短編③
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「アコちゃーん合コン行かない?」
「えーどうしようかなぁ・・・・」
大学に入って声をかけられることが多くなった。
正直苦手だけど人間関係を円滑にするためには必要なものだし。
悩んでいたら、
「行かねェ」
「・・・・って何でエースが答えるの」
横から幼馴染のエースが割って入って来た。
幼稚園から大学の今まで奇跡的にずーっと同じの幼馴染。
「苦手だろ、アコ」
「え、あ・・・・・うん」
「わかったらさっさと諦めて他当たれ」
「ちぇー」
・・・・エース、私がああいうの苦手なのわかって断ってくれたんだ。
優しい。
「・・・ありがとねエース」
「・・・・おう」
エースは私の自慢の幼馴染。
「ありがとねエース」
すっげェ可愛い笑みを向けられてちくりと胸が痛んだ。
アコが飲みの席を苦手なのは知ってた。
・・・・知ってた、が。
別にそれで断った訳じゃない。
俺が嫌だったから。
それだけだ。
・・・まあでもアレだ、結果オーライだよな。
合コンなんか行かせるか。
男なんか作らせてたまるかよ。
「エースは行かないの?」
「・・・・行かねェよ」
「彼女欲しくないの?」
欲しいのはアコ、だ。
言えねェけど。
「別に・・・・」
「・・・帰る?」
「・・・・ん」
わかってねェんだろうな、アコは。
絶対わかってない。
「そういえば駅前に出来たパン屋さん、ソフトクリームがすっごく美味しいらしいよ」
「お、行くか?」
「行く!!」
小学校中学校高校、そして大学。
・・・・さすがに、就職先までは同じっつーのは無理だよなァ。
いつまでこいつの側に居れるんだろうな、俺は。
自分の気持ちも告げないで。
・・・・このままじゃ駄目っつーのはわかってんだけどな。
アコに近づく奴を陰で威嚇して。
出来るだけ側に居る。
・・・・それだけで、いい訳ねェ。
「溶けるよエース」
「・・・・やべ」
慌てて手についたクリームを舐めた。
甘ェ。
パン屋の中にイートインがあったのでそこで食うことにしたはいいが、
つい考えごとをしちまってた。
「美味しい?チョコ」
「甘い」
「当たり前じゃないソフトクリームなんだから」
何言ってるんだか、と言いながら笑うアコの笑みに見惚れながら、
「食うか?」
「いいの?」
「・・・・俺にも食わせろよ」
と、アコの持ってるバニラを強請った。
「じゃあこうしよ」
ひょい、と俺の手のチョコが消え、
すぐさまバニラに入れ替わった。
こ・・・・・っ、これ今までアコが食ってたやつ・・・・!!
「ん!チョコも美味しいね!」
「・・・・・おお」
「バニラも美味しいでしょ?・・・・ってまだ食べてないの?」
っ、なんでそんな躊躇なく食えんだよ!?
俺のこと何とも思ってないからか!?
これアレだろ!?
間接キス・・・・だろ!?
いやいやアコのことだ絶対そんなこと考えてねェよ。
出来るだけ何も考えずに俺もバニラに齧りついた。
「・・・・・甘ェ」
口に広がる甘さに思わず頬が緩む。
「んふふー」
「・・・・ンだよ」
「間接キスだね」
「・・・・・・そ・・・・・・・!!!」
それを今言うかコイツ・・・・!!
しかもすんげェ楽しそうに!!
「い・・・・嫌かよ」
「そんな訳ないじゃん、大好きな幼馴染なのに」
・・・・『幼馴染』っつーやつは。
いつも俺の邪魔をする。
今まで何度か思いを告げようとした俺の脳裏に過る、幼馴染の言葉。
好きだ、とアコに告げたら。
幼馴染が消えちまうのは確かだ。
そこから恋人になれるか。
それとも・・・・もう今まで通りにすら話せなくなるのか。
もうこの笑顔が見れなくなるのかもしれないと思うと。
・・・・いつも、口を閉ざすしかなくなっちまう。
でももう限界だ。
「大好きな幼馴染、な」
「はいはい、わかってるよ。エースにとって私はうるさい幼馴染だって言うんでしょ?」
「わかってんじゃねェか」
「そりゃあもう長い付き合いですから」
・・・・長い付き合いなら、わかれよ。
俺の気持ち。
・・・・ってわかる訳ねェか。
今まで1回も言ったことねェもんな。
「俺もわかるぜ、アコのこと」
「え?」
「この後カレーパン食べたい、だろ?」
「ななななんでわかったの!?」
「なっがい付き合いだろ?」
「だってさっきからいい匂いしてるし・・・・」
確かに、ソフトクリームだけじゃ小腹すらたまらねェ。
とそこにタイミング良く、
「ただいまカレーパン揚げたてですー」
という店員の声。
「エース・・・・!!行くしかないよ!?」
「だな」
目を輝かせたアコに頷いて立ち上がって、
揚げたて熱々のカレーパンを買った。
「あふい!!」
「火傷すんぞ、馬鹿」
「もうしたかも。熱いぃぃ!!」
「・・・・・何やってんだよ、見せてみろ」
んべ、とアコが舌を出してきて、
妙にどぎまぎした。
「赤くなってる?」
落ち着け俺。
「少しな。これくらいなら大丈夫だろ。・・・・たぶん」
「でも熱々に齧りつかないと美味しくないから」
「って、おい」
言いながらまたパンに齧りつくアコ。
「あふーい!!!」
「・・・・・ったく」
だいたいアコは昔からこういうところがあるんだよな。
中学ん時も軽々しく俺以外の男部屋にあげようとしたり。
簡単に笑顔見せたり。
隙がありすぎる。
だから俺が一生守るんだ、と勝手に心に決めてる。
・・・・一生アコの側に居てェ。
その為にどうするかと考えながら俺も熱々のカレーパンを齧る。
「・・・熱ィ」
「いいなあエースは猫舌じゃなくて」
「アコの分も俺が食ってやるよ」
「絶対あげない」
「じゃあカレーパンはいらねェ」
「え、いらないの?」
「アコが欲しい」
思い切って口にしてみた。
アコは目をまん丸くさせてしばらく沈黙したあと、
「エースでもそういうこと言うんだ」
とだけ。
「・・・悪ィかよ」
「ううん、驚いただけ。それよりエース就活どう?」
・・・・・気になる答えはもらえなかった。
こうなりゃ自棄だ。
「まだ考えてねェ」
「私も」
「じゃあ俺に永久就職とか・・・・いいんじゃねェ?」
「え、やだ」
・・・・撃沈した。
しかもいとも簡単に。
「だって社会経験のない嫁とかエースに申し訳ないし」
「・・・・・・は?」
「しっかりエース支えたいし」
ね、と笑ったアコの耳が赤い。
「ほ・・・・ほんと、か?」
「大学卒業してもエースの側に居ていいですか?」
「よ・・・・・・・よろしくお願い、シマス」
これからもずっと側にいられるらしい。