短編③
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「なァアコ、何怒ってんだよ」
「別に」
「俺が何かしたか?」
やっと一仕事終えてお茶でもしようかと思ったら、
エースに追いかけまわされている。
・・・・別に、いつもだったら逃げたりしない。
むしろ喜んで一緒にお茶に誘う。
だって私はエースが好きで、
エースも私のことを好きでいてくれてるから。
・・・・付き合い始めて、1年。
「何もしてないね」
「だろ?何で怒ってんだよ」
・・・・・何も、してないからだよ。
昨日付き合い始めて1年の記念日だった。
でもエースの口からは記念日のきの字もなく。
ただ、無為に1日を過ごした。
悔しかった、期待してた自分が。
哀しかった、寂しかった。
エースがそんなの覚えてる訳ないってわかってたのに。
心のどこかで期待してた自分がいた。
「別に怒ってない」
「怒ってんだろ。言えよ」
「・・・・怒って、なんか」
嘘。怒ってる。
でもそれ以上に許したい私がいることも事実。
「・・・・・・・・・・別に」
言えばいいだけのことだってわかってる。
聞けばいい。
昨日何の日かわかる?って。
・・・怖いんだ、私。
わからない、って言われるのが。
駄目だな、私。
言えないくせに怒ってるなんて。
・・・・エースが、可哀想だ。
そうだよね、今エースが無事にここに居て。
私の側にいて、
私のことを好きでいてくれるだけで。
うん。
立ち止まってエースを振り向いた。
「ごめんねエース、私もうほんとに怒ってな、」
改めてエースに謝罪しようとした私の前を通り過ぎた1人のナースさんが、
「あらエース隊長、昨日は楽しかったわ」
・・・・エースに艶っぽくそう声をかけて行った。
「・・・・・・・・・・・・・エース君?」
「・・・・・・・・おう」
「やっぱり今のナシ。もう絶対許さない!」
信じられない!
今度のは絶対怒っていいと思う。
エースに怒鳴って背を向けて、
再び歩き出した。
「待てって!今のは・・・・アレだ」
「何アレって。浮気のことアレっていうの?」
「浮気なんかしてねェ!」
「昨日は楽しかったわね、だって」
「それは、だから・・・・とにかく違ェ!」
「楽しく何をやってたのかしら」
よりによって昨日。
私以外の女の人と会って、楽しくやってたなんて信じられない。
「別に何もしてねェよ・・・」
・・・お茶でも飲みながら一息、と思ってたのに。
いつの間にか自分の部屋に着いてしまった。
もういい、ここで引きこもろう。
決心してドアノブに手をかけた瞬間その手を掴まれた。
「っエース!」
「行かせねェよ」
その真剣な表情にドキッとした。
・・・・でもここで許す訳にはいかない。
エースを睨み付けようとしたら、
そのまま、
「ぁ、ん・・・・・っ」
口づけられた。
最初はちゅ、ちゅと啄むようなもので。
それでも驚きで抵抗出来ないでいるうちに深いものへと変わっていった。
「・・・・ん、はっ」
ようやく唇が離れた時は息を整えるのが大変な程で。
「浮気じゃ、ねェ。信じろ」
「・・・・・私が、嫌じゃないと思った?」
「・・・・それは、」
「私が知らないのにエースが女の人と2人で会ってて嫌じゃないって思ったの?」
よりによって、記念日だったのに。
「・・・それは謝る。でもあのナースとは何もなかったっつーのは信じてくれよ」
「何もなかったらそれでいいの?エースは私がエースに内緒でマルコさんと部屋で2人きりでいてもいいんだ?」
「っそれとこれとは別だろ!?」
「同じでしょ!?何もしなかったらそれでいいんじゃないの!?」
「いい訳ねェだろ!?」
「我が儘!」
「何て言われようと・・・っ」
「っ、」
強い力で引き寄せられて、
簡単にエースの腕の中。
「ねえここ何処だと思ってるの!?廊下!」
「知ってる」
「じゃあ離して」
「離さねェ」
「エース・・・っ!」
「何て言われようとマルコと2人きりとか許せる訳ねェだろ」
「じゃあ私だってエースのこと許せない」
「・・・・だよな」
ふ、と腕の力が緩んだ。
・・・今なら抜け出せる。
でも、それでも離れないのは、私がエースを好きだから。
・・・・好き、なんだよね。
「・・・・馬鹿」
「・・・・・・悪ィ」
エースも落ち着いたのか、今度は素直に謝ってくれた。
・・・・でも、心のもやもやは晴れない。
そっとエースの身体を押して、
「じゃ、私部屋で寝るから」
「は?」
「疲れたから。夕飯の準備に備えてお昼寝します」
「おい」
「おやすみっ」
呆然とするエースを見ながら、バタンとドアを閉めた。
勿論鍵もしっかりと。
もうほんとに寝るしかない、とベッドに腰かけた瞬間。
「開けろよアコ」
少しだけ怒ったようなエースの声。
今にも入って来そうで、慌ててドアに駆け寄った。
「な・・・何で?」
「あれで俺が納得すると思ってんのか?」
「・・・何のこと?」
「昼寝するからはいおしまい、で終えられっかよ」
「そっそんなこと言ったって」
これ以上エースの顔、見れない。
ドア越しの会話ですらはらはらしてるのに。
「開けろよ。んで顔見せろ」
「・・・嫌」
「・・・・頼むから、見せてくれよ」
辛そうなエースの顔に胸が痛む。
「・・・浮気じゃないなら、何してたの?昨日」
ドキドキしながら聞いたら、
「・・・それは、まだ言えねェ」
「何、それ」
まだ言えないって。
「じゃあいつなら言えるの?」
「もう少しなんだ、だから・・・」
「何がもう少しなの?」
「昨日の・・・・だぁぁ、っつーか顔見せろ!いい加減に!」
しびれを切らした様子のエースに驚きながら、私も意地を張る。
「・・・やだ」
「・・・・よーしわかった。どいてろ」
「え?」
「ドアから離れてろよアコ。でなきゃどうなっても知らないからな」
「え、エース?」
恐る恐る3歩下がった。
するとすぐに、どごん、という大きい音と同時に目の前のドアが粉砕した。
「な・・・・何してんのエース!マルコさんに怒られるよ!?」
「マルコの名前なんか聞きたくねェ」
「いやでもこれ・・・・」
「うるせェ」
ずかずかと部屋に入って来たエースはさっきより強く私を抱きしめた。
「・・・エース、痛い」
「もう逃がさねェからな」
その言葉の通り私を抱きしめる力はかなりのもの。
・・・でも本当にきつくて、苦しい。
「・・・・わかった」
「・・・おい?」
「いいよ、エースになら殺されても」
「っそこまで苦しかったか!?」
肩の力を抜いて呟いたら慌ててエースが力を緩めてくれた。
「・・・私は、エースのこと好きだから」
「俺も好きだ、わかってんだろ?」
「・・・うん、わかってる」
「なら最初何怒ってたのか言えよ」
「言いたくない。・・・・面倒な女になりたくないから」
記念日がどうこうなんて、面倒な女以外何物でもないもの。
本当はわかってた。
記念日なんて覚えてなくても、
エースが私のこと好きでいてくれてるだけで幸せなんだって。
「言えよ・・・面倒だとか思わねェから」
「・・・・ほんとに?」
「理由も言わないでうじうじされる方が面倒」
「うじうじなんてしてない!」
「してるだろ。・・・・可愛いけど」
「・・・っかっ可愛いって言われたって・・・・」
「面倒でも可愛い。そんだけこっちはアコに惚れてんだ」
そう言ってエースはちゅ、と私の唇に触れるだけのキスをした。
「・・・・・・昨日、何の日だったか覚えてる?」
エースの言葉に観念して聞いてみたら、
「覚えてる。・・・1年の記念日だろ?」
「・・・覚えてた、の?」
「あァ、今証拠見せてやるよ。・・・待ってろよ?」
「え、あ、うん」
エースは自分が壊したドアを踏み越えて1回何処かへ行き、すぐに戻って来た。
その手には、
「・・・・もうだいたい乾いてると思う」
「・・・・ペンダント?」
「さっきのナースに何かねェかって相談したら手作りのアクセサリーがいいって、んで教えてもらった」
「手作り!?」
淡いピンクのペンダント。
「何か色々混ぜて樹脂っつーので固めたんだけど・・・さっきまで固まんなくてよ」
「・・・それで、もう少し?」
「なのに浮気とか誤解されるし、機嫌悪くさせちまうし」
「・・・ごめん」
今度は自分からぎゅうっとエースに抱き着いた。
「俺も、悪かった」
「有難うエース・・・私からも、プレゼントあるんだけど」
「プレゼントは私、ってやつ?」
「・・・・あのね」
ムードぶち壊しなとこはほんっと・・・!
「俺はそれがいい」
言いながらエースは私をベッドに押し倒した。
「その前にドア片付けてマルコさんに怒られるぅぅ!!」
色んな意味で怒られる!!
「この状況で他の男の名前呟くなんざいい度胸してるな・・・・?」
「・・・・・はぅ」
私からエースへ用意した、
エース専用のビールグラスを渡せることになるのはまだ先のようです。