことを。
でもこれからは、
一緒に悩ませてね、エース。